日本のいちばん長い日 試写会日記 毎週、あつた美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
日本のいちばん長い日

©2015「日本のいちばん長い日」製作委員会

1945年8月15日、ポツダム宣言受諾が確定するまで
日本軍が降伏に至った経緯、クーデター未遂事件
当時の現場の思いと出来事を今に伝える人間ドラマ

終戦と和平への道筋を定めてゆく昭和天皇と日本政府、和平派と決戦派との激しい対立となる日本軍。1945年8月15日、ポツダム宣言を受諾し日本軍の無条件降伏が確定するまで、実際に起きた出来事を記す半藤一利のノンフィクション作品『決定版 日本のいちばん長い日』をもとに映画化。出演は役所広司、本木雅弘、松坂桃李、堤真一、山ア努、神野三鈴、蓮佛美沙子ほか。監督・脚本は、映画『突入せよ!「あさま山荘」事件』『わが母の記』の原田眞人が手がける。
 太平洋戦争末期の1945年7月、米・英・中の連合国が日本にポツダム宣言受諾を要求。日本では降伏か本土決戦かの議論が紛糾、結論が出ないなか、広島と長崎に原爆が投下され……。日本が降伏へ至るまでに二転三転した経緯と、終戦前夜に起きたクーデター未遂事件について。終戦から70年となる2015年、当時の思いと出来事を今に伝える人間ドラマである。

戦況が日々悪化する太平洋戦争末期の1945年4月、昭和天皇の思いを受け、77歳の鈴木貫太郎首相率いる内閣が発足。同年7月27日、米・英・中の連合国が日本にポツダム宣言の受諾を迫る。降伏か本土決戦か。連日連夜の閣議は紛糾し結論が出ないなか、アメリカは8月6日に広島、8月9日に長崎へ原爆を投下。8月14日に御前会議が開かれ、閣僚たちは天皇の聖断※(1)を仰ぎ、降伏を決定する。が、終戦に断固反対、徹底抗戦を主張する畑中健二少佐ら青年将校たちはクーデターを計画。昭和天皇が肉声で日本の降伏を国民に伝える「玉音放送」を阻止すべく、宮城※(2)やラジオ局への占拠へと動き始める。

※(1) 聖断(せいだん) 天皇が自ら下す決断のこと。
※(2)宮城(きゅうじょう) 天皇の宮殿の意。終戦後にこの呼び名は廃止され、現在の「皇居」に。

特定の人物や出来事への批判ではなく、当時の混沌とした状況を伝え、現場にいた人間たちの苦悩や決断といった心情に寄り添う作品。  天皇、政府、軍部、国民、厳しい戦況のなかで追い詰められ、刻々と変化してゆく現場の状況、それぞれの思いとは。誰もが容易に入り込めるテーマではないだろうものの、実力派で親しみやすい俳優たちと丁寧に作り込まれた製作により、戦後生まれの人間にとっても比較的観やすい内容となっている。

日本のいちばん長い日

陸軍大臣に任命される阿南惟幾役は、役所広司があたたかみと厳しさの両面をもつ人物として。政府の和平派と軍部の決戦派の板挟みで苦悩しながらも、潔く壮絶な生き様を演じている。昭和天皇役は7年ぶりの本格的なスクリーン復帰となる本木雅弘が静かにきっぱりと。昭和天皇の思いを受けて第42代内閣総理大臣に就任した鈴木貫太郎役は、山ア努が粘り強い姿勢と一貫した意志とともに終戦に尽力する姿を演じている。
 鈴木首相の妻・たか役は宮本裕子、内閣書記官長の迫水久常役は堤真一、徹底抗戦を掲げて同志を巻き込み決起する陸軍の畑中健二少佐役は松坂桃李、阿南陸軍大臣の妻・綾子役は舞台から映画やテレビなどに活躍の場を広げている神野三鈴、阿南大臣の次女喜美子役は蓮佛美沙子、その婚約者役は渡辺大、陸軍大臣官邸の女中・絹子役はキムラ緑子、宮中の侍従長役は麿赤兒、侍従役は姉川新之輔、茂山茂、大藏基誠、植本潤、中村靖日がそれぞれに演じている。
 またほんの1シーンの特別出演として、書記官長の迫水がいる建物に踏み込もうとする横浜警備隊長の佐々木役で松山ケンイチ、畑中少佐に自分たちの声明をラジオで流せと録音スタジオに押し入られる、NHK放送局員役で戸田恵梨香が出演している。

