ミス・ポター 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ミス・ポター

© UK Film Council/Hopping Mad Distribution(IOM)Ltd 2006 All Rights Reserved.
111ヵ国で一億部の売上を誇る物語の生みの親。
誠実に自然を愛し、人を愛した女性作家の半生を描く
ピュアな色彩のヒューマンドラマ



 100年以上の時を経て、今もなお世界中で愛され続けているキャラクター、ピーターラビット。その生みの親であるイギリスの女性作家ビアトリクス・ポターの半生を描いた物語。出演はイギリスを代表する俳優レニー・ゼルウィガー、ユアン・マクレガー、エミリー・ワトソン、監督は子ブタが活躍する『ベイブ』以来11年ぶりにメガホンをとったクリス・ヌーナン。封建的な社会の中、独自の感性で恋や仕事に向き合った女性の心の変遷を描く、ピュアなヒューマンドラマである。


 1902年のロンドン。ヴィクトリア朝の封建色が濃く残り、上流階級の女性が仕事をもつことなどありえない時代。良家の子女でありながら32歳で未婚のビアトリクスは作家を志し、出版社へ売り込みに。何社も断られた後、兄弟で出版社を経営しているフレデリック・ウォーン社から出版が決定。これが初仕事となるウォーン社の末弟にして新米編集者のノーマンは情熱的に心を砕き、ビアトリクスの処女作『ピーターラビットのおはなし』は初版が上梓されるやいなや大ベストセラーとなる。


 不器用ながらも自らの道を切り開いていくビアトリクスの姿は、当時ではとても進歩的。支配的な母親に真っ向から反発し、やさしく理解のある父親を困らせるところも説得力をもって生き生きと映し出されている。以前は個人的に、ピーターラビットたちの暮らす幻想世界は甘すぎるし、大量生産されている食器類やベビー用品に商業的なイメージをもっていたものの、ビアトリクスによる原書は超自然的な深い感性から描かれていたことがよく伝わってきた。そして彼女が自立心に富み、本物の愛と信頼を信じ、自然保護の先駆者として功績を残した女性であったことに大きな感銘を受けた。
ミス・ポター
 劇中では、信頼できる仕事相手から友人、恋人へと発展していくビアトリクスとノーマンの純愛が切なくも美しい。恋愛や作品に対するビアトリクスの確固たる自信や信念、お嬢様ならではの無邪気さをゼルウィガーがとても魅力的に演じている。 ’03年の『恋は邪魔者』に続いてゼルウィガーと2度目の共演を果たしたマクレガーは、真面目で純朴な英国紳士ノーマン役を好演。息の合った共演で楽しませてくれる。


 驚いたのは、ビアトリクスの積極的な自然保護活動。環境問題が深刻である今でこそ声高に叫ばれている大切な活動を、彼女は20世紀初頭から切に訴えて実行しているのだ。 彼女は23の作品を出版した後、作家や画家としての活動を止め、湖水地方に永住して牧羊と自然保護活動に専念。ナショナル・トラストの設立に尽力したとのこと。その後は自費で土地を買い続けて4千エーカーもの土地の所有者となり、1943年に77歳で他界した後、そこは永遠に保護される土地としてナショナル・トラストに贈与されたという。本作では実際に湖水地方で撮影が行われ、雄大に広がるおだやかな風景で心洗われる仕上がりとなっている。


 ラストシーンの映像がまた素晴らしい。湖水地方で無心にスケッチをし、自然と完全に調和しているビアトリクスの姿は、それだけで人としてのあるべき姿を物語っている。ひとりの女性作家の半生を通じて、愛や信頼を育み、自然を尊ぶことの大切さを伝える、上質なヒューマンドラマである。
『ミス・ポター』2006年 イギリス・アメリカ映画
データ
2007年8月更新

ミス・ポター
2007年9月15日公開
日劇3ほか全国ロードショー

■2006年 イギリス・アメリカ映画
■上映時間1:33
■角川映画配給
■監督/クリス・ヌーナン
■脚本/リチャード・モルトビー.Jr.
■出演/レニー・ゼルウィガー 
ユアン・マクレガー
エミリー・ワトソン
バーバラ・フリン
ビル・パターソン



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。