BECK 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
BECK

© ハロルド作石/講談社 © 2010「BECK」製作委員会
堤 幸彦監督が人気コミックを映画化!
さえない少年が天才ギタリストと出会い、
音楽が引き起こす奇跡を描く青春ストーリー



 全34巻で累計発行部数1500万部超、ハロルド作石の人気コミック『BECK』を、『TRICK』シリーズをはじめ映画やドラマ、舞台を手がけるヒットメーカー堤 幸彦監督が映画化。出演は水嶋ヒロ、佐藤健、桐谷健太、中村蒼、向井理、忽那汐里ほか旬の若手俳優が集結。さえない少年がアマチュアの天才ギタリストと出会い、バンド活動によって深まってゆく絆や、音楽に対する情熱を描く。少年の成長物語であり、爽快な青春ストーリーである。


 学校でタチの悪い連中からイジメを受ける平凡な高校生・田中幸雄(コユキ)は、ひょんなことからNY帰りのアマチュア天才ギタリストの南竜介と出会う。竜介の迫力の演奏をライブで聴き、アメリカの人気バンド、ダイイング・ブリードの力強い曲を聴くうちに、コユキは自分の中に勇気をもつようになる。一方、竜介はラッパーの千葉、ベーシストの平を誘い、バンドを結成。ある日スタジオで、コユキが竜介から譲り受けた古いギターを弾き、コユキの同級生の桜井裕志(サク)がドラムを演奏するのを聴いて、荒削りながらも“何か”を感じた竜介は2人をバンドに誘い、5ピースバンドのBECKが誕生する。


 音楽好きが寄り合ってガッツリ作った、ということがよく伝わってくる気持ちのいい作品。もともと原作のファンという堤監督は、ミュージックビデオも多く手がけ、自身もバンド経験があるとのこと。映画ファンはもちろん、原作ファンや音楽ファンなどあらゆる人々がしっかり楽しめるように、よく配慮されている。釣り人にしてギターの名手、「斎藤紙業」の経営者・斎藤さんがあらゆるヒット曲のフレーズをひたすら弾きまくるシーンは、ロックファンなら「ギターもつとやっちゃうよねー」と思い出し笑いがこみ上げてくるはずだ。
佐藤健、水嶋ヒロ
 帰国子女で日本語に弱い天才ギタリスト竜介役は、水嶋がやんちゃな雰囲気で表現。ソフトで理知的な美青年である通常モードとは違い、眉を細くそりあげて才気走ったイラチなキャラクターを生き生きと演じている。コユキ役の佐藤は、バンド活動によって秘められた才能が開花し、男としてミュージシャンとして成長してゆくさまを好演。ラッパー千葉役は桐谷が演じ、正義感の強い真っ直ぐな性質(たち)をのびのびと。冷静で確かなテクニックをもつベーシストの平役は、向井が落ち着いた様子で演じている。BECKのメンバー5人のうち、楽器を弾く水嶋、佐藤、中村、向井の4人全員が楽器演奏は未経験だったそうで、撮影前にそれぞれ特訓したとのこと。桐谷は友人の影響で3年前からフリースタイルのラップをやったり詞を書いたりしていたそうで、劇中に何度も演奏される曲「EVOLUTION」では、勢いのあるラップを堂々披露。映画の公式HPにアクセスすると、「EVOLUTION」の演奏がまるまる1曲最後まで聴けるから楽しい。また、竜介の妹でコユキと心を通わせる辛口の少女・真帆役を忽那が、コユキにギターを伝授する斎藤役をカンニング竹山が演じてイイ味を醸し、BECKを敵視する敏腕音楽プロデューサー蘭役は中村獅堂が、日本最大のロックフェスティバルを主宰する女性プロデューサー佐藤役を松下由樹が演じるなど、脇もぬかりなく各キャラに合う俳優が演じている。


 コミック『BECK』全34巻は、1999年〜2008年まで『月刊少年マガジン』で連載され、第26回講談社漫画賞にて少年部門を受賞したヒット作。今回は原作の1〜10巻までを映画化し、脚本は’06年の映画『デスノート』前後編の大石哲也が担当。堤監督は原作者のハロルド作石と意見交換をしながら進め、“一緒に制作した感覚”だったとのこと。検討を重ねに重ねて映画オリジナルのエピソードも加え、原作を知っている人にも知らない人にも楽しめるようにアレンジしたのだそう。10巻分の物語を2時間半弱にまとめたため駆け足の面も多少はあるものの、トータルでとても巧みに面白くまとめられ、切れ味のよい堤監督の手腕がいかんなく発揮されている。作石氏もまた、映画の仕上がりに満足しているようだ。
水嶋ヒロ
 一番の見どころは、クライマックスの野外コンサートのシーン。この場面は実際にフジロックフェスティバルの協力を得て、コンサートが行われた苗場のステージを開催後の2日間借り、1500人のエキストラが参加して撮影。フジロックの舞台監督、照明や音響などの技術スタッフらがフェス後に残り、好意で映画の撮影に参加してくれたという粋なエピソードも。また映画の制作プロデュースサイドに若い世代が多かったようで、プロダクション・ノートにある熱心な撮影レポートからは、BECKのバンド活動さながら、不慣れな若いスタッフも一丸となって取り組む制作現場がありありと浮かび、「いいもんだな」と心に響いた。


 オープニングナンバーはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのヘヴィでファンキーな「Around The World」、エンディングは今年6月に最後のアルバムとしてベスト盤を発表したオアシスの、切ないメロディが広がってゆく名曲「Don’t Look Back In Anger」と、海外の大物アーティストの名曲をセレクトしたWテーマ曲も話題の本作。堤監督は製作発表の記者会見で、こう語っていた。「たくさんある、この映画の見どころのひとつには、“世代を超えて楽しんでもらえる”ということがあると思います。音楽を前にして10代も50代もありません。私も中学の頃からロック漬けで今まできて、こうやって音楽をテーマにした映画を撮り、この場所にこうしていられるということが、本当に奇跡だと思っています」。音楽が人を変え、人々を結び付け、小さなケミストリーがつながって引き起こされる、あざやかな奇跡。友情や恋を描くさわやかな青春ストーリーに感動するも良し、音楽ファンやバンド経験者はノスタルジアに浸ってリフレッシュするも良し。男女問わず幅広い世代の人々がみんな一緒に楽しめる、良質なエンターテインメント作品である。
『BECK』
2010年 日本映画
データ
2010年8月更新

佐藤健、向井理、水嶋ヒロ、桐谷健太、中村蒼

2010年9月4日公開
丸の内ピカデリーほか
全国ロードショー

■2010年 日本映画
■上映時間2:24
■松竹配給
■原作/ハロルド作石
■監督/堤幸彦
■脚本/大石哲也
■出演/水嶋ヒロ
佐藤健 
桐谷健太
中村蒼
向井理
忽那汐里
カンニング竹山
松下由樹
中村獅堂



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。