原田監督は出演俳優たちと本作の製作について、このように語っている。「昭和天皇と阿南陸相、それから鈴木貫太郎首相、この3人のドラマを、家族のドラマとして描くという狙いでキャストの皆さんに出演をお願いしました。本当に素晴らしいキャスト、素晴らしいスタッフに恵まれ、とても素晴らしい作品になり、自分の中ではひとつの記念碑的な作品になったと思います」

日本のいちばん長い日

原作者の半藤一利氏は昭和史研究の第一人者であり、主に近現代史に関する著作でよく知られている人物。東京大学文学部卒業後、文藝春秋に入社し、『週刊文春』『文藝春秋』の編集長、同社の専務取締役、顧問などを経て作家となり、数々の著書を執筆している。1993年の『漱石先生ぞな、もし』で第12回新田次郎文学賞、’98年の『ノモンハンの夏』で第7回山本七平賞、2006年の『昭和史 1926-1945』『昭和史 戦後篇 1945-1989』で、第60回毎日出版文化賞特別賞を受賞した。
 半藤氏は『決定版 日本のいちばん長い日』の執筆について、このようにコメントしている。「戦争ははじめることはある意味で簡単であるが、終えることは本当に難しい。国際情勢が複雑にからむからである。昭和二十年八月、三百十万人もの人が死んだあとで、大日本帝国はその困難を何とか克服して戦いを終えることができた。この“事実”の重みがわかったがゆえ、多くの日本人にそのことを知って貰いたいばかりに、私はこの本を書いた。そしていまの【戦争をしない国】の原点がその事実の上にあることをあらためて痛感している」

1965年の著書『日本のいちばん長い日』は、’67年に岡本喜八監督によって同名で映画化されたことも知られていて(原作者の半藤氏は当時、文藝春秋新社の社員であったため大宅壮一編集として発表された)。昭和天皇が家族とともにこの映画を公開年の‘67年12月29日に鑑賞したことが、2014年9月に宮内庁から発表された『昭和天皇実録』に記されているそうだ。
 今回の映画の原作は半藤氏の名義である’95年の『決定版 日本のいちばん長い日』であり、原田監督は脚本執筆にあたり、’85年に出版された半藤氏の著書『聖断―昭和天皇と鈴木貫太郎』、’80年の角田房子氏の著書『一死、大罪を謝す―陸軍大臣阿南惟幾』、そして前述の『昭和天皇実録』を取り入れたとのこと。原田監督は半藤氏の著作について、このように話している。「戦後70年ということで戦争の記憶がどんどん失われていき、体験者が亡くなっていっています。それを受け継ぐためにも、半藤先生の原作は重要です」

 宮城(皇居)、首相官邸、陸軍省の建物、軍服や兵器の細部まで再現し、重要文化財である京都府庁旧本館や旧北吸浄水場第一配水池をはじめ、たくさんの由緒ある土地や建物で撮影したという本作。丁寧に作り込んだ本作について、原田監督はこのように語っている。 「この作品のキーワードは阿南陸相が言う『軍をなくして国を残す』(という言葉にあり)、この精神を我々はずっと継承していかなければと思います。ぜひ多くの世代の人に観ていただきたいと思っております」

『日本のいちばん長い日』
2015年 日本映画

データ

2015年8月1日更新

本木雅弘
オフィシャルサイト
『日本のいちばん長い日』

2015年8月8日より丸の内TOEIピカデリーほか全国ロードショー


■2015年 日本映画
■上映時間 2:10
■アスミック・エース、松竹配給
■原題・英題/『THE EMPEROR IN AUGUST』
■脚本・監督/原田眞人
■原作/半藤一利
■出演/役所広司
本木雅弘
松坂桃李
堤真一
山崎努
神野三鈴
蓮佛美沙子
大場泰正
小松和重
中村育二
山路和弘
金内喜久夫
鴨川てんし
久保酎吉
奥田達士
嵐芳三郎
井之上隆志
矢島健一
木場勝己
中嶋しゅう
麿赤兒
戸塚祥太
田中美央
関口晴雄
田島俊弥
茂山茂
植本潤
宮本裕子
戸田恵梨香
キムラ緑子
野間口徹
池坊由紀
松山ケンイチ




プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。