ジュラシック・ワールド 試写会日記 毎週、あつた美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
ジュラシック・ワールド

Photo Chuck Zlotnick / Universal Pictures and Amblin Entertainment

ただのVFXパニックではなくドラマ性をしっかりと。
家族の絆や大人の恋、生命に干渉する危うさを

スピルバーグ絶賛の新人監督コリン・トレボロウが打ち出す

旧シリーズの復活でしょ、とあなどれじ。スティーヴン・スピルバーグの抜擢による新人コリン・トレボロウの監督・脚本により“ジュラシック”シリーズが画期的に復活! 出演は映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のクリス・プラット、女優で映画の監督・製作者としても活躍している『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』のブライス・ダラス・ハワード、『メン・イン・ブラック』などのベテラン俳優ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカのTVシリーズ『メル&ジョー 好きなのはあなたでしょ?』のニック・ロビンソン、『アイアンマン3』ほか子役として人気のタイ・シンプキンス、『最強のふたり』『X-MEN:フューチャー&パスト』のフランス人俳優オマール・シー、舞台俳優として受賞歴多数である『ジュラシック・パーク』のB・D・ウォン、インドを代表する俳優のひとり、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』『めぐり逢わせのお弁当』のイルファン・カーンほか実力派が名を連ねる。
 世界的な人気を誇る、生きている恐竜たちの一大テーマパーク「ジュラシック・ワールド」とは? ただのVFXパニック映画にはせず、兄弟の絆、男女のパートナーシップ、ビジネス優先による生命への干渉の危うさ、生き物を尊重し心を通わせることの大切さなど、リアルなテーマを明解に打ち出す。ハラハラドキドキの芯にドラマ性という軸を築き、デートにファミリーに幅広い層がシンプルに楽しめる娯楽大作である。

 コスタリカ沖の島に建設された、生きている恐竜たちの一大テーマパーク「ジュラシック・ワールド」。子どもたちはふれあいコーナーでおとなしいトリケラトプスの赤ちゃんに乗り、水中ショーの会場では巨大で獰猛なモササウルスのエサやりショーの見物など、安全な環境の中で世界各国の家族連れがさまざまな種類の恐竜たちが歩き回る姿を見て感激している。そんななか、パーク内の監督責任者であるクレアのもとへ16歳の兄ザックと11歳の弟グレイ、2人の甥っ子がやってくる。クレアは最初に挨拶すると、すぐに2人をアシスタントに預けて仕事へ。兄弟がその退屈な案内人から逃げだして2人でパーク内を自由に回っていると、緊急避難放送が……。

 子どもたちと恐竜がひたすら走り回る、というだけじゃなく、大人も予想以上に楽しめる本作。このストーリーには、生き物と生命倫理にまつわる社会的なテーマ、ビジネスと科学と創造、同僚とのやりとりや恋愛・パートナーシップといった大人向けのテーマ、家族や兄弟との関係、未知の生き物であるたくさんの恐竜たちという子どもたちを含むファミリー向けのテーマなど、誰もがどこかに共感できるように、たくさんのフックが用意されている。派手なアクションや個性的なアトラクションがあるのはもちろん、ドラマ性も楽しめる仕上がりだ。
 トレボロウ監督は語る。「登場人物がただ恐竜から逃げ回って叫んでいるようなものは必要ない。1作目ですでにやっているし、しかもうまく描かれていたからね。観客やスティーヴンが望んでいるのは、素晴らしい基本コンセプトを保ちつつそれを新しい次元にもっていくこと、そして観客に懐かしさを感じさせながら更に世界観を広げていくことだと思う」

今回の企画は、「続編は?」という声を受けてスピルバーグが動き出し、信頼する製作陣とともに方向性を話し合い、「シリーズが受け継いできた精神と財産に敬意を表すと同時に、創造性をさらに高めることのできる」監督を探し続け、新人のトレボロウ監督を見出したとのこと。
 スピルバーグは、トレボロウが監督・製作を手がけた初の長編映画でありサンダンス映画祭で高く評価された『彼女はパートタイムトラベラー』(2012年製作・日本未公開)を観て、「彼だ」と思ったそう。スピルバーグは語る。「彼は製作者としても映画ファンとしても本当に熱心で、しかもストーリーを語ることができるんだ」
 子どもの頃に“ジュラシック”シリーズを観てファンだったというトレボロウ監督は、「スティーヴンも僕も自分たちの作品にすごく熱意を持っているし、世代の違う2人の人間が同じもの(“ジュラシック”シリーズ)に対してオタクモードに入れるなんて最高だった」とコメント。また新人である自分がベテラン勢の製作する超大作に参加したことで、たくさんのことを学んだ、と喜びとともに語っている。「撮影中、自分が生徒のような気がしてならなかった。スティーヴンの作品に敬意を表した映画を作る自信はあったけれど、それでも映画製作と『ジュラシック・パーク』について無料の特別レッスンを受けたようなものだったよ」

