六本木ヒルズ 66プラザ

六本木ヒルズの玄関口、66プラザ。
大きなケヤキが枝葉を広げて木陰を作り、水景が潤いある空間を演出。
ベンチも多く、待ち合わせや小休止するにも便利だ。
外出やランチ時など、気軽に緑と建物が織りなす都会らしい景色を探してみたい。

  • 2018/07/03
  • カルチャー
  • 緑の散策路
六本木ヒルズ 66プラザ

メトロハットの長いエスカレーターを登ると目の前に広がるのが66プラザと呼ばれるエリアだ。この名称は、六本木ヒルズの所在地が六本木6丁目であることに由来する。よく見ると、下に麻布十番から青山方面へと抜ける道路が通っているが、大きなケヤキが植わる景色からは想像できないほど、活気ある広場となっている。

森タワー、森美術館、毛利庭園など、ヒルズ内のスポットへ向かう出発点

まず目に入るのは、ルイーズ・ブルジョワが制作した巨大なクモのオブジェ「ママン」。網状になっているお腹の部分には、大理石の卵を宿している。観光客が記念撮影したり、ビジネスマンが待ち合わせに使ったり、子どもの遊び場になったりと、年月を経てすっかりシンボル化した。

開業15周年の際は、マグダ・セイエグがママンに毛糸の編み物を被せ、周辺の柱と共にインスタレーション作品に。
開業以来、初めてママンの姿が変わったという

ケヤキが繁る大きな植栽帯は3カ所。季節ごとにチューリップ、ペチュニア、パンジーなど、季節の花で彩られる。これらの花はGREEN UPというコミュニティー活動によって植えられている。毎月1回、朝の8時からヒルズで働くワーカーや店舗スタッフなどで構成される有志が集まり、作業を行う。植物の植え込みやメンテナンスをしながら、街の仲間とのコミュニケーションを楽しむというテーマで始業前に土と触れ合うのは、朝活としても良さそうだ。
 植栽帯の中の一つは真ん中に通路が設けてある。葉が揺れる音が間近に聞こえ、林間を歩いているような感じで癒される。スロープのように緩やかな起伏があり、子どもたちが走って遊ぶ姿を見るのも微笑ましい。

取材時の花壇はペチュニア。一面真っ白な景色は初夏らしい爽やかなイメージで、インスタ映えもバッチリ

1日10〜13万人が訪れる六本木ヒルズ。その多くが通る66プラザでは、イベントも盛んだ。夏休みには、「夏祭り SUMMER STATION」のイベントの一環でドラえもんが並び、クリスマスの時期には大きなツリーが現れる。森美術館の企画展に連動して、アーティストの作品が展示されることも。ママンもアートの一つでそれが景色として馴染んでいるからか、作品やインスタレーションがある日突然現れても不思議とマッチングして、違和感なく溶け込む。

夏休み恒例となったほぼ等身大のドラえもん
「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅(2017年)」で登場した作品

植栽帯の外側には森タワーや大屋根プラザへと向かう回廊が続き、ガラスに水が流れる水景が壁のように設置されている。植栽帯の内側の広場とはまた異なった雰囲気で、水音と潤いで和やかな気分に。夏にはドライミストも稼働し、自然な涼を感じるスポットにもなる。水景前のベンチで休憩している人がいる一方で、回廊を人が自由に往来していく。

憩いの場であり、通路でもある水景前。水音を聞きながら寛ぐ人と、回廊を往来する人が交わるユニークな空間
メトロハットからクロスポイントへと向かう橋。両脇のオリーブの木にはたくさんの実が

東のエル カフェ(ELLE café)の前には、面白い形の黒いベンチがまとまって置いてある。アルゼンチンのプロダクトデザイナー、ディアナ・カベザ(Diana Cabeza)が制作したもので、円柱の一部を切り取ったようなイスは背もたれの角度が絶妙。一人分のスペースが窪みで表された長ベンチや、雲のような形のベンチもあり、気分で選んで座るのも楽しい。隣接する毛利庭園へと下る階段からは、東京タワーがきれいに見え、隠れたフォトスポットになっている。

アルゼンチンのデザイナーが制作したベンチは形がユニーク
66プラザから毛利庭園へと下る階段からは東京タワーが見える

水景の裏側、毛利庭園へ続く階段の側に、枕木が続いている小道を発見。進んでいくと、ローズガーデンが広がっている。多くの人が行きかい、活気のある森タワーの入口付近とはガラリと印象が変わり、長閑な空気が漂う。イザ・ゲンツケンが制作したオブジェ「薔薇」の側に建つガゼボはヒルズの人気フォトスポットの一つ。春には、バターカップ、サマーモルゲン、シエスタ、サティーナ、ミケランジェロなど、数十種類ものバラが艶やかに咲き誇り、百日紅やレモン、ラベンダーなど他のエリアでは見られない植物もあって秘密の花園といった雰囲気になる。気分転換したり、考えをまとめたり、心を落ち着かせたりと、ゆったりした時間を過ごすのに良さそうだ。

