六本木ヒルズの憩いの場、毛利庭園。
面積4,300㎡の敷地に、池を中心とした回遊式の日本庭園が広がる。
遊歩道をのんびり一周すれば、サクラ、モミジ、滝、渓流など、コンパクトながら見所いっぱい。
都会の華やかさの中に静かに広がるオアシス的スポットだ。
迷路のような造りの建物内にお店が並ぶ「ヒルサイド」エリアを地下2Fへ降りると、目の前に姿を現す毛利庭園。六本木ヒルズと森美術館の10周年を記念して設置されたパブリックアート、ジャン=ミシェル・オトニエル「Kin no Kokoro」のハート形がキュートなインパクトを与えていて、都会らしく斬新な雰囲気。記念撮影の場所としても親しまれている。
毛利池を覗いてみると、水面をツーっと進むアメンボたちの下で薄茶色の小さな魚が所々に泳いでいるのを発見。2003年、六本木ヒルズが開業した時に放流された宇宙メダカだ。1994年にスペースシャトル「コロンビア」内で向井千秋さんらが行った実験で、脊椎動物で初めて宇宙で孵化したメダカの子孫になる。一般の川への放流や、野生のメダカとの交配は禁止されている宇宙メダカだが、毛利池は外部河川と繋がっていないため、放流が実現したのだとか。
庭園の歴史はなんと江戸時代まで遡る。1650年に毛利家の上屋敷が建造され、その大名屋敷の庭園がルーツなのだ。明治には、中央大学の創始者で法学博士の増島六一郎の自邸となり、昭和にはニッカウヰスキー工場、テレビ朝日社屋を経て、現在の姿に。朝日社屋時代に“ニッカ池”として親しまれた本来の池は、将来のさらなる発掘調査などの可能性を残すために防護シートで覆って埋土保存され、毛利池の下に眠っている。池を囲っている石の中には、大名屋敷の庭園時代からずっと庭石として使われてきた年代物の石もあるとか。長閑な景色の中に、長い歴史とその解明への深い思いが隠れていると思うと、目に映る風景がグッと味わい深いものに見えてくるから不思議だ。
周辺の樹木でも、朝日社屋時代からのものが何本か。春の風物詩として広く親しまれているソメイヨシノ、道路に面した入口に立つ大イチョウ、滝上でトンネル近くに植わるエノキ、「Kin no Kokoro」の側で圧倒的な存在感を放つクスノキなどがそれに当たる。
特に高さ25mの大イチョウは、別の場所にあったものを木の形を変えることなく、傷つけないように保護しながら移植したため、大規模な作業となって当時は注目を集めたようだ。これらの保存樹木を探しながらのそぞろ歩きも宝探しのようで楽しい。クスノキは2003年の六本木ヒルズ開業から15年を経た今、高さ20mとなって大人二人でも手が届かないほどの太い幹になっている。
池を囲む遊歩道を歩くと、所々木立が途切れて池を見渡せる景観ポイントがある。そこから眺めると、少しずつ趣の異なる池が楽しめ、庭園が一層身近に。野鳥も多く飛来しており、2004年から毎年やってくるカルガモはもちろん、セキレイ、メジロ、カワセミ、ヒヨドリなどが見られる。
庭園の樹木は、森ビルの担当スタッフや専門業者、樹木医が見回りをして成長度合いや、病気の有無をチェック。芝生のベンチ脇にある2本のソメイヨシノのうち、1本はニッカ池時代から残る保存木。数年前に一部が罹病し、枯死することも考えてベンチの反対側に新しい桜の木を植えたが、腐朽部分を切除したところ復活して、今では2本とも美しい花を咲かせるようになったという。サクラは幹に穴をあけるコスカシバや葉を食害するモンクロシャチホコなど病害虫に弱く、こまめなお世話が欠かせないのだとか。
春は一面のサクラやカルガモ親子の姿を愛で、夏は滝の側で一涼み、秋は紅葉や実のなる木を探索、冬は枝越しに少し広く見える庭園でロウバイなどの冬の花を見つけてみる。どの季節でもそれぞれの見所がある。大イチョウの枝がしなるほど銀杏がなる様子や、3カ所に植わっている柿の実が鈴なりな光景も面白い。うら寂しい冬も木枯らしは寒いけれど、雪景色は格別だ。
リラックスしたり、飛び石を伝いながら考え事をしたり、芝生が開放されている時はごろりと寝ころんでみるのも一興。数百年の歴史を抱えながらも、現代アートなど都会的なものを巻き込んで進化する、古くて新しい庭園で年月を感じながら贅沢な時間を過ごしてみたい。
名称 | 六本木ヒルズ 毛利庭園 |
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所在地 | 港区六本木6-10-1 |
問合せ | 03-6406-6600(森ビル株式会社 広報室) |
アクセス | 日比谷線「六本木駅」徒歩3分 大江戸線「六本木駅」徒歩7分 |
公式サイト | https://www.roppongihills.com/green/ |
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