阿修羅のごとく 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
阿修羅のごとく

相容れなくとも、惹かれあい、支えあう
親と子、姉妹、男と女。
昭和生まれの庶民派人間ドラマにしみじみ共感



 “昭和”が流行キーワードとして親しまれているいま。昭和を代表する女流作家のひとりである向田邦子の作品が、森田芳光監督、筒井ともみ脚本により映画化された。主演の四姉妹に、大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子。その両親に仲代達矢と八千草薫、脇には小林薫、桃井かおり、中村獅堂……と名優から実力派、人気俳優まで豪華キャストが集結。そもそも本作は、'79、'80年にNHKでドラマ化され、その後も舞台など幅広い層に愛され続けている作品。家族のこと、男と女、それぞれの愛憎劇を表情豊かに描き出した庶民派人間ドラマである。

阿修羅のごとく
 昭和54年、24年前の東京・杉並。老いた父親に愛人と隠し子発覚!?という疑惑にショックを受ける四姉妹。母親にだけは気づかれないように……と話し合う。また姉妹たちにもそれぞれの事情があった。妻子ある男性と付き合っている未亡人の長女、夫に愛人がいることを知りながらどうにもできない主婦の次女、潔癖症で恋愛下手な三女、マイペースでしがないボクサーと同棲中の四女……。父と母、親と子、男と女、それぞれに抱えた思いや感情、関係の成り行きがくっきりと描かれていく。
 妬んだり恨んだりしていても、窮地に陥れば必死で助けたりもする。家族ならではの微妙で深い結びつきが丁寧に映し出され、心打たれた。特にしみじみと共感したのは、男と女の感情のこと。いつの時代も変わらない、男の言い分、女の言い分。完全に相容れることはなく、だからこそ惹かれあい、支えあう。やっかいでも面白く、価値のあること。そのリアルな感覚が、日常の淡々とした会話や生々しい諍いなどを通して、とてもはっきりと伝わってくるのだ。


 表現力に長けた女優たちの競演は期待通り、はなやかで観ごたえ充分。ベテラン勢と比べると深田恭子にやや力不足感もあったが、かわいらしく花を添えていたためそれも良し。第27回モントリオール世界映画祭コンペ部門では無冠に終わったものの、満席の観客からは喝采と賛辞が贈られた……ということも頷ける。


 また、懐かしの昭和な雰囲気も印象的。レトロな煙草の自販機や豆腐売りのラッパの音、畳の部屋に縁側のある古きよき日本家屋など、地味ながらもあたたかみや味のある風情をたっぷりと満喫できる。冷たい風が身にしみるようになる11月。日本における家族や恋愛について等身大で描いた昭和生まれの邦画で、しみじみとした感動体験をしてみてはいかがだろう。
『阿修羅のごとく』 2003年日本映画
データ
2003年10月更新

2003年11月8日公開
全国東宝洋画系にてロードショー

■2003年 日本映画
■上映時間2:15
■東宝配給
■監督/森田芳光
■原作/向田邦子
■出演/大竹しのぶ
黒木瞳
深津絵里
深田恭子
仲代達矢
八千草薫
小林薫
中村獅堂



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。