ニック・ロビンソン,タイ・シンプキンス

Photo ILM / Universal Pictures and Amblin Entertainment

もと軍人で「ジュラシック・ワールド」の恐竜行動学の研究施設に勤務し、恐竜の調教を担当しているオーウェン役はプラットが好演。激しいアクションをこなしたプラットは笑いながら、「実は、僕は役者の体を借りたスタントマンなんだ」と冗談交じりにコメント。キレのあるアクションにユーモアがあり、さわやかでカッコよくチャーミング、とこれからますます人気となりそうだ。パーク内の監督責任者クレアとは正反対のタイプで、2人は以前に一度デートしたことがあるもののそれっきり、というのもありがちで可笑しい。仕事人間の生真面目なクレア役はダラス・ハワードがくっきりと。深刻なトラブルに直面し、オーウェンと行動をともにするなかでどんどん変化してゆくさまを生き生きと表現している。
 パーク内を歩きながらスマホ画面をひたすら観ている16歳の兄ザック役はロビンソンが思春期の少年らしく不機嫌に、11歳の弟グレイ役はシンプキンスが、両親の不仲に不安を抱きながらも恐竜パークに興奮する純真さを愛らしく演じている。億万長者でインド系の企業家マスラニ役はカーンが堂々と、過去の『ジュラシック』シリーズから唯一継続して登場しているキャラクターである遺伝学者ウー博士役はウォンが淡々と、オーウェンの所属するチームの主任調教師で恐竜行動学研究のパートナー、バリー役はシーが信頼できるバディとして、恐竜をセキュリティや軍事に利用しようと目論むインジェン社のホスキンス役はドノフリオが身勝手に、それぞれのキャラクターを演じている。
 インド人は富豪で開発優先主義、中国系は資本があれば倫理的に際どいこともやる、という描き方にチクリと刺す意図を感じなくもないものの、国際色豊かなメンバーの共演は素直に楽しめる。
 個人的に楽しかったのは、トレボロウ監督の友人である俳優ジェイク・ジョンソンが演じるテクニカル・エンジニアのロウリー。恐竜オタクで自身のデスクに恐竜フィギュアを並べ、ヨレヨレの“ジュラシック・パーク”Tシャツを着ている彼は、ドラマ面にユーモアや陽気さ、人間味のぬくもりをいい感じに加えている。

恐竜については、著名な古生物学者でありモンタナ州立大学教授、そしてロッキー博物館古生物学部門の責任者であるジャック・ホーナーの協力を得たとのこと。ホーナーは現在、恐竜の遺伝物質に鶏のDNAを配合するという映画の世界さながらに遺伝子工学技術を研究しているそうで、原作者の故マイケル・クライトンも『ジュラシック・パーク』を執筆した時、小説に登場させる恐竜を古生物学的な観点から確かめるためにホーナーの学術書『Digging Dinosaurs』を参照したとも。本作でもホーナーは、作品のスリルを損なわずに科学的妥当性を追求することの重要性を理解し、スタッフと恐竜についてよく話し合い、彼の専門知識が内容に生かされているそうだ。
 VFXやCGが発達してきた近ごろは、アニマトロニクス(生物を模したロボットを使って撮影するSFXの技術)を使うことがだいぶ減ってきているものの、本作ではトレボロウ監督の強いこだわりによりアニマトロニクスの恐竜が撮影に取り入れられたそう。スタッフもキャストも実際にみたときに感動したという素晴らしい出来であるアニマトロニクスの恐竜の姿は、緑の渓谷でクレアとオーウェンが横たわるアパトサウルスを見つめるシーンなどでみることができる。トレボロウ監督は語る。「実際に触れて呼吸を感じることができるものを作りたかった。それは非常に貴重なことだし、『ジュラシック・パーク』はアニマトロニクスなしでは完成しなかったはずだよ」
 またオーウェンが調教している賢くて獰猛な恐竜ヴェロキラプトルのブルー、チャーリー、デルタ、エコーの動きは、モーションキャプチャを使っているとのこと(人間や生き物、物体の実際の動きをデジタルで記録し、CGやアニメのキャラクターにリアルな動きを取り入れる技術)。トレボロウ監督はラプトルについて、「人が演じることによってよりリアルに、実際いるかのように感じさせ、観客が感情移入しやすいキャラクターになった」とコメントしている。

