新宿スワン 試写会日記 毎週、あつた美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
新宿スワン

© 2015 映画『新宿スワン』製作委員会

園子温監督が充実の俳優陣で人気コミックを映画化

男たちの激しい抗争と夜に生きる女たちの行き着く先は?

新宿歌舞伎町を舞台に激しいバトルとダークなドラマを描く

『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』の園子温監督が和久井健の同名の人気コミックを実写映画化。出演は2014年の映画『そこのみにて光輝く』の綾野剛、’13年の映画『凶悪』の山田孝之、現在放送中のドラマ『ようこそ、わが家へ』の沢尻エリカ、’14年の映画『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』の伊勢谷友介ほか。プロデューサーは『クローズZERO』シリーズ、『ルパン三世』などの山本又一朗、脚本は放送作家として活躍し『ハンサム★スーツ』『ONE PIECE FILM Z』など映画脚本も手がける鈴木おさむ。
 アジア最大級の歓楽街・新宿歌舞伎町を舞台に、男たちの激しい抗争と夜に生きる女たちの人間模様を描く。男臭い劇画風バトルアクションの世界に、女性たちの存在もくっきりと織り交ぜ、充実の俳優陣で惹きつける作品である。

 親にもツキにも見放され金もない、どん底の白鳥龍彦は、新宿歌舞伎町をあてもなくだらだら歩く。からんできた男たちに袋叩きにされそうになったとき、ベテランのスカウトマンである真虎に救われ、龍彦は女たちに夜の仕事を斡旋する“スカウト”をやることに。真虎が所属するスカウト会社バーストで働き始めた龍彦は、その実情に衝撃を受け迷い悩みながらもスカウトマンとして慣れてゆく。そしてある日、純真さと影をあわせもつ風俗嬢アゲハと出会う。

 性、薬物、暴力の過激な描写、歌舞伎町での撮影は困難と考えられていたことから「映画化は不可能」とも言われていたコミックを映像化。そもそもの映画化の始まりについて、プロデューサーの山本又一朗はこのように語っている。「原作が非常に面白かったし、新宿は青春時代を過ごした思い入れのある街なので、ぜひ映画にしてみたかった」
 当初は主役の白鳥龍彦を誰が演じるかで意見が分かれ、企画が難航していたとのこと。が、ある日、山本氏が原作者の和久井氏やヤングマガジンの編集者と打ち合わせを兼ねた食事会を行っている時に、たまたま綾野剛から連絡が入り同席することに。やってきた綾野を見た和久井氏は「龍彦が居るじゃないですか」と言い、この一言から映画化が一気に動き始めたそうだ。できすぎの話ながら、勢いやタイミングの妙を伝える魅力的なエピソードだ。 
 原作は’05年〜’13年に講談社のコミック雑誌『ヤングマガジン』で連載され、単行本全38巻の人気コミック。今回の映画では1巻〜4巻の通称“秀吉編”がベースとなっているそうだ。

綾野剛

白鳥龍彦役は綾野剛が思いのほか骨太な雰囲気で。整った顔をそう見せないためか全編で変顔をほぼずっとしていて、あえての雑な顔つきとアホっぽく憎めない表情をくるくると繰り出し、ダミ声でカラッと話すなど、いかにも男性コミックのチンピラキャラといったイメージをよくつかんでいて面白い。また裏社会のやるせなさに真っ向からぶち当たる、龍彦の素朴で一本気な思いの切なさもわかりやすく表現している。龍彦と敵対する野心的なスカウトマンの南秀吉役は山田孝之が陰険にねっちりと、龍彦を「王子様」と呼ぶ風俗嬢のアゲハ役は沢尻エリカが純粋さとどうしようもない弱さを、スカウト会社バーストに龍彦を引き入れ面倒をみる真虎役は伊勢谷友介が冷静沈着な兄貴分として、バーストの社長役は豊原功補が、同社の幹部にして武闘派の関役は深水元基が、バースト幹部で本部長の時政役は村上淳が、龍彦の同期・洋介役は久保田悠来が、バーストの元締めである暴力団・紋舞会の天野会長役は吉田鋼太郎が、高級クラブの涼子ママ役は山田優が、バーストの敵対組織ハーレムのナンバー2である葉山役は金子ノブアキが、ハーレムの社長役は安田顕が演じている。

この映画は女性からすると、全編を心から気分よく観ることができるかというと微妙な面もあるものの、裏社会の抗争を描くバトルアクション作品のなかでは、女性にも受け入れやすい工夫がなされている。キャストは男女ともに人気の高い俳優陣が配され、女性もグラビア系のタレント中心ではなく主要人物には個性の立つ女優たちを起用し、男性の添え物として女性を描くのではなく、女性たちの見せ場やキャラクターとしての存在感をくっきりと際立たせているところが特徴だ。また女性側の主義・主張をはっきりと伝える、高級クラブの涼子ママというキャラクターがいて、一方的で理不尽な男性に対し面と向かってきっぱりと啖呵を切る台詞やシーンがあるのはわかりやすい。

沢尻エリカ,綾野剛

撮影は歌舞伎町に実際にある雑居ビルに作りこまれたセットをはじめ、静岡県浜松市の市街地では街全体を使った大規模な長期ロケーションが行われたとのこと。特に印象的な場所は「ミラノ座」として知られる映画館やボウリング場などがあり、2014年12月31 日に閉館された新宿の複合ビル「TOKYU MILANOビル」だ。映画の劇中に何度か登場する、建物の外壁に沿って6階まで続く鉄骨の外階段について園監督は、「これだけのものを使わない手はない。まるで香港ノワール(香港製犯罪映画)に出てきそうな画(え)になる場所」とコメントしている。
 ちなみにバーストとハーレムのスカウトマンたちが集会を行うシーンの場所は、「新宿TOKYU MILANOビル」の屋根の上。初めて映画撮影に使用されたというこの場所は、広がる視界と囲いのない危うさが、男たちの「天下をとる!」という無謀な野心のきわどさによく合い、シーンを盛り上げている。

 これまではすべての作品で自ら脚本を書いてきた園監督が、初めて自分で脚本を書かずにエンターテインメント大作として手がけたという本作。園監督は本作について、「今までの自分を全部捨て去って、新人、新しい監督となって挑んだ」とコメント。本作では、インディーズでもメジャーでも自身の持ち味をバランスよく打ち出すことのできる園監督の手腕が感じられる。山本プロデューサーは、「園監督とは彼がデビューして間もない頃から、いつか一緒に作ろうと話していたので、予定のタッグとなった」と語り、この映画のテーマについてこのようにコメントしている。「この物語を彩るにふさわしい人たちに出てもらえて、最近にない面白いアクションとドラマの映画になりました。青春時代の成長過程にある悩める青年たちに、明日へのエネルギーと、何にも負けないやる気を提供したいと思います」

※現在、5月7日よりdTVにて映画を6話に分けて順次配信中

『新宿スワン』
2015年 日本映画

データ

2015年5月29日更新

山田孝之
オフィシャルサイト
『新宿スワン』

2015年5月30日公開
TOHOシネマズ新宿ほかにて全国ロードショー


■2015年 日本映画
■上映時間 2:19
■ソニーピクチャーズエンターテイメント配給
■監督/園子温
■原作/和久井健
■出演/綾野剛
山田孝之
沢尻エリカ
伊勢谷友介
金子ノブアキ
山田優
豊原功補
吉田鋼太郎




プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。