さらば、ベルリン 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
さらば、ベルリン

© 2007 Warner Bros. Entertainment Inc.
ソダーバーグがフィルム・ノワールに捧ぐ
徹底した1940年代調の音楽とモノクロ映像で。
ファム・ファタルをめぐるミステリーの美学を描く



 1945年、ドイツのベルリン。第二次世界大戦の収束間際から終戦まで、アメリカとソ連とイギリスとフランスの4国が分割統治していた混沌のベルリンにて、めぐりめぐる謎を描く。監督はスティーブン・ソダーバーグ、出演はジョージ・クルーニー、ケイト・ブランシェット、トビー・マグワイア、説明不問のハリウッド陣。殺人、ロマンス、時代が負った戦争という傷…徹底した1940年代のスタイルで製作された、ソダーバーグ流のフィルム・ノワールである。


 ポツダム会談取材のため、ベルリンを訪れたアメリカ人記者のジェイクは、滞在中の運転手として当地に駐留する米軍兵士タリー伍長を紹介される。タリーが付き合っている売春婦レーナにせがまれ、国外脱出の一計を案じる中、レーナがジェイクの昔の情婦だったと知る。タリーはイギリスへ、ジェイクはアメリカへ、それぞれにレーナを連れ出そうと考えるが…。
さらば、ベルリン
 光と影のコントラストでみせるモノクロ映像、カメラに向かって演技する大仰なスタイル。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞を受賞した作家ジョセフ・キャノンの小説『The Good German』をソダーバーグ監督が4年かけて脚色し、映像や音楽などをとことん’40年代調で追求。年代もののカメラレンズを採用し、撮影はほとんどオープンセットでCGを抑え、自らが強い影響を受けたという伝統的なフィルム・ノワールの手法を演出。撮影監督としてもしばしば活躍するソダーバーグが本作でもその手腕を発揮し、匂い立つような退廃的で不穏な空気でスクリーンを満たしている。アメリカ、ソ連、ドイツと各国の利害が関わってくるため人物相関図が少々ややこしいが、ミステリー好きには見ごたえのある仕上がりだろう。


 本作について、普段の演技とはまったく違う、と語るクルーニーは、「演技の内面化なんてほとんどなくて、すべてを包み隠さずさらけ出して非常に単刀直入だった」とも。 周囲のさまざまな思惑に翻弄されながらも、真実に迫っていくジェイクを好演している。 『スパイダーマン』ですっかりヒーローが板についたマグワイアが今回はケチな小悪党役、という落差は、監督の狙い通りとのこと。 そして物語の要であるファム・ファタルを、ブランシェットがミステリアスに演じている。
さらば、ベルリン
 「お前は私の息子に似ている。頭は悪いが根はいい」とタリーを諭すソ連の将軍の台詞に、人体実験で両足の機能を失ったユダヤ人の話にジェイクが耳を傾けるシーンに。 底なしの混沌の中でも一筋のまっとうな人情が差し込む場面が印象的で、当時の実際の記録映像にも心がざわめく本作。 殺人事件の真相は? レーナはなぜ追われるのか? 彼女が抱える秘密とは? 運命の女に誘(いざな)われ、クラシカルな世界に浸りつつ緻密でダークなミステリーの醍醐味を堪能する。 ソダーバーグの美学が詰まった作品である。
『さらば、ベルリンー』2006年 アメリカ映画
データ
2007年7月更新

ヘアスプレー
オフィシャルサイト
『さらば、ベルリン』


2007年9月22日公開
TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか
全国ロードショー

■2006年 アメリカ映画
■上映時間1:48
■ワーナー・ブラザース映画配給
■監督/スティーブン・ソダーバーグ
■原作/ジョゼフ・キャノン
■出演/ジョージ・クルーニー
ケイト・ブランシェット
トビー・マグワイア
ボー・ブリッジス
リーランド・オーサー



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。