杉山有希子「SALVAGE」

六本木ヒルズ A/Dギャラリー

  • 2023/8/15(火)
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杉山有希子「SALVAGE」

 近赤外線カメラやドローンを使い、自然のサイクルに埋もれた人工物を可視化し、空想科学小説のようなディストピア的な世界を表現する杉山有希子の展覧会が開催中。

 彫刻家として活動する傍ら2017年から写真を始め、ロサンゼルスでも活動する杉山。被写体の物質の違いにより、光の反射や吸収する特徴の違いが画像として映るという近赤外線カメラで撮影された作品は、スイス製のUVプリンターを使い特殊な立体感やテクスチャーが表現されており、写真でありながら油絵のような、またはその合成のような、今までに無い新しい写真表現を実現させている。

 本展では、朽ちる運命にある“過去の産物”と今を生きる“生命”を対比させ、真実であるにもかかわらず、まるでSFのようなディストピア的な世界を創りあげている「CRASH」シリーズのほか、最初期のソ連の宇宙服や実験用のマネキン、事故により秘匿されたNASAラボラトリーの風景など、新たなイメージを創出している人類の宇宙空間への挑戦を記録した「PHASES」シリーズ、失われた生態系への復元を紐解く、地球規模の環境変化に着目した北極圏での「PLANET」シリーズが展観されている。

 いずれの作品も一見すると無機質でありながら、人工的な被写体が人間の顔や身体のように、そして感情を持っているように見える。それは、「人々の手によって作り出された人工物は、自然界においてあくまでも“異物”として半永久的に残り続けることを鑑賞者の心に訴えかけるため」だと杉山は本展に寄せている。

 人間中心主義の終焉と未来へのランドスケープとして次の世界に繋がる光景とともに、写真芸術の新たな可能性を垣間見ることができる空間が広がっている。

 会期は9月3日(日)まで。時間は12:00〜20:00。会期中無休。

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