One World: Together At Home

WHO(世界保健機関)とGlobal Citizenが
『One World: Together At Home』を開催
ガガ、ノラがいま新作に寄せるメッセージとは

  • 2020/04/20
  • イベント
  • シネマ
One World: Together At Home

前回に引き続き今にお届けする記事として、今回は注目の世界的音楽イベントと、人気アーティストの新作情報とメッセージご紹介。まずはレディー・ガガが開催を表明した、WHO(世界保健機関)と世界規模の課題解決を目指す非営利団体のGlobal Citizenが主催するグローバル・ストリーミング・コンサート『One World: Together At Home』。そして年内に発売予定のガガのアルバム『クロマティカ』、ノラ・ジョーンズが6月12日発売予定のアルバム『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』を本人のコメントとともに。ミュージシャンたちの取り組みとメッセージをお伝えする。

One World: Together At Home

「これは私たちから世界に向けたラブレターです」(レディー・ガガ)
 現地時間2020年4月18日(日本時間4月19日)に実施されたチャリティ・コンサート「One World: Together At Home」。現在は、Amazonにて2020年4月22日11:30まで無料でアーカイヴ配信中(プライム会員でなくてもAmazonアカウントがあれば視聴可能)だ。
 ソーシャルアクション・グループのGlobal Citizenと世界保健機関(WHO)は「One World: Together At Home」の実施を2020年4月6日に発表。このコンサートはスペシャル番組としてWHOのCOVID-19 Solidarity Response Fund(COVID-19連帯対応基金)のサポートを目的に、アメリカから全世界のテレビ局や配信サービスで放送。すべての人々の間で団結し、医療従事者や対応に当たっている大勢の人たちを支援すること、彼らへの敬意と感謝を伝えるプログラムだ。出演はキュレーションを担当するレディー・ガガをはじめ、アラニス・モリセット、ビリー・アイリッシュ、ビリー・ジョー・アームストロング(グリーン・デイ)、バーナ・ボーイ、クリス・マーティン(コールドプレイ)、エディ・ヴェダー(パール・ジャム)、エルトン・ジョン、フィニアス、J・バルヴィン、ジョン・レジェンド、ケイシー・マスグレイヴス、キース・アーバン、リゾ、マルマ、ポール・マッカートニー、スティーヴィー・ワンダーらたくさんのトップ・アーティストたち。またテノール歌手のアンドレア・ボチェッリ、ピアニストのラン・ラン、インドの映画界で活躍するプリヤンカー・チョープラー・ジョナスとシャー・ルク・カーン、『スキャンダル 託された秘密』のアメリカ人女優ケリー・ワシントン、新型コロナウイルスの感染を公表した『マイティ・ソー』の俳優イドリス・エルバと彼の妻サブリナ、元プロサッカー選手でモデルのデヴィッド・ベッカムと彼の妻ヴィクトリア、さらにセサミ・ストリートのキャラクターほか。司会はそれぞれが看板番組をもつ、『ザ・トゥナイト・ショー』のジミー・ファロン、『ジミー・キンメル・ライヴ!』のジミー・キンメル、『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』のスティーヴン・コルベアが務めた。

レディー・ガガはピアノの弾き語りで「Smile」を明るくポジティブに、スティーヴィー・ワンダーがしみじみと「Lean On Me」「Love's In Need Of Love Today」を、ポール・マッカートニーが「Lady Madonna」を歌ったのをはじめ、世界各国のアーティストたちが自宅からコメントとともに名曲や自身のヒット曲などを演奏、ケイト・ウィンスレット、ローレンス・フィッシュボーン、マリオン・コティヤール、ドン・チードルら人気俳優たちのメッセージや、コメディ作品で人気のジャック・ブラックが自宅での体の鍛え方をユーモラスに映す映像なども。そして医療や物流をはじめ現場で対応する人々の姿、設備を製作している現場、食料や生活必需品のシェアといった市井の人々の取り組みなどを映像で次々と伝えていく。

