eHills Club 試写会日記

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オンネリとアンネリとひみつのさくせん

2人のちょっと不思議な日常を描く人気シリーズ第3弾
初夏のフィンランドを舞台に、おなじみのメンバーと
少年がある出来事を解決してゆく、かわいらしい物語

オンネリとアンネリとひみつのさくせん© Zodiak Finland Oy 2017. All rights reserved.

本国フィンランドでシリーズ作品がすべて大ヒット、作家マリヤッタ・クレンニエミの児童文学“オンネリとアンネリ”の物語を映画化した第3弾。主要なスタッフとキャストは前2作『オンネリとアンネリのおうち』『オンネリとアンネリのふゆ』と同じメンバーで、サーラ・カンテル監督、主演のアーヴァ・メリカントとリリャ・レフトほか。オンネリとアンネリのおうちの前に、孤児の子どもたちのための場所“子供の家”が完成。厳格なルールで支配する所長のもとから逃げ出した少年は、水辺の山小屋に逃げ込み……。初夏のフィンランドを舞台に、おなじみのキャラクターたちがある出来事をみんなで解決してゆく、かわいらしい物語である。

エイヤ・アフヴォ,リリャ・レフト,アーヴァ・メリカント

オンネリとアンネリのおうちの前に、身寄りのない孤児の子どもたちのための場所“子供の家”が完成。そこは高い柵に囲まれ、黒やグレーを基調にした質素で実用第一主義の、所長ミンナ・ピンナが厳格な独自ルールで支配する自由のないところだった。ある日、そこから逃げ出した少年ペッキをオンネリとアンネリが発見。“子供の家”での窮屈な扱いを聞いた2人は「子どもたちを助けよう」と、ペッキと3人で“救助団”を結成。だんだんとご近所さんのリキネン夫妻やノッポティーナ&プクティーナ姉妹、こびとの一族のプティッチャネン親子らが加わり、ある“ひみつのさくせん”をみんなで決行する。

子役だった2人がだいぶ育って、ティーンの女の子へと見た目が大きく変化している本作。オンネリとアンネリが愛らしい少女だった頃の前2作のイメージを期待すると、印象はすこし違うかもしれない。また“子供の家”のシーンはほとんど装飾のない黒やグレーの部屋で、子どもたちも質素なグレーやブルーのジャージやシャツを着ているため、このシリーズの持ち味である、眺めているだけでハッピーな気分になるようなカラフルなインテリアやファッションの楽しみが約1/3減なのはやや残念だ。ラストのオチもちょっと……というような。とはいっても、同じキャストとスタッフによるシリーズ3作目、というのはどことなく人情としていいものだなとも個人的に思う。

アーヴァ・メリカント,リリャ・レフト

黒髪の女の子オンネリ(アーヴァ・メリカント)と、金髪の女の子アンネリ(リリャ・レフト)は、キュートな初夏のファッションで。大きなサングラスと帽子、ブルーとピンクのカラフルなスウィムウェアに透け感のある大判ショールをはおり、キレイな池でひと泳ぎしたら、手作りパイを食べてティータイム、と冒頭から楽しい雰囲気が伝わってくる。魔法が使える陽気な姉妹ノッポティーナ(エリナ・クニヒティラ)&プクティーナ(キティ・コッコネン)はガーデニングに精を出し、不機嫌にうなる植物の世話を手厚くしている。警察官のリキネン(ヤッコ・サアリルアマ)は、愛妻のウメ・ボーシュ(ヨハンナ・アフ・シュルテン)に支えられながらある決断をして、“子供の家”の所長ミンナ・ピンナは常にグレーや黒の服でむっつりと神経質に、少年ペッキは“子供の家”の体制に革命を起こそうとする反体制派として、それぞれ味わいのあるキャラクターとなっている。またノッポティーナ&プクティーナ姉妹の親戚で、魔法が使えるバラの木夫人(エイヤ・アフヴォ)も最後にちょっとだけ登場している。
 サーラ・カンテル監督は前作『オンネリとアンネリのふゆ』のプロモーションで2018年6月に来日した時、フィンランド人の気質についてこのように語った。「映画のなかの子どもたちはみんなフィンランドの子どもたちそのものです。好奇心が強くて勇敢で友だち思いで。でも、現実には、小さな女の子が自分たちだけでは暮らせません。それに、フィンランドの女性はみんなオンネリたちの近所に住む姉妹のようにカラフルなファッションだとお伝えしたいところですが、実際にはそうではありません。だけど、映画にも出てくるフィンランド人のとても典型的な特徴は、みんな正直なところです。道でお金がたくさん入った封筒を拾ったら、現実でもほとんどのフィンランド人が警察に届けると思います」

