キングダム-見えざる敵- 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
キングダム-見えざる敵-

FBIとサウジ国家警察がテロ組織を徹底捜査。
人種や国籍を超えた活動や心の交流を描く
事実を基にした社会派アクション・ムービー



 敵対する宗教、政治や経済の摩擦、そして憎しみの連鎖。 アメリカのFBI捜査官がサウジアラビアの国家警察とともに、サウジアラビアで自爆テロを起こしたイスラム過激派を捜査する様を描く。


 出演はオスカー俳優のジェイミー・フォックスとクリス・クーパー、アクション系のヒロインとしても人気のジェニファー・ガーナー。 監督は脚本家、プロデューサー、俳優としても活躍しているピーター・バーグ、そして製作はマイケル・マン。テロ事件の捜査に関わる人々のデリケートな心情や厳しい活動を劇的に描く、社会派のアクション・ムービーである。


 石油産出国サウジアラビア。アメリカ人をはじめ他国のビジネスマンらが暮らす首都リヤドの外国人居住区で、大規模な自爆テロが勃発する。各国の外交筋が穏便にやり過ごそうとしていく中、事件で同僚を亡くしたFBI捜査官フルーリーは4人の精鋭チームを結成し、ホワイトハウスと国防省に直訴。5日間の期限付きで極秘捜査の許可を得て、サウジアラビアへと向かう。
キングダム-見えざる敵-
 緻密な現場検証と分析、被害者たちの検死、もと過激派の人物への接触。前半の地道な部分はやや退屈に思えるかもしれないが、後半から緊張感が一気にピークへ。サウジ国家警察の大佐とともに、フルーリー率いるFBIメンバーは事件の首謀者である過激派の幹部へと迫っていく。犯人逮捕に向かって一丸となる、アメリカ人のフルーリーとサウジアラビア人の大佐との心の交流が印象に残る。


  バーグ監督が本作の着想を得たのは1996年6月25日にサウジアラビアのコバール・タワーで起きた反米テロ事件のニュースを見た時とのこと。FBIが初めてサウジの法律に介入し、困難な調査に取り組んだことを知り、「宗教的に敵対し、戦争になる可能性も持ち合わせているアメリカとアラブが、文化的相違や疑念を乗り越えて協力する様子を(映画で)描こうと思った」と語っている。 2001年の9・11アメリカ同時多発テロでは、実行犯19人のうちの15人とオサマ・ビンラディンがサウジアラビア人であり、反サウジ感情が高まった後の現在が、「この映画にとって最良の時だと確信している」と監督は言う。 また脚本は、2003年5月にサウジの外人居留地区にて一晩で3ヶ所が襲われた事件をベースに、“政治的にニュートラルである”ことを念頭に完成させたのだそう。
キングダム-見えざる敵-
 出演者たちは運動能力や筋力、銃器類の扱いのトレーニングをしっかり積んだとのこと。フォックスやクーパーは、厳しさや鋭さがありながらも人間的な情をもつFBI捜査官役を好演。そこに紅一点としてガーナーが花を添えている。


 理不尽な暴力に対する義憤の念は国籍を問わずそこに在り、過激なテロ行為とテロリスト排除の攻防がいつまでも繰り返される理由には、宗教や政治といった大儀だけでなく、関係者たちの人間的感情も動因のひとつであるというやるせなさ。製作のマイケル・マンとバーグ監督は本作について、とても端的に表している。 「僕らは、政治のニュースを伝える映画を目指したわけじゃない。人々を楽しませる力強いアクション映画でありながら、その時代の政治問題をフェアに切り取ることのできる映画を作りたかった」。善悪だけでは割り切れない現状を、魅力ある作品にかえて伝える佳作である。
『キングダム-見えざる敵-』 2007年 アメリカ映画
データ
2007年9月更新

キングダム-見えざる敵-

2007年10月13日公開
全国東宝系にてロードショー

■2007年アメリカ映画
■上映時間 1:50
■UIP映画配給
■監督/ピーター・バーグ
■脚本/マシュー・マイケル・カーナハン
■製作/マイケル・マン
■出演/ジェイミー・フォックス
クリス・クーパー
ジェニファー・ガーナー
ジェイソン・ベイトマン
アシュラフ・バルフム



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。