2012年の立ち上げ以来、世界で重要視されている課題について学び、その課題解決に向けて「アクション」して社会変革を追求してきたGlobal Citizenの共同創設者兼CEOであるヒュー・エヴァンズは、このプログラムについて語る。「『One World: Together At Home』は地域医療従事者の英雄的な取り組みを称えて支援し、COVID-19に立ち向かう世界規模の戦いにおける人々の団結と励ましの源となることを目指しています。世界中のライヴ・キャストが音楽やエンターテイメントとそれぞれの影響力を通じて、人々を守るために自分の健康を危険にさらしながらも働いている方々への感謝と賞賛を伝えます」

レディー・ガガ『クロマティカ』
2020年内に発売予定 2,750円(税込) ユニバーサルミュージック

レディー・ガガ『クロマティカ』

そして2020年4月10日の世界同時発売予定が延期となったレディー・ガガの6作目のオリジナル・アルバム『クロマティカ』は、2020年内に改めてリリース予定。約3年ぶりの先行ニュー・シングル「Stupid Love」は2月末に発表して間もなく、世界58の国と地域のiTunesで1位を獲得(2020年3月3日時点)。ガガを筆頭にピンクの衣装をまとったみんなで踊る「Stupid Love」のインパクトあるミュージック・ビデオの映像は、AppleのCMとして日本でも放送され、MV全編をiPhone 11 Proで撮影したことも話題に。ガガはアルバムの発売延期と今の状況について、このようにメッセージを伝えている。「はじめに、みんなが安全であり、自分の身を守っていることを願います。私はみんなのことを思っています。そして、いろいろ考えた結果、残念ながら『クロマティカ』のリリースの延期を決断しました。2020年内の新しいリリース日程は、近日中に公開します。今は、色々なことが起きていて、皆が不安を抱えている時期で、確かにアートは心に喜びと癒しを与えてくれる素晴らしいものだと思うけど、今のこの状況下でアルバムをリリースすることにどうしても抵抗を感じてしまうのです。むしろ、この時間を問題解決に使ったほうがいいと私は思う。医用器具を病院の方々に届けること、公立の学校に通う子どもたちが、給食がなくともきちんとごはんを食べられること、このパンデミックで財政的に厳しくなる方々に金銭的な援助が行き渡ることが、私にとって一番大切なことです。《中略》 私のファンはとても強くて愛情深い、“優しいパンクたち”だって知ってる。だから今、その優しさを広めてほしい。アルバムがリリースされたら、みんなでダンスして、汗をかいて、ハグやキスをして、今までで一番盛大なパーティーにしたい。でもその時が来るまでは、みんな家にいよう!また外に出られるようになったら、絶対に私が楽しくするから。みんなと早く一緒に踊れる日を楽しみにしています!」

ノラ・ジョーンズ『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』
2020年6月12日発売 通常版:2,860円(税込) ユニバーサル ジャズ

