ドラマチックな光の表現を用いて、古典的な技術を現代に持ち込み、ありふれた街並みを劇的な世界へと変貌させる森本啓太の個展が開催中。

 カナダに16歳から移住し、2021年に帰国、現在は東京を拠点に活動する森本は、日常的な主題に焦点を当てることで、現代の生活における構造的な脆弱性や道徳的規範に疑問を投げかける。そして「光」という歴史的にも象徴的なモチーフを扱うことで、自然で神秘的な意味合いを消費社会と産業文化の製品に結びつける。

 人物と風景をそれぞれ別々に撮影し、組み合わせた写真を観察しながら制作するという油彩画は、インスタグラムから抜き出したような現代を生きる若者のありふれた一場面を捉えながら、どこか古典的でダイナミックだ。
 自動販売機、ガソリンスタンド、冷蔵庫などの人工的な光、今作では窓からこぼれる自然光の表現が秀逸で、それは森本が敬愛するというレンブラントやエドワード・ホッパーを連想させる。理屈抜きに一目で森本の技術力と表現力の高さが伺える。

 社会システムによる「ラベリング」に抵抗し、自分が何者であるのか、何を良しとし、どんな瞬間を美しいとするのかといったことを他者の手に委ねないこと。このことこそ人間が人間らしく生きる上で最も重要なことであり、それが大きな自由を獲得することにつながるということを森本は自身の絵画を通して提示し続けているのだという。

 油彩画とは思えないほどの透明感のある作品たちが、そのメッセージをダイレクトに私たちに届けてくれるようだ。

【会期】7月29日（土）〜9月16日（土）
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜18:00