7つの贈り物 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
7つの贈り物

純粋で極端な思いと行動、幸福で哀しい誤算。
ミステリーでありラブストーリーでもある
ウィル・スミス主演による異色の人間ドラマ



  主演は人気俳優のウィル・スミス、製作はイタリア人監督ガブリエレ・ムッチーノをはじめ’06年の『幸せのちから』のスタッフが再結集。心に傷を負う孤独な男ベンが、綿密に立てたある計画を進めていく経緯と顛末を描く。ミステリーに始まり、ラブロマンスとなり、ヒューマンで締めくくる物語。ベンの不可解な言動の謎が徐々に明かされ、彼自身の心の旅を映してゆく人間ドラマである。


 ベンは親友の弁護士ダンを巻き込み、ほかに誰にも知られないようにある計画を進めている。情夫から暴力を受けている親子、盲目のピアニスト、心臓を患うエミリーら7人の見知らぬ他人とベンは直接コンタクトをとり、彼らの実情を淡々と確かめていく。ベンが海辺に洗練された家をもちながら質素なモーテルへと引っ越した頃、弟から連絡が入るが、彼は話をしようとしない。
ウィル・スミス
 なぜその7人なのか。ベンの計画とは、彼の過去に起こった出来事とは? 謎かけに始まり、物語の核心にじわじわと迫ってゆく展開。途中から察しはついてくるものの、最終的にどうするのか、終盤のクライマックスで「そういうことだったのか」と思わせる伏線もいくつかあり、力強い展開で観客の思考をグッと引きつける。ベンの計画そのものの正否は人それぞれ思うところがあるだろうが、殻に閉じこもった孤独な人間が予定外のきっかけに気持ちが動かされるシーンが胸を打つ。


 本作のスミスにはいつもの陽気で軽妙なノリはなく、終始シリアス。「自分とは正反対」というベンの暗い感情に難しさを感じながらも、突き動かされていくかのように自らの計画に没頭するベンを全身で演じている。心臓を患いながらも生き生きと暮らすエミリー役はロザリオ・ドーソンが、穏やかな人格者である盲目のピアニスト役は演技と存在感に定評のあるウディ・ハレルソンが好演。弁護士のダン役にバリー・ペッパー、ベンの弟役にマイケル・イーリーなど脇も実力派で固めている。
ウィル・スミス
 脚本はTVのコメディ番組の企画や脚本を経て、本作が長編映画の脚本家デビューとなるグラント・ニーポートによるもの。また本国イタリアで認められているムッチーノ監督は、スミス主演の『幸せのちから』でハリウッドデビューに成功した41歳。本作について、「途方もなく様々な感情に溢れたストーリーで、観る者を挑発し、動揺させ感動させる」と語っている。


 さて、印象的なシーンはいろいろあるものの、ベンの緊密な計画の漏洩を防ぐため、今回は具体的なエピソードの説明があまりできない。本作はスミス曰く、「危機に直面した時に出会った男女の物語であるだけでなく、一人の男が人間性を取り戻す物語でもあるんだ」。ドーソン曰く、「様々な愛を描いた作品。得たいと願う愛、受け入れなければならない愛、自分への愛、見知らぬ他人への愛、そして何よりも人生そのものに対する愛です」とのこと。ヘヴィなまでに純粋で極端なゆきすぎた思いと行動、そして幸福で哀しい誤算。ベンの計画とその顛末を観客はどう評価するか。製作陣が期待していたアカデミー賞の賞レースからははずれてしまったし、手放しで誰にでも薦められる明るい作品とはいえないが、傷みを知る人間には何かしら響くものがある。そんな作品である。
『7つの贈り物』 2008年 アメリカ映画
データ
2009年1月更新

ウィル・スミス
2009年2月21日公開
丸の内ピカデリー1ほかにて
全国ロードショー

■2008年 アメリカ映画
■上映時間2:03
■ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給
■監督/ガブリエレ・ムッチーノ
■脚本/グラント・ニーポート
■製作/トッド・ブラック
ジェームズ・ラシター
ジェイソン・ブルメンタル
スティーヴ・ティッシュ
ウィル・スミス
■出演/ウィル・スミス
ロザリオ・ドーソン
ウディ・ハレルソン
バリー・ペッパー
マイケル・イーリー



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。