サム・フォールズ

小山登美夫ギャラリー(六本木6-5-24 complex665 2F)

  • 2024/2/8(木)
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サム・フォールズ

 森美術館「ワールドクラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」(2023年)での存在感のある作品が話題を呼んだサム・フォールズ。日本初個展となる本展では、ペインティング作品と、陶のフレームに写真を組み合わせた新作が発表される。

 物理学、言語学、哲学などを学んだ後にアートの世界へ入り、現在、ニューヨーク市内およびハドソンバレーを拠点に活動するサム・フォールズ(1984年〜)。
 その制作プロセスが特長的だ。地面に置いたキャンバスの上に、草花や枝など折々の植物と、冷たい雨でも溶ける砂糖粒のような染料を色を撒くように配し、数日から長い時には数か月放置。その後、植物を取り除いて現れる有機的な自然の輪郭は、ろうけつ染や「フォトグラム」のような最初期の写真の露光の手法とも通じている。
 雨や雪、霧、朝露など、そのときどきの大気の状況や季節や場所によっても風合いが変化していき、時には虫の這った跡や飼い犬が歩いた跡、染料の粒がそのまま残った部分などもあり、自然がつくる模様やグラデーションが独特な美しい世界を作り上げている。

 「自然光で露光させているため、夏に制作した作品は、(写真右のような)日差しの強さにより、草花の形がはっきりした色が濃いものが多く、春や冬は(写真左のような)穏やかな光での淡い色合いの作品が多くみられます」と解説するのは、プレス担当の岡戸麻希子氏。左の作品は2か月間、雨の多い時期に制作された作品。ゴツゴツした岩の上に置いたキャンバスの塗料が雨で流れ、その跡がぼんやりと雪のような形を残している。学生時代、日本人の友人から三島由紀夫の小説の存在を教えられたサムは、本作のタイトルを小説『春の雪』から引用して《Spring Snow》と名付けたという。

 本展では、ペインティング作品のほか、インスタントフォトで撮影した草花の写真と、それを囲むように撮影後に朽ちた草花を陶板に並べ、焼成させた陶フレームの作品もあわせて展示されている。

 岡戸氏は「本出展作は、まるで元の植物の自然環境や、サムが自然を慈しむ感情がそのままあらわれているかのようです。これらの作品を通し、自然の豊かさを体感し、自然との対話を楽しんで頂ければと思います」と話す。

【会期】2月3日(土)〜3月9日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜19:00

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