十三人の刺客 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
十三人の刺客

© 2010「十三人の刺客」製作委員会
義のため世のため、13人の男たちが結束
非道な次期老中が率いる300人に戦いを挑む
義心vs.権力の壮絶バトルが展開する時代劇



 1963年に公開され人気を博した片岡千恵蔵主演の東映時代劇を、『クローズZERO』の三池崇史監督が東宝作品としてリメイク。出演は役所広司、市村正親、稲垣吾郎、山田孝之、伊勢谷友介、伊原剛志、松方弘樹、松本幸四郎……と、有名どころがズラリ。プロデュースは1983年の映画『戦場のメリークリスマス』のジェレミー・トーマス。残忍な将軍の弟、松平斉韶を討つべく13人の男たちが結集し、命懸けの戦いに身を投じる様を描く。血と泥にまみれた男くさい肉弾戦を見せる、PG12指定(小学生には助言・指導が必要)の大がかりな時代劇である。


 江戸時代末期。将軍の弟である明石藩主の松平斉韶は残虐な気質で、気まぐれに暴行や殺害を繰り返していた。あまりの所業に、このまま斉韶が老中に就任して国政が脅かされることを案じた老中の土井は、斉韶の暗殺を決断。その命を極秘裏に受けた御目付役の島田新左衛門は、御徒目付組頭の倉永や浪人の平山、自らの甥の新六郎らに声をかけ、腕利きの男たちを集めてゆく。一方、斉韶の腹心の鬼頭半兵衛はその動きを察知し、警戒を強めていった。


 陰謀と策略が渦巻く、義心vs.権力の戦い。女性は数えるほどのシーンにしか登場しない、男臭い侍ドラマである。メッセージ性があるかどうかというよりも、ハラハラドキドキの娯楽性、おばけ屋敷のようにびっくりさせる感覚が重視されているよう。ある女性が斉韶にされた仕打ちの表現などは、女性として非常にストレスを感じる内容だが、人々の強い義憤を引き出すきっかけのひとつということなのだろうか。物語の要素としては、藤沢周平の短編を映画化して今年7月に公開された東映作品『必死剣 鳥刺し』に通じるところも。
松方弘樹、山田孝之、伊原剛志、役所広司
 刺客13人をまとめる島田新左衛門役は、役所広司が好演。男たちに慕われるリーダーとして、質実剛健な役どころが似合っている。冷酷非道な暴君、斉韶役は稲垣吾郎が浮世離れした様子で演じ、刺客のメンバーとしては新左衛門の甥の新六郎役に山田孝之、御小人目付組頭の三橋役に沢村一樹、御徒目付組頭の倉永役に松方弘樹、浪人の平山役に伊原剛志、浪人の佐原役に古田新太、加えて彼らの配下の侍役として高岡蒼甫、六角精児、石垣佑磨、波岡一喜、近藤公園、窪田正孝、そして山に暮らす野人の木賀役に伊勢谷友介を布陣。斉韶率いる明石藩は、御用人の鬼頭役に市村正親、江戸家老の間宮役に内野聖陽、近習頭の淺川役に光石 研、近習の出口役に阿部進之介。また老中の土井役に平 幹二朗、尾張藩の牧野靭負役に松本幸四郎、落合宿の三州屋役に岸部一徳、と大御所やベテランが名を連ね、スキのない配役となっている。


 最大の見どころはやはりラスト(というか後半)50分かけて映す、刺客13人と斉韶勢300名が対決する落合宿の大乱闘シーン。47年前の前作より、敵役の人数も格闘シーンの長さもスケールアップ。動く防塞、空中の回廊、火を背負った牛……などなど、そこかしこに仕掛けを施してからくり場に変貌した宿場町を舞台に死闘が展開する。宿場町のセットは東京ドーム約20個分の広さを有するそうで、木組みで作られた回廊風の渡り橋や防塞の詳細は、公式HPの“OCHIAIJUKU”のコーナーで映像とともに解説されている。


 撮影は、400年前に建てられ国宝を有する妙心寺の大庫裏をはじめ、世界文化遺産として知られる仁和寺、そして本願寺、二尊院、二条城など歴史的価値のある京都の名所にて。スタッフは慎重に慎重を重ねて準備をしたそうで、伝統的建築物の佇まいが物語の背景に厚みを与えている。また江戸時代の照明を意識したのか、夜のシーンが多い前半では、行灯やろうそくなど灯火具のゆらめきやちらつきが不穏な雰囲気をたたえて画面に映し出されている。
十三人の刺客
 つい先ごろ開催された第67回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に正式出品された本作。ヴェネチア映画祭には三池監督、役所、山田の3名が出席し、記者会見や上映後の拍手を浴びる姿が報道された。審査委員長をつとめたクエンティン・タランティーノは、’07年の三池監督の映画『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』に俳優として出演したこともあり、三池監督と付き合いがあるとのこと。この映画祭では本作のほかに’04年の映画『ゼブラーマン』と’10年の『ゼブラーマン‐ゼブラシティの逆襲‐』、3本の三池作品が上映されて注目度が高かったものの、受賞は逃した。監督は“いつかリベンジを”とコメントしている。


 この秋冬は人気俳優たちが出演している時代劇が続々と公開。このコーナーでもどんどん掲載していくので、ぜひご注目を。
『十三人の刺客』
2010年 日本映画
データ
2010年9月更新

山田孝之、伊原剛志、石垣佑磨、役所広司、高岡蒼甫、窪田正孝、古田新太、六角精児
2010年9月25日公開
全国東宝系にて
全国ロードショー

■2010年 日本映画
■上映時間2:21
■東宝配給 
■原作/池宮彰一郎
■監督/三池崇史
■脚本/天願大介
■出演/役所広司
稲垣吾郎
市村正親
山田孝之
伊勢谷友介
沢村一樹
古田新太
高岡蒼甫
六角精児
波岡一喜
近藤公園
石垣佑磨
窪田正孝
伊原剛志
松方弘樹
吹石一恵
谷村美月
斎藤 工
阿部進之介
内野聖陽
光石 研
岸部一徳
平 幹二朗
松本幸四郎



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。