構築される「遺跡」:KeMCo建設で発掘したもの・しなかったもの

慶應義塾ミュージアム・コモンズ(三田2-15-45 慶應義塾大学三田キャンパス東別館)

  • 2023/3/15(水)
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構築される「遺跡」:KeMCo建設で発掘したもの・しなかったもの

 慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)が設置された三田キャンパス東別館建設の際(2018〜2019年)に、文化財調査の対象として発掘した遺跡と発掘対象としなかった痕跡の双方に目を向ける展覧会が開催されている。

 発掘で得られた、縄文から江戸時代に渡る多くの記録と遺物から、「この場所は弥生時代以降、常に人々が住んでいる場所だったことが分かりました。KeMCoが面する三田通は古墳時代には道としてすでに存在していた可能性が高いことも分かり、古代から中世時代には比較的高貴な身分の人が使っていたと思われる陶器や硯などが見つかりました。そこから、都が西にあった時代には、人とモノの行き来に便利な道がある主要地として、武士層の屋敷や寺院、お役所のような場所があったと考えられます。
 江戸時代の地層からは、繰り返し使用する「通い徳利」など、庶民的な陶器が多く発掘されるようになりました。下町のような場所に変わっていったことが伺えます」と分かりやすく解説するのは、今回の展示を担当した同大学院で民族学考古学分野を専攻する岩浪雛子氏。発掘により文献だけでは分からない歴史が見えてくると語る。

 一方、文化財保護法をベースに化石や自然現象の痕跡、近代以降の痕跡は対象外とされたが、慶應義塾独自の判断で発掘された日吉キャンパスの米軍関係の遺構や、福澤諭吉邸の基礎の一部などが報告されている。
 これらを展示するのは、「遺跡」とそこで語られる「歴史」は発掘を行う側の選択により構築されるものでもあるということ、選択から漏れた痕跡が別の視点で大きな意味を持つ可能性があること、そして一度発掘した場所は元にはもどせないことを問い直すために大きな意義があるという。

 「大都会の中で、採れたものを採れたその場所で展示している施設は稀有。まさに発掘が行われた場所で展開している、エントランスホールの映像インスタレーション(山田健二氏「Mita Intercept_」)にも注目してください」と説明するのは同館専任講師の本間友氏。
 ただ単に発掘されたものだけを無機質に展示しているのではない。発掘に携わった人の熱意や現在につながる流れなども体感できる展示内容となっている。

【会期】3月6日(月)〜4月27日(木)
【休館日】土曜、日曜、祝日 ※3月18日(土)、4月22日(土)は特別開館。3月13日(月)、4月17日(月)は臨時休館
【開館時間】11:00〜18:00 ※入場無料

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