アルフレド・ジャー「終³」

SCAI PIRAMIDE(六本木6-6-9 ピラミデ3F)

  • 2023/9/8(金)
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アルフレド・ジャー「終³」

 歴史的事件や悲劇、社会的不公正に対しジャーナリスティックな視点を持ちながら対峙し、多様なメディアを用いて制作活動を続けるアルフレド・ジャー(1956年チリ、サンティアゴ)。新作彫刻に並び、写真家 森山大道とのコラボレーション作品を初公開する展覧会が開催されている。

 広島市現代美術館で開催中の第11回ヒロシマ賞の受賞記念展に合わせた本展は、三つの章で構成され、それぞれが世界の終焉として描かれている。

 序章は、約3メートルの金属製ライトボックスに固定された、帯状に連なる半透明のスチル写真《Silent Flash》 (2023)。史上初めて原爆ドーム(広島平和記念碑)のドローン撮影を許可されたジャーが捉えた、空撮イメージである。
 そして森山大道とのコラボレーションとなるインスタレーションでは、森山の写真集《写真よさようなら》(1972年)から「アレ・ブレ・ボケ」に特徴付けられる複数のイメージを、赤い照明が灯る暗室に見立てて浮かび上がらせている。かつてアナログ写真に必要とされたプロセスや環境を強調することで、デジタルイメージが飽和する現代において、いっそう示唆に富む対比を見せている。
 最終章では、世界初公開となる彫刻作品《The End of the World》(2023年)が展示されている。建築家でもあるジャーにより絶妙なバランスで配置された銅、リチウム、レアアースを含む十層の鉱物がかたち作る4cmの立方体。彫刻作品としてだけ見ると、その美しさに吸い寄せられそうになる。しかし背景には資源をめぐる紛争や原産国からの資源の収奪、児童労働や環境破壊などさまざまな現代の問題が隠されている。

 ジャーの一貫して献身的なリサーチは、偏向したメディアソースが作り出す情報の闇を暴き出し、人道的な洞察を通して現実の周縁に光を当てている。
 会期が延長されるこの機会に、じっくり、作品とその背景に向き合いたい。

【会期】7月29日(土)〜10月14日(土)
【休廊日】日月火水祝
【時間】12:00〜18:00
【画像】Installation view of “THE END³ ” (2023) by Alfredo Jaar at SCAI PIRAMIDE, Tokyo. Photo by Nobutada Omote. Courtesy the artist and SCAI THE BATHHOUSE.

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