ハリウッドプラザの前に広がるローズガーデンは穴場の寛ぎスポット
フランスで作出されたミケランジェロ。こじんまりとした園内に数十種類のバラが植えられている

六本木ヒルズの玄関口としての賑わいや活気がありながらも、水景のベンチで水音を聞いたり、ローズガーデンで長閑なひとときを過ごしたり、ユニークな形のイスでお弁当を食べたりと、エリアによって様々な楽しみ方ができる、都会的広場の66プラザ。通勤や外出のついでにふらりと歩けば、木々の姿から季節を感じたり、華やかな花壇に魅せられたり、東京タワーの夜景を楽しんだりと、その時々の景色を見られ、気持ち良くリフレッシュできそうだ。

ママンの下から森タワーを見上げて撮影すると、クモの脚の間から、ビルと空が見えるユニークな一枚が撮れる

都会らしさと緑を融合させ、インパクトある景観を創出
ヒルズの玄関口らしい憩いの場を提供

菊田宏志氏
Interview
森ビル株式会社
設計部 設計監理部
監理2グループ 外構担当
担当課長
菊田宏志氏
公道の上にかかる橋に造られた広場
66プラザは六本木ヒルズの玄関口、そして訪れる人に出会いと憩いの場を提供するためという2つの目的から整備されました。広場に見えますが、実は環状3号線、側道、引込車路の3階建ての道にかかる約4,000㎡の橋(デッキ)です。6つの鋼の床の継目部分は、地震などが起こると伸びて動きを吸収し、その影響を小さくします。シンボルとなっているママンも実は地面と固定されているのは2カ所だけ。転倒を防ぐため、揺れに合わせて動くよう設置部分の床は磨いて鏡面仕上げにしてあります。
緑とスタイリッシュな建物の融合!インパクトのある景観を演出
デザイン設計は「さいたま新都心けやき広場」や「衆議院議長公邸」などを手掛けた鳳コンサルタント(株)のランドスケープアーキテクト、佐々木葉二氏が担当。森タワーは、オフィスエリアをKPF(コーン・ペダーセン・フォックス・アソシエイツ)、商業エリアをJPI(ジャーディ・パートナーシップ)と、アメリカを代表する2つの設計事務所が担っています。KPFは森タワーを鎧をイメージしたシャープなデザインとし、JPIはヒルサイドに見られるように曲線や迷路のような空間。外構のデザインには、2つの設計が引き立ち、融合するような景観が求められたのです。佐々木氏はまとめるのにかなり苦労したと、後のインタビューで話しています。66プラザのテーマ設定も、広場、森、緑地と二転三転。何度も話し合いを重ねた末、森タワーを中心とした同心円状に緑地、回廊、水景などを配置していく形になりました。地下鉄の駅の通路を通って20mの高低差があるメトロハットのエスカレーターを上ると、まず緑が視界に入って、それから兜のような森タワーのひさしがドンと現れる。玄関口として相応しいインパクトある出会いを演出しています。
ビル風も意識した植栽や水景デザインの工夫
緑地には箒状に枝が広がる在来種のケヤキを中心に配置。仕上げが厚さ30cmの橋であるため、土を1m盛って植栽がきちんと育つ環境を整えました。起伏が生まれて、雑木林のような雰囲気が出ているのが特徴です。開業当初はケヤキの下は笹が植えられており、全体的には地味なイメージだったのですが、5周年の際にペチュニアで演出したのをきっかけに植栽を見直し、10周年以降は四半期ごとに花を植え替え、コミュニティー活動へとつながっていきました。風による土の乾燥を防ぐため、風が抜ける東側のエル カフェ(ELLE café)付近には常緑樹のクスノキを植えて防風効果を高めています。
 メトロハット、ハリウッドプラザ、森タワーをつなぐ回廊に3カ所設置されている壁のような水景は、防風対策も担っています。風除けになり、憩いの場にもなり、広告媒体にもなる、意外と多彩な役割を持つ装置の一つです。アグレッシブな活気の中に水音をベースとする落ち着いた空気感が漂うユニークな場所です。夏はドライミストが稼働し、涼を感じる空間になります。
果樹や珍しい樹木も潜む!? ローズガーデン
66プラザの中に落ち着いたスペースも作りたいと思い、ハリウッドビューティプラザに面したエリアを庭園にしました。ここは開業前、ハリウッドさんの敷地の一部だったところで、当時あったレモンなどの果樹を移植しています。10周年を機に、バラを中心とするローズガーデンに様変わりしましたが、果樹はガーデン内に残しています。バラの中にある果樹を散歩がてら探してみるのも、いい気分転換になるかもしれません。そのほか、珍しいオーストラリア原産のブラシノキも植えました。5〜6月赤い刷毛のような花が咲き、バラとのユニークな景色が楽しめます。
 日当たりによって植物の成長も変わるため、66プラザの西側と東側では春先の新芽の出具合も違っています。そんな場所ごとの育ち方の違いを比べたり、珍しい植物を探したり、水音に癒されたり、出かけがてらにふらりと寄り道して楽しんでほしいなと思います。
六本木ヒルズの歴史
2003(平成15)年
六本木ヒルズ開業
2013(平成25)年
10周年を迎える
2018(平成30)年
15周年を迎える

基本情報

名称 六本木ヒルズ 66プラザ
所在地 港区六本木6-10-1
問合せ 03-6406-6606(森ビル株式会社 広報室)
アクセス 日比谷線「六本木駅」直結
大江戸線「六本木駅」徒歩4分
公式サイト https://www.roppongihills.com/

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