透明な色彩と詩情豊かな写真作品で国内外に知られ、写真の世界だけに留まらず現代美術の国際展にも数多く参加する野口里佳の映像作品と写真作品の新作を紹介する個展が開催中。

 昨年の東京都写真美術館での個展がまだ記憶に新しい野口の作品は、微視と巨視を行き来するような独自の視点、人間の謎に触れるような対象の選択に特長がある。
 タカ・イシイギャラリーでの2回目の個展となる本展では、コロナ禍に野口が暮らす沖縄の浜辺を撮影した映像作品「光る海」と、鳥取砂丘で撮影した新しい写真作品「虹」の13点が発表されている。

 野口は今回の展覧会を「距離」についての展覧会だと語る。海の向こうへの距離。ここから虹までの距離。遠く離れた別の惑星にたどり着いたかのような人々…
 淡いブルーとベージュのコントラストが印象的な写真作品「虹」には、不思議な距離感が生み出され、質感や空気感から、まるで絵画のようにも見える。
 映像作品「光る海」は、ゆらぎ、きらめく水面が少し遠くを眺めるように広がり、静かにいつまでも見ていられる作品だ。
 野口の眼差しと豊かな想像力を通じて映し出される瞬間と空間には、何かとの「距離」が語られている。
 そしていずれの作品も、制作活動が大きく制限されたパンデミックを通して、より1コマ1コマの一瞬や、日々の生活の小さな出来事を丁寧に見つめる野口の姿勢が表れているようだ。

 近年は写真に加え、映像やドローイング、立体作品なども手がける野口の広がり続ける作品世界を楽しみたい。

【会期】9月12日（火）〜10月14日（土）
【休廊日】日月祝
【時間】12:00〜19:00
【画像】Noguchi Rika “Rainbow”, installation view at Taka Ishii Gallery, Sep 12-Oct 14, 2023. Photo: Kenji Takahashi / Courtesy of Taka Ishii Gallery