チェンジリング 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
チェンジリング

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’20年代のロサンゼルスで起きた実話を映画化
母親が息子のために腐敗した組織に立ち向かう
イーストウッド監督×アンジーによる社会派ドラマ



  監督・製作・音楽にクリント・イーストウッド、主演にアンジェリーナ・ジョリー。1920年代のアメリカで実際に起きた事件を基に映画化された物語。少年の失踪事件をきっかけに暴かれていくロサンゼルス市警察の腐敗、ひとりのシングルマザーの闘いを描く。「息子を見つけたい」という一心でいち母親が汚職にまみれた組織に立ち向かい、改革へと導いた軌跡を追うシリアスな社会派ドラマである。


 ’28年のロサンゼルス。電話会社勤務のシングルマザー、クリスティン・コリンズのひとり息子ウォルターが失踪。クリスティンは悲しみに打ちひしがれながらも警察に連絡し、自らも全米に問い合わせて必死に捜索し続け、その5ヶ月後、イリノイ州で発見されたと警察から連絡が入る。引き取りにいくとその少年はまったくの別人だった。が、少年は自分がウォルターだと言い張り、警察はとりあわない。クリスティンが担当のジョーンズ警部に「息子を捜してほしい」と強く抗議すると、彼女は精神病棟へ強制入院させられてしまう。
ジョン・マルコヴィッチ、アンジェリーナ・ジョリー
 アメリカで実際に起きたゴードン・ノースコット事件に関わる実話。クリスティンをはじめ、彼女を支持する長老派教会のグスタヴ・ブリーグレブ牧師、権力で押さえつけようとするJ・J・ジョーンズ警部らはすべて実名で登場。当時の出来事を真摯に伝えている。


 アンジーは当初、『マイティ・ハート/愛と絆』で夫を誘拐される妻役を演じたばかりだったことや、子供が誘拐される物語がいやだったことから、出演に乗り気ではなかったとのこと。が、クリスティンの強靭さに心を動かされたというアンジーは語る。「このストーリーがとても好きなのは、権力の座にある人たちの腐敗を暴いたという点よ。タイミングがいいわ。現代でも私たちはそれと闘っているんだから」。また撮影中は、子役にストレスやショックをなるべく与えないように配慮。息子を名乗る少年にクリスティンが怒りをぶつけるシーンでは、目の前に少年がいると見立てて彼なしで演じたそうだ。今回、イーストウッド作品に初出演となるアンジーは監督の手腕に感銘を受けたと語り、イーストウッドもまた「’40年代の映画黄金期の女優たちを思い出させる、個性的で存在感のある素晴らしい女優」と称賛している。劇中ではジョン・マルコビッチが演じる地域活動家のブリーグレブ牧師と、ジェフリー・ドノヴァンが演じる横暴で卑劣なジョーンズ警部が火花を散らす対立も迫力だ。
アンジェリーナ・ジョリー
 当時のロサンゼルスでは市の上層部が解任されるなど衝撃的な事件だったにも関わらず、今は忘れ去られていたという一連の出来事。事件からたった7年後の’35年にクリスティンが亡くなっていることも関係しているのだろうか。そもそもジャーナリスト出身の脚本家J・マイケル・ストラジンスキーが市庁舎の焼却処分予定の古い記録を読んだことをきっかけに、映画として遺された本作。ストラジンスキーは語る。「僕は、クリスティンが成し遂げた業績を讃えたかった。僕の仕事は、できるかぎり誠実にストーリーを語り、彼女の闘いを讃え、彼女が決して信念を失わず、息子を捜し続けた姿を描くことだった」。本作は事実が尊重されているため、完全に胸がすく結末とはいえない。が、成り行きとはいえ腐敗した組織に敢然と立ち向かい、健全な社会を取り戻すきっかけとなった人物の存在を伝えることは意味のあることだ。第61回カンヌ映画祭で特別賞を受賞し、アカデミー主演女優賞などにノミネートされている本作。’20年代のアメリカで闘った市井の人の勇気が、観る側の心をゆさぶる物語である。
『チェンジリング』 2008年 アメリカ映画
データ
2009年2月更新

アンジェリーナ・ジョリー
2009年2月20日公開
TOHOシネマズ日劇ほかにて
全国ロードショー

■2008年 アメリカ映画
■上映時間2:22
■東宝東和配給
■監督・製作・音楽/
クリント・イーストウッド
■脚本/J・マイケル・ストラジンスキー
■出演/アンジェリーナ・ジョリー
ジョン・マルコヴィッチ
ジェフリー・ドノヴァン
マイケル・ケリー
ガトリン・グリフィス
デヴォン・コンティ
ジェイソン・バトラー・ハーナー
エイミー・ライアン
コルム・フィオール



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。