榎本耕一「Some lights」

TARO NASU(六本木6-6-9 ピラミデ4F)

  • 2024/2/22(木)
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榎本耕一「Some lights」

 新型コロナウィルスに世界が揺れた2020年以降、絵画表現を通して世界を支える新しい価値観を模索してきた榎本耕一。TARO NASUでは新作11点からなる個展が開催されている。

 現在は神奈川を拠点に制作を行う榎本耕一(1977年〜)は、近年は森美術館をはじめとする国内外の美術館や公的コレクションによる作品収蔵も進み、アジアのみならず欧米のアートシーンでの存在感も増してきた注目の作家だ。

 自分の記憶の中にある人や動物たちがこんな顔や表情をしていた、こんなことをしていた、とりわけ、存在している、存在していた、「いる」という感覚を絵のなかに「再現」することで「明日も生きる気にさせる」作品を作りたいとする榎本。
 作品に描かれるのは日常にある小さな幸せを感じる一瞬を捉えたものだ。目の表情が特徴的な複数の人とともに自身が飼うセキセイインコをはじめフクロウや猫などの動物が一緒に描かれている。動物たちや風景、シャツの柄が写実的に描かれているのと対照的に人の表情はデフォルメされており、輪郭が所々はみ出ていたりするため、一見するとコラージュに見える。
 ドライブするようすが描かれた《運転するreflection》(2023年)にはreflectionという言葉そのものが描かれている。自身を他人に反射させることで自分を見つめ直す意味、そして鑑賞者がモチーフからモチーフ、色から色へ視線を移す間に感じ取ること、考えること、という意味があるという。このreflection を仕向けるために1つの作品の中で描き方を変え、鑑賞者の視線を隅々まで動かしているのだ。

 本展のキービジュアルでもある《光》(2023年)には死んだ鳥も描かれているがそこに悲壮感はない。たしかに生きていた、「いる」という瞬間を捉えた榎本の作品は、見るものにパンデミック以降の人間社会における「生命の躍動elan vital」を問いかけるだろう。

【会期】2月16日(金)〜3月30日(土)
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜19:00

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