座頭市 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
座頭市

第60回ベネチア国際映画祭コンペ部門で上映決定
思いのほか機敏な居合い斬りが冴えまくる
たけし版・座頭市は和製エンタテインメント!



 金髪の座頭市はタップにコントに盛りだくさん……と聞いたときは訝しく思ったものの、観れば「なぁるほど」という仕上がり。原作の主要な設定はそのままに、物語は北野武監督のオリジナル。21世紀型、和製エンタテインメントだ。本作には下町を愛してやまない北野氏の身にしみたものが表現となり、たっぷりと詰め込まれている。それもそのはず、本作の企画は故・勝新太郎氏の知人であり、ビートたけしの恩人である浅草ロック座のオーナー、齊藤智恵子氏とのこと。笑いと毒、芸事、人情、祭り、日常に事件が隣り合わせの生々しさ。キタノ流・時代劇ムービーだ。

座頭市
 町から町へ流れ歩く、居合い斬りの達人にして按摩の座頭市。ある日たどり着いたのは、悪党の銀蔵一味の支配によって暗い影を落とし始めた町。市は賭場で知り合った遊び人の新吉と荒稼ぎした後、姉妹の旅芸者を買う。そこで市と新吉は姉妹に秘められた身の上を知る。一方町では、銀蔵に用心棒として雇われた腕の立つ浪人の源之助が命じられるがまま、罪のない人々を斬り続けていた。
座頭市
 周知の通り本作は、1962年に映画『座頭市物語』からスタートしてシリーズで26作、勝新を不動の個性派ヒーローに位置付けた人気時代劇のリメイク。勝新のはまり役をたけしがどこまでできるか、という見方もあるだろうが、これがなかなか!なにせ座頭市のキャラクターは、人を食ったユーモラスな話しぶりに愛嬌と人情のある性格、ギャンブル好きで女好きでどこか憎めない……というダークヒーロー。内からにじみ出るたけしの地の性分で充分イケる!のだ。またたけしの高速の殺陣は意外にも(失礼!)見事なもので、本人によると、「時代劇や立ち回りのネタは以前に芸のひとつとして身につけた」のだそう。剣使いが堂に入っていた浪人役・浅野忠信のほか、大楠道代、岸辺一徳、柄本明らの演技派、映画初出演である人気の若手女形・橘大五郎などの魅力的なキャスト陣がストーリーを牽引。シリアスなドラマの合間には、脇役の間抜けなエピソードや芸人が芸を披露するシーンとして古典的なコントを盛り込んだり、農民が鍬で畑を耕す・水田を足で踏む・職人が木を切ったり研いだり釘を打つ音などをリズムに見立てたサウンドづくりもいい。そしてエンディングは和モダンな威勢のいい音楽にあわせて、なんと総勢60人によるタップダンスショー。タップダンス・ユニットTHE STRIPESのリードにより、祭り風のシーンから全員が着物にオリジナルのタップ用草履(?)で躍動的に踊る。「祭りだ祭りだ〜っ!」という景気のいいムードで締めくくる。


 カプール監督が来日したとき、彼はなんと7月11日に甲子園で行われた阪神巨人戦にて、始球式に登板した。野球とはまるで関係のないシリアスな映画のPRで来日した監督を始球式に登板させる配給元のPR戦略もナゾだが、それを受ける監督も監督。なかなかおちゃめだ。カプール監督のお人柄がよく伝わってきたのは、記者会見での質疑応答。インド人らしい鷹揚さ、日常的に哲学がなじんでいる深みある思考、周囲をリラックスさせるユーモアなどが感じられ、会見に集まったマスコミ陣を魅了した。


 余談だが、ラスト近くに正面から撮ったレジャーの風貌がなぜかスマップの稲垣吾郎によく似ていて、とてもいいシーンだったのに噴き出しそうになってしまった。これはとてもいいシーンなので、レジャーの吾郎ぶりに惑わされず、ストーリーの感動をよーく味わってください。
『座頭市』 2003年日本映画
データ
2003年8月更新

座頭市

2003年9月6日公開
全国松竹・東急系にてロードショー

■2003年 日本映画
■上映時間1:55
■松竹=オフィス北野配給
■監督/北野武
■出演/ビートたけし
浅野忠信
大楠道代
■音楽/鈴木慶一
■衣裳監修/山本耀司



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。