ブロークバック・マウンテン 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ブロークバック・マウンテン

© 2005 Focus Features LLC/WISEPOLICY
すべてが満たされていたあの場所へかえりたい
2人のカウボーイの秘められた関係を
しみじみとした映像とサウンドで静かに描く



 2005年のヴェネツィア国際映画祭でグランプリの金獅子賞を受賞、第78回アカデミー賞では8部門の最多ノミネートを受けている話題作。同性愛が厳しく非難されていた1960年代初頭のアメリカに始まり、20年にわたる2人のカウボーイの秘められた関係を描く。監督は『グリーン・デスティニー』のアン・リー、主演は人気若手俳優のヒース・レジャーとジェイク・ギレンホール。ゆったりとした大自然の清涼な空気と素朴なサウンドにのせて、許されない関係に苦しむ2人の姿を映し出す、シリアスなラブ・ストーリーである。


  1963年、イニスとジャックは羊の放牧の仕事を得て、ワイオミング州のブロークバック・マウンテンでひと夏を過ごすことに。異性愛者だったはずの2人は友情を深めるうち、心も身体も愛し合うようになる。が、極めて保守的なカウボーイの世界で生きる2人は、その夏限りで別々の道を歩むことを選択。イニスはワイオミングで、ジャックはテキサスでそれぞれに結婚し、子供が生まれる。
ブロークバック・マウンテン

 愛し合っているのだから一緒にいるべき、という屈託のないジャックと、世間体からして男同士は一緒にいられない、という頑ななイニス。正反対の2人が恋に落ちるのはよくある話だが、保守的な時代の風潮やイニスの抱えるトラウマによって関係は膠着してゆく。
ブロークバック・マウンテン
 原作はアニー・プルーの短編小説。ラッセ・ハルストレム監督が手がけた映画『シッピング・ニュース』の原作者であり、同作でピューリッツァー賞を受賞したことでも知られる人気作家だ。秘められた想い、社会的な軋轢、マイノリティの苦悩、大自然の癒し……という同じテーマが違う形で繊細に綴られている。


 「出演を決める前にはもちろん恐れもあった」とレジャーが語るように、男同士の露骨な性描写があることから多くの俳優が出演を躊躇したという本作。レジャーとギレンホールは撮影中に気まずくなることもなく、互いに心地よく演じることができたのだそう。そうした自然な相性の良さや信頼関係も、劇中の雰囲気に生きているに違いない。本作について、「映画製作はもちろん、人生そのものの不可思議さを感じます」と語るリー監督。彼は『グリーン〜』で2001年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞したものの、2003年の『ハルク』で興行的に結果が出せずに行き詰まり、長期休暇や引退を考えていたとのこと。今回は原作に惹かれ、小品として製作を決めたため、この大きな反響にとても驚いているそうだ。


 「気にしていないふりをしているが実はとても気になる」と監督が語る第78回アカデミー賞の授賞式は、3月5 日(日本時間3月6日)。同性愛をテーマにした作品の初の作品賞受賞なるか。“ゲイ映画の一部ではなく、純粋な愛の物語”の行方は果たしていかに。
『ブロークバック・マウンテン』2005年アメリカ映画
データ
2006年3月更新

ブロークバック・マウンテン

2006年3月4日公開
シネマライズほか全国ロードショー

■2005年 アメリカ映画
■上映時間2:14
■ワイズポリシー配給
■監督/アン・リー
■脚本/ラリー・マクマートリー
ダイアナ・オサナ
■原作/アニー・プルー
■出演/ヒース・レジャー
ジェイク・ギレンホール
ミシェル・ウィリアムズ
アン・ハサウェイ
ランディ・クエイド



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。