余談ながら、ウー博士による新種の恐竜インドミナス・レックスは「凶暴で真っ白でスッとしたフォルムの雌」で。全身白のファッションでキャリア命のアイアン・ウーマンというクレアの最初のイメージと重なり、「おっかない女性=恐竜」というちょっとした皮肉だとしても面白味があるな、と個人的にユーモアを感じたりも。

ブライス・ダラス・ハワード,クリス・プラット,ニック・ロビンソン,タイ・シンプキンス

Photo Universal Pictures and Amblin Entertainment

共同で脚本を担当した1人であるデレク・コノリーはトレボロウ監督とともに、「なぜ新作を製作するのか? ストーリーとキャラクターは新作を作るのに値するものなのか?」と自問しながら内容を練り上げていったとのこと。「人間を描き、しっかりと物語を語れば恐竜たちも生き生きと描くことができる」という監督の信念と、コノリーの「『ジュラシック・パーク』のマジックはキャラクターの口調や一連のユーモア、ホラーと科学の要素にある」という思いが相まって、いいケミストリーとなったようだ。 監督は2015年7月13日の来日記者会見にて、本作についてこのように語っている。「僕の挑戦はただ、『ジュラシック・パーク』を模倣するのではなく、新しいことをする、現代の若者たちへ贈る作品を作ることだった。そして達成することができました」

2015年6月12日の全米公開から(一部地域で6月10日より公開)、本国アメリカで大ヒットとなっているという本作。7月5日には全米累計興行収入が5億5千万ドル超となり、『ダークナイト』を抜いて歴代4位にランクイン。日本でも夏休みのデートやファミリーのおでかけに人気の映画となりそうだ。新生“ジュラシック”シリーズ3部作の始まりとなるか。今後の展開も楽しみだ。

----------------------------------------------------- 今回の“旧ヒット作のシリーズ”“ハリウッドの代表的なVFX作品”“SFフィクション大作”というキーワードから、追記をすこし。特定のVFX映画に対する悪評が動画サイトで流れたことをきっかけに、そうしたVFXやCGを駆使する映画について喧々諤々の議論になっているのをふと思い出して。そもそも映画ファンの中でもそうした作品を好む観客は、断ずるためではなく楽しむために観る人たちが多いのでは、と(筆者もそのひとり)。
 長年のシリーズなら好不調の波があるのもわかっているし、原作を読んだりシリーズ作品を観たり、スタッフやキャストの取り組みなど製作の背景にまつわることも含め、愛情をもって全体をふんわりと眺めている面もあるというか。映画は作品そのものに加えて、関連のことや観る側の想像力や妄想力(?)などが渾然一体となり、受け取る人それぞれで価値や魅力が大きく変わるもので。そこが面白いところなのでは、と改めて。傑作でもB級でも大作でも小品でも、規模も種類もさまざまな作品があってほしいし、だからこそ多様性を楽しめるのではないかな、と筆者は思う。

『ジュラシック・ワールド』
2015年 アメリカ映画

データ

2015年7月17日更新

ニック・ロビンソン,タイ・シンプキンス

Photo Chuck Zlotnick / Universal Pictures and Amblin Entertainment

オフィシャルサイト
『ジュラシック・ワールド』

2015年8月5日より全国ロードショー


■2015年 アメリカ映画
■上映時間 2:05
■東宝東和配給
■原題/『Jurassic World』
■監督・脚本/コリン・トレボロウ
■製作総指揮/スティーヴン・スピルバーグ
トーマス・タル
■製作/フランク・マーシャル
パトリック・クローリー
■脚本/リック・ジャッファ
アマンダ・シルヴァー
デレク・コノリー
■キャラクター原案/マイケル・クライトン
■出演/クリス・プラット
ブライス・ダラス・ハワード
ヴィンセント・ドノフリオ
タイ・シンプキンス
ニック・ロビンソン
オマール・シー
B・D・ウォン
イルファン・カーン




プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。