ビッグ・フィッシュ 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ビッグ・フィッシュ

永遠の子供ティム・バートンがとうとう大人に
お得意のファンタジックなビジュアルで
父子の和解を描いたヒューマンな物語



 ディズニー・スタジオ出身、アニメーターとしてキャリアをスタートさせ、映画監督として『シザー・ハンズ』『スリーピー・ホロウ』など数々の作品でその異才を発揮してきたティム・バートン監督による最新作。主演にイギリス出身の人気俳優ユアン・マクレガー、大ベテランのアルバート・フィニーをはじめ、バートン監督のユニークでロマンティックな世界観にぴったりの個性派俳優も多数登場。風変わりな父と堅実な息子との和解をファンタジックに描いた、ほのぼのとした人間ドラマである。  

ビッグ・フィッシュ
 ジャーナリストをしているウィルは、父エドワードと自分の結婚式で口論をして以来、交流を持たずにいた。ウィルの父は、とりとめのない巧みな話術と明るい人柄で、誰からも愛される個性的な人物。子供のころは周囲と同じようにウィルも父を愛していたのだが、自分が大人になるにつれ、父の実像が見えないことに不信感を持ち始めていたのだ。そんなある日、母から父の病が悪化した知らせを受けて、出産間近の妻とともに、ウィルは故郷へと向かった。


 一万本の黄色い水仙の花、サーカスの下働き、暗い森の向こうにある理想郷……エドワードの語る不可思議なエピソードの数々も、ファンタジーが十八番のバートン監督ならお手のもの。鮮やかでノスタルジックなビジュアルがスクリーンいっぱいに広がり、観客をふわりと幸せな世界へ導いてくれる。
ビッグ・フィッシュ
 ティム・バートンは大好きな監督2人のうちのひとりで、いつまでたってもシャイで純粋な少年の目線が主軸になっている作風が、本当に好きだった。今回は、どことなく彼が、とまどいながらも大人の視点で作品づくりをしていることに、個人的には寂しくもあり、嬉しくもあり……。本作のオファーをバートンが受けたのは、実生活で父を亡くしたことがきっかけだったのだそう。また、本作の製作の終わるころ、この映画にも出演している恋人ヘレナ・ボナム=カーターとの間に子供が生まれ、彼は実際に父親になったのだ。つまりバートンは、この作品の始まりに父を亡くし、恋人が自分の子供を妊娠しているときに製作を手がけて、終わるころに父となった。こんな風に、まるで必然のような偶然の重なりに出会うと、いつも不思議な気分になる。また正直にいうと、原作どおりなのか脚色の狙いなのか、全体的に漫然としすぎていて、何を伝えたいのかわからない部分も多々あった。……でももしかすると、人生経験の未熟な私にはまだ感じることのできない何か、言葉やあらすじだけでは表しきれない何かが、この物語には詰まっているのかもしれない。


 もう少し時が過ぎたころにこの作品を観たら、感じ方もガラリと変わるのだろうか。いずれまた、もう一度観てみたい。両親が年老いて、自分も親となり、受け継がれていく大きな流れにスッと組み込まれたときに、また。観終わった後、そんなことをつらつらと考えながら、家に向かって夜道をのんびりと歩いていった。
『ビッグ・フィッシュ』 2003年アメリカ映画
データ
2004年4月更新

ビッグ・フィッシュ

2004年5月15日公開
日比谷スカラ座1ほか
全国東宝洋画系にてロードショー

■2003年 アメリカ映画
■上映時間2:05
■ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント配給
■監督/ティム・バートン
■原作/ダニエル・ウォレス
■出演/ユアン・マクレガー
アルバート・フィニー 
ビリー・クラダップ
ジェシカ・ラング
ヘレナ・ボナム=カーター



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。