アダプテーション 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
アダプテーション

世界が注目する異色クリエイター陣の最新作!
インディーズな香りがプンプンたちのぼる
非凡な才能とセンスは未だ発展途上中



 この奇天烈で非凡な感性の持ち主は、果たして天才なのか奇人なのか。監督スパイク・ジョーンズに脚本家チャーリー・カウフマンをはじめ、1999年の話題作『マルコヴィッチの穴』の製作スタッフが再集結。またもや賛否・好き嫌いがハッキリと分かれるオリジナルなストーリーを創り上げた。掟破りなことに本作には、脚本家カウフマン自身が本人役で主役として登場。タイトル『アダプテーション』の意は (1)適合、適用、適応 (2)脚色……である。

アダプテーション
 長編映画デビュー作『マルコビッチ・・』で大成功を収めた“天才脚本家”チャーリーは、悲観的で女性に積極的になれず、次回作の脚本執筆にも行き詰まっていた。それに対して天真爛漫な双子の弟ドナルドは、ガールフレンドと付き合いつつ素人ながら初の脚本執筆に挑戦、と万事好調。チャーリーは現実逃避して不埒な妄想にふけりながらも遂に、“脚本に自分を登場させる”という突飛なアイディアを思いつく。一方、脚本の原作本の筆者である女性ライターと、その本に取り上げられた人物である蘭コレクターの男との物語が展開。脚本家と原作者が対面し、虚構と現実が交錯したとき、事態は急展開を迎える。
 原作を脚色しているのか、自分の人生を脚色しているのか。似ているわけでは決してないが、現実とフィクションの境目がゆらぐ万華鏡的な不可思議な感覚は、夢野久作の名作『ドグラマグラ』を彷彿とさせた。


 ブラック・コメディ風の人間ドラマ→サスペンス・スリラーと謎の急展開を経て、男の成長物語として幕を閉じる本作。ミュージックビデオやテレビCMなどで成功を収めているスパイク・ジョーンズ監督は、暗喩的な構図やむきだしの感覚を映像化するセンスはさすが。異能脚本家カウフマンによる心にグッとくる台詞や普遍的なメッセージも心に響いた。……と書くとモダンな感動ドラマ、と思われるかもしれないが、視点がチャーリーになったり女性ライターになったりと定まらないため観客は深くのめりこめず、傍観者として淡々と眺めることに。つぎはぎのエピソード、いきなり過ぎる事件的展開には、ついていけない点も実は多々。「それこそが彼ら独自のスタイル!」といわれればそうなのだが、本作は彼らのつきつめる完成には至っていない未完の作品なのでは? と思わずにはいられなかった。


 奇想天外なクリエイター陣の進化はいったいどこへ向かっているのか? 世界中から熱い注目を浴びている彼らのこと。これからも周囲の期待を糧にしたり裏切ったりしつつ、彼らなりのゴールを目指してつきつめていくに違いない。やんちゃな彼らのさらなる進化に、今後も大いに期待したい!  
『アダプテーション』 2003年アメリカ映画
データ
2003年7月更新

アダプテーション

2003年8月23日公開
シネマライズほか全国にてロードショー

■2002年 アメリカ映画
■上映時間1:55
■アスミック・エースエンタテインメント配給
■監督/スパイク・ジョーンズ
■脚本/チャーリー・カウフマン&ドナルド・カウフマン
■原作/スーザン・オーリアン
『蘭に魅せられた男驚くべき蘭コレクターの世界』
■出演/ニコラス・ケイジ
メリル・ストリープ 
クリス・クーパー



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。