ワールド・オブ・ライズ

爆破テロ組織のリーダー逮捕をめぐる
米国と中東の諜報員たちによる激しい頭脳戦。
スコット監督によるハードボイルドなアクション大作

  • 2008/11/28
  • イベント
  • シネマ
ワールド・オブ・ライズ©2008 Warner Bros. Entertainment Inc.

リドリー・スコット監督が放つハードボイルドなアクション・サスペンスが日本公開。出演はハリウッドの2大スター、男臭い作品への出演が続くレオナルド・ディカプリオ、オスカー俳優のラッセル・クロウ。爆破テロ組織のリーダー逮捕を巡り、アメリカのCIA本部局員と現場に潜伏するCIA工作員、自国を護るヨルダンの情報局員らが繰り広げる激しい情報戦を描く。米国と中東のシビアなギャップ、臨場感あふれるアクションとともに描く、“嘘の世界”の結末とは?

顔も居場所も不明の爆破テロ組織のリーダーを追う、有能なCIA工作員ロジャー・フェリス。堪能なアラビア語を操り、中東の文化や現地のアシスタントを尊重しながら現場で命懸けの諜報活動を続けている。衛星を通じてフェリスに指令を送るのは、CIA本部勤務のエリート局員エド・ホフマン。冷酷な切れ者である彼は、合理性と大儀のためなら現場の犠牲をものともしない。ヨルダンに爆破テロ組織の隠れ家が発覚し、フェリスはヨルダン情報局の責任者ハニ・サラームに協力を要請。誇り高く用心深いハニはフェリスを気に入るが、警告を一言発する。「私に嘘をつくな」。

レオナルド・ディカプリオ、マーク・ストロング

安全な場所から繰り出される現場を知らない非情な指令、本部の指令に背いても現場主義で危機を切り抜ける機転、現地を知り尽くしているからこそ決断できるきわどい戦略。前半は頭脳戦による騙し合いが主流のため、情報過多で地味な展開が続くものの、フェリスとホフマンが大きな手に打って出る中盤から一気に緊迫感を帯びてくる。アメリカと中東という地域や文化、風習や思想の違いから起きる摩擦や戦略の差もしっかりと描き出されている作品だ。

原作は国際問題に精通するベテラン・ジャーナリスト、デイヴィッド・イグネイシアスの小説『Body of Lies』。イグネイシアスはハーバード大学とケンブリッジ大学を卒業し、『ウォール・ストリート・ジャーナル』で10年にわたって中東、外交問題の記者を務め、’86年に『ワシントン・ポスト』に入社後は’90〜’92年にイラクのクウェート侵略関連記事を担当。その後、パリの『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』の編集主幹を経て、現在は雑誌や新聞のコラムニスト、小説家として活躍中。ジャーナリストとしてエドワード・ウエインタル賞などの受賞でも知られ、中東の文化、外交問題に造詣の深いことが、物語のリアリティに色濃く反映されている。

レオナルド・ディカプリオ、ゴルシフテ・ファラハニ

ディカプリオは情に厚い現場主義のCIA工作員、フェリスを熱演。特に自身でも「撮影の何か月も前から入れ込んでいた」と語るクライマックスでは、鬼気迫る演技をスクリーンに焼き付けている。クロウは体重を20kg増やして、安全圏から指令を出すエリートCIA局員ホフマンを表現。子供の送り迎えをしたり家事をしたり、マイホームパパをしながら現場の工作員に24時間非道な指令を送り続けるCIA局員の二面性をクールに演じている。ヨルダン情報局の責任者ハニ役で完璧なスーツに身を包み、優雅さに覆われた残虐さを絶妙に表現しているのはイギリス出身の俳優マーク・ストロング。フェリスが惹かれるヨルダン系イラン人で看護師のアイシャ役は、イランで活躍する人気女優ゴルシフテ・ファラハニが初々しく好演している。

ラッセル・クロウ

男たちによるどこまでも男臭い社会派のアクション大作。国際問題などのストーリー性は別にして、映像やスピード感から個人的には『エネミー・オブ・アメリカ』を思い出す面も。今も世界のどこかで、命懸けの諜報活動に身を投じる男たち。ただのフィクションではなく現実味を帯びた、リドリー・スコット流の迫力のドラマを味わってみては。

作品データ

ワールド・オブ・ライズ
公開 2008年12月20日公開
丸の内ピカデリー1ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2008年 アメリカ
上映時間 2:08
配給 ワーナー・ブラザース映画
監督 リドリー・スコット
脚本 ウィリアム・モナハン
原作 デイヴィッド・イグネイシアス
出演 レオナルド・ディカプリオ
ラッセル・クロウ
マーク・ストロング
ゴルシフテ・ファラハニ
オスカー・アイザック
サイモン・マクバーニー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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