ソルト

アンジェリーナ・ジョリー出産後の復帰作!
ミステリアスな女性スパイが運命に立ち向かう
ハードボイルドなスパイ・アクション

  • 2010/07/30
  • イベント
  • シネマ
ソルト

2008年にブラッド・ピットとの間にできた双子を出産後、本作で現場復帰を果たしたアンジェリーナ・ジョリー主演のアクション・サスペンス。共演は『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』『レポゼッション・メン』など話題作への出演が続くリーヴ・シュレイバー、テレビや舞台でも活躍しているキウェテル・イジョフォーほか。監督は’05年の『ボーン・コレクター』以来、アンジーと2度目のタッグとなるオーストラリア出身のフィリップ・ノイス。あらゆる危険にさらされながらも職務を全うしてきたCIAの女性職員ソルトは、謎のロシア人亡命者から「ロシア側のスパイである」と告発され……。ミステリアスな女性スパイが自らの運命に立ち向かう、シリアスなスパイ・アクションである。

アメリカのCIA本部。ロシア語が堪能なイヴリン・ソルトのもとに、ロシア人亡命者の聞き取り調査の依頼が届く。取調室でオルロフと名乗る亡命者に話を聞くと、「ロシア側のスパイであるCIA局員の名前は、イヴリン・ソルトである」と告げられる。ソルトは身の潔白を周囲に訴え、愛する夫の保護を要請するが、聞き入れてもらえない。とっさに包囲網を突破して逃走したソルトは、CIAから執拗な追跡を受けることになる。

アンジェリーナ・ジョリー

出産後の現場復帰となる本作で、相当ハードなアクションを披露したアンジーにさすが!の一言。物語は主人公の立場がグレーのまま展開し、登場人物それぞれの立場や思惑が交錯。サスペンスのストーリー性を大切にしている内容もさることながら、思わず拝みたくなるほどエネルギッシュなアンジーの独擅場を観るための作品ともいえる。

実はソルトはもともと、トム・クルーズが演じる予定だったということは、資料に明記されていなくとも報道されていた事実。彼が降板してアンジーが演じることになり、男性から女性スパイへと設定は変更されたものの、アクションはハードなままに。12階のビルの外壁を壁づたいに歩いているのも、走行中のトラックの屋根に乗っているのもアンジー本人というから驚きだ。トップ男優並のハイレベルなアクションを、出産から1年後に自らこなしている、ということになる。彼女が「スタントはもともと大好き」であることはよく知られている通りで、今回の激しいアクションも楽しみながら演じたという。またソルトの戦闘スタイルは、タイのムエタイをもとにイスラエルで生まれ、FBIとアメリカの特殊部隊が採用している格闘様式“クラヴ・マガ”を取り入れたとのこと。長い手足で繰り出す蹴りやパンチが格好いい。今回のアクションについて彼女は、「彼ら(スタントに関わるスタッフ)も彼らの装置に対しても全幅の信頼を寄せています。怖いと思うよりも、1日だけサーカスに出演している気分なの。彼らは私が得意なことや苦手なことをちゃんとわかってくれているんです」とコメントしている。またCIAの同僚としてウィンター役はシュレイバーが、ピーボディ役はイジョフォーが、ソルトを告発するロシア人オルロフ役はポーランド出身のベテラン、ダニエル・オルブリフスキーが演じ、それぞれのほどよい存在感によってストーリーの土台が支えられている。またノイス監督は自身の父親がオーストラリアのスパイ組織に所属していたため、子供の頃から諜報活動に興味を抱いていた、という逸話もユニークだ。

アンジェリーナ・ジョリー

アメリカに潜伏していたロシアの女性スパイが告発され……という物語で誰もが思い出すのは、NYで不動産業者をしていたという“美人すぎる女スパイ”ことアンナ・チャップマンのことだろう。2010年6月末にFBIがチャップマンを含むロシアのスパイ団10名を逮捕したことが発表され、米ロ政府の同意のもと、7月9日にはウィーンの空港で欧米のスパイとしてロシアで服役していた4名と身柄の交換が行われた、というあのニュースだ。スパイの身柄交換は東西冷戦中にはそれなりにあったものの、今回のことは冷戦後、最大規模だったとも。まるで『ソルト』のキャンペーン? と思えるくらい絶妙のタイミングで映画の設定さながらの出来事が露見するあたり、時の運をもっている作品なのかもしれない(全米では7月23日公開)。こうした出来事についてアンジーは、「この映画をご覧になったCIAの方でも50%の方は実際にある、50%の方はないというくらい論議されているところではあります。また実際に事件のニュースを聞くと、やっぱりあり得るんだなと強く感じましたね」とコメントしている。

リーヴ・シュレイバー、キウェテル・イジョフォー、アンジェリーナ・ジョリー

映画には、5番街のニューヨーク公共図書館本館やブロンクスの植物園など、ニューヨークを象徴する場所が登場。なかでも劇中でアメリカ副大統領の国葬が行われる聖バーソロミュー教会は、ニューヨーク市の史的建造物に指定され、ビザンチン様式が美しい建物だ。ソルトが駆け抜けてゆく背景に、ニューヨークのいろいろな表情が映し出されているところにも注目したい。

映画のラストには、まるで続きがあるかのような雰囲気も。続編の話はまだないとのことだが、「(続編が)もしあるならぜひ出演したい」とアンジーも前向きにコメント。続編の製作の有無は、本作が成功するか否かにかかっているはず。第2作へと続くかどうか、こちらも楽しみである。

作品データ

ソルト
公開 2010年7月31日公開
丸の内ピカデリー1ほか全国ロードショー
制作年/制作国 2010年 アメリカ
上映時間 1:40
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督 フィリップ・ノイス
脚本 カート・ウィマー
出演 アンジェリーナ・ジョリー
リーヴ・シュレイバー
キウェテル・イジョフォー
ダニエル・オルブリフスキー
アンドレ・ブラウアー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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