ハワイ島の小さな町と個性的な住人に迎えられ
青年は大切な思いを胸に刻む。
やわらかな感情を引き出す温かい物語
実力派クリエイターたちの才能が結集し、自然体で気持ちのいい映画が完成。ハワイ島に実在する小さな町ホノカアのオールロケにより、青年と老女とのほのかな交流を描く。出演は本作が映画初主演となる人気の若手、岡田将生、そして倍賞千恵子、松坂慶子、長谷川潤。原作は写真家の吉田玲雄がホノカアに魅せられ、実際に映画技師として滞在した日々を綴ったエッセイ。脚本とプロデュースはヒットCMの制作で知られるCMプランナー崎卓馬、監督はCMディレクターとして中央酪農会議「牛乳に相談だ」、明治製菓「キシリッシュ」などを手がけ、’06年にカンヌ国際広告祭銅賞を受賞し、本作が初の長編映画となる真田敦。ゆったりと流れるやわらかな時間を届ける、やさしいやさしい映画である。
失恋したレオは、大学を休学してホノカアの映画館で映写技師の助手をしながら暮らすことに。無口な映写技師バズ、食いしん坊な映画館の女主人エデリ、エロ本を愛読する日系のおじいさんコイチ、バーバーで働く元気なおばちゃんのみずえたちとともに、のんびりと過ごす日々。ある日レオは、いたずらでヘンクツなおばあちゃんのビーと出会い、ご飯を毎日作ってもらうことになる。和食や洋食などビーオリジナルのおいしい家庭料理を食べるうちに、ビーとレオは家族のように親しくなっていく。
“癒し系”という安易な形容が俗っぽく思えてしまうような、良質な作品。実話をベースにファンタジーやフィクションの要素を加えて脚本化され、物語として楽しめるように仕上げられている。特に大きな事件があるわけではないけれど、誰もが味わったことのあるようなノスタルジーをいい塩梅で表現。ビーとレオの心の結びつきには、そっと心を揺さぶられる。
レオ役は良作への出演が続く岡田将生。ニュートラルな青年をいい感じに好演している。ごく自然にぺロッとお尻をだす着替えのシーンでは、俳優だなあと笑ってしまった。アイドルだとこうはいかない。わが道をゆくビーは、倍賞千恵子がかわいらしく味わい深く演じている。彼女は原作の吉田氏の希望による配役で、実在したビーさんさながらの佇まいに、吉田氏はロケ現場で涙を流しながらハグをしたほどだったそう。また映画館の女主人エデリに松坂慶子、レオが恋をするマライアにハワイ島育ちの長谷川潤、さらに喜味こいし、正司照枝、蒼井優、深津絵里など魅力的な面々が顔を揃えている。
原作者の吉田玲雄は写真家であり、チェコ共和国出身の母と、もと吉田カバンのチーフディレクター吉田克幸を父にもち、父とともに新ブランドのポーター・クラシックを立ち上げて銀座と福岡にショップをオープン、と多彩に活躍する人物。高校卒業後に渡米し、サンフランシスコの芸大で写真と映画を専攻。写真家ラリー・サルタンやビート詩人マイケル・マクルーアのもとで学び、感性を磨いてきたとのこと。脚本の高崎卓馬はホノカアのロケハンで撮影した写真がたまたま本物のビーさんの家だったり、アンティークショップでビーさん本人の洋服が見つかったり、制作までの道のりで小さな奇跡をたくさん体験したそうだ。そして撮影は大手メーカーの広告写真や人気アーティストのPVなども手がける女性写真家の市橋織江、料理は雑誌や広告などで料理監修を手がける料理家の高山なおみ、音楽プロデューサーは日本のサブカルチャーをリードしてきた桑原茂一と、絶妙な顔ぶれ。真田監督は「すべてさりげなく曖昧に作られています。観てくれる人にいろいろ感じてもらえればいいと思っています」とコメントしている。
ハワイ島の北、小さな日系移民の町ホノカアで、ロコの人々による協力のもとオールロケで撮影されたという本作。ホノカアという町で、そこに暮らす人々の間に流れている空気がただただいとおしい。せわしい毎日で忘れがちなシンプルな感覚を引き出してくれる、ほんのりと甘い風味の作品である。
公開 | 2009年3月14日公開 全国東宝系にてロードショー |
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制作年/制作国 | 2009年 日本 |
上映時間 | 1:51 |
配給 | 東宝 |
原作 | 吉田玲雄 |
脚本・プロデュース | 崎卓馬 |
監督 | 真田 敦 |
出演 | 岡田将生 倍賞千恵子 松坂慶子 長谷川 潤 喜味こいし 正司照枝 蒼井 優 深津絵里 |
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