シリーズ第3弾の本作では初夏のフィンランドをテーマに、生き生きとしたビジュアルが見どころ。オンネリとアンネリの水色の素敵なおうちは青々としたグリーンに映えて、庭では明るい赤茶の犬ガードがまどろんでいる。ノッポティーナ&プクティーナ姉妹が育てているにぎやかで不思議な庭木たちも、鮮やかでキレイだ。オンネリとアンネリの山小屋のそばでは、池のほとりで焚火をして、クレープを焼きイチゴやラズベリーやオレンジのジャムを添えて、マシュマロを枝にさして焼いて食べて、少年ペッキや警官のリキネンにふるまって。リキネンが庭で奏でるさみしげなオカリナのソロから合奏になり、同じメロディがオルゴールの音色に変化するのも感じがいい。都会的な洗練とはまた異なる、北欧らしいセンスのよさやカラフルな色づかい、心地よさがのんびりと伝わってくるのが観ていて楽しい。

オンネリとアンネリとひみつのさくせん

本作の原作者はフィンランドの作家クレンニエミ・マリヤッタ。1918年に生まれ、1946年に『赤蟻プッケの冒険』で作家デビュー。それから執筆した約30冊の著作のうち5作品が自国フィンランドをはじめ、北欧の児童文学賞を受賞した人物だ。そのほか、200作品もの海外児童文学の翻訳なども手がけている。オンネリとアンネリのシリーズ第1作は1966年に出版された『オンネリとアンネリのおうち』で、実写映画化作品は第1作が2014年、第2作が2015年、そして第3作である本作は2017年に製作された。

第1作から本作までシリーズ3作品に渡って主演したアーヴァ・メリカントとリリャ・レフトは、今回でオンネリとアンネリを演じるのは最後。映画シリーズの最終となる次回の第4弾では、アーヴァ&リリャから役を引き継いだ新しい子ども2人が主役となる。カンテル監督は前述の来日時に、キャスティング交代でのエピソードについて、このように語った。「(第1作の撮影時は7歳だった)2人の少女は今や14歳です。この夏(2018年)、私はシリーズ4本目最終巻の撮影に入るのですが、新作の主役には9歳の新しい少女たちを選びました。でも、前のシーズンの2人も新しい2人に会って、師匠として指導してくれています」
 フィンランドでは興行収入ランキングで初登場2週連続1位、8週連続トップ10入りとなったという本作。日本では今回、第3作であるこの映画は、まずは恵比寿で2週間限定にて公開。理由はなんとなく個人的にわかるものの、評判や観客動員数によっては、延長もしくは別の映画館で上映となるかもしれないし、映画としては2週間の限定公開のみでDVD化となるかもしれない。今後はファンや観客の声次第だろうか。『オンネリとアンネリとひみつのさくせん』、日本での展開は果たしていかに。

2019年4月23日更新

作品データ

公開 5月25日よりYEBISU GARDEN CINEMAにて2週間限定公開
制作年/制作国 2017年 フィンランド
上映時間 1:15
配給 アット エンタテインメント
原題 Onneli, Anneli ja Salaperäinen muukalainen
英題 Jill, Joy and the Mysterious Stranger
監督・脚本 サーラ・カンテル
脚本 サミ・ケスキ=ヴァハラ
原作 マリヤッタ・クレンニエミ
出演 アーヴァ・メリカント
リリャ・レフト
エイヤ・アフヴォ
ヤッコ・サアリルアマ
ヨハンナ・アフ・シュルテン
エリナ・クニヒティラ
キティ・コッコネン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。