ノラ・ジョーンズ『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』

一方、前述のコンサートとは関りがないものの、発売日決定の朗報が届いたので、ノラ・ジョーンズの新作のご紹介も。2020年5月8日に発売予定だったノラの約4年ぶりのオリジナル・フル・アルバム『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』は、6月12日にリリースが確定。前向きなメロディの先行シングル「I'm Alive」は、不安や困難に立ち向かうのに「わたしは生きている」と自らはっきりと自身を認める応援歌とのこと。アルバム全体の詞に“不安”がさまざまに登場することについて、アメリカ在住のノラは語る。「ここ数年、この国、この世界に生きてきて、どこかに“PICK ME UP OFF THE FLOOR(私を引き起こして)”という感覚があるのだと思う。立ち上がり、この混乱から抜け出して、どうにかしたい、という思い。もしこのアルバムに闇の部分があっても、それは迫りくる破滅じゃない。むしろ、人としてつながりを求め、焦がれる気持ちに近いの」
 数曲で共同執筆者を迎えたものの、すべての楽曲の作詞作曲をノラが手がけ、全11曲中9曲のプロデュースもノラ本人が担当。実質的な初のセルフ・プロデュース作品となる。そして日本盤の歌詞の和訳は、前作、前々作に引き続き、小説『乳と卵』の芥川賞作家・川上未映子が手がけている。ボーナス・トラック2曲を含む全13曲は、メランコリーな影のある風合いから、後半に明るい兆しを感じさせる構成で、いつものようにしっとりと聴かせる「Stumble On My Way」「Heaven Above」などでまどろむ感じが筆者は心地よく。今アルバムを発表することについて、そしてこの状況を過ごすみんなへのメッセージをノラは語る。「私はこのような時だからこそ、音楽は大切だと信じています。音楽は確かに私の気分を良くしてくれて、必要な時には、すっきりするほどひどい泣き顔にもしてくれるし、ダンス・パーティーにも連れて行ってくれます。もし、アルバムがリリースされるまでの間、何か新しいものを必要としている人たちがいるなら、一足先に何曲か公開していく予定です。やっぱり私のしていることは音楽で、このどうすることもできないと感じる時間のなかで、みなさんに届けなければいけないもののひとつだと思っています。今後も、みなさんにリクエストしてもらった楽曲を家から配信していきますし、この危機のなかで最もサポートを必要としている人々をいかに支援するかということにも集中していきたいと思っています。愛を込めて、ノラ」

この情勢のなか、最新アルバムの発売を時期未定の延期としたガガと、もとの発売日から約1カ月遅れで発表を決定したノラ。対照的ながら、両者の判断に善し悪しはないと個人的に思う。ご存知の通りアーティストには本人のキャラクターや楽曲のタイプや表現のベクトルがあり、ガガもノラも恋愛や友情といった心情を歌い上げる、ミュージシャンとしてベーシックな表現は核のひとつとしてありつつも、比較的ガガは現代の理不尽や悲しみや苦しみと戦う姿勢、人や社会に訴えかけていく詞、アップテンポのダンスナンバーなどが愛されていて、ノラは他愛ない日常や、ささやかな感情や関係性を、ピアノやギターといったアコースティックな演奏でささやくように語りかけるように歌う、ジャズやカントリー調のサウンドが魅力で、親密さが共感を誘う内省的なイメージがあるから。パワフルに鼓舞するガガ、穏やかに寄り添うノラ、いずれにしても独自の魅力を放つ2人の新作が、しかるべきときに届くのを世界中のファンと共に楽しみにしている。

ところで、「One World: Together At Home」の企画を知った時、個人的に「アフリカ難民救済」を目的に1985年7月13日に行われた20世紀最大のチャリティ・コンサート「Live Aid」をふと思い出した(クイーンの名演奏でも知られる大規模なコンサート)。実際に体感した方々からすればイベントとしての規模が今回とは段違いかもしれないし、仕掛けや仕組みなどがまったく異なるだろうものの、軸となる思いやメッセージがあり、できるだけ早く良い方へ向かうように祈りを込めて、音楽を通じて年齢国籍問わず世界規模で理解とアクションを促す取り組みという面で。そもそも今回の全世界からアーティストが参加したストリーミング・コンサートの企画は、コールドプレイのクリス・マーティンが「Together at home」というメッセージと共に、ピアノの弾き語りで歌う姿を自宅からSNSで公開したことから着想を得たとのこと。現在、SNSでは多数のアーティストたちが、ハッシュタグ「#TogetherAtHome」とともにバーチャル・コンサートを投稿。こうした試みや、たくさんのミュージシャンたちが作品や表現に込める思いが、若い世代をはじめ音楽を愛する大勢の人たちに響き、気持ちや行動に明るさや変化を呼び起こすといいなと心から思う。

One World: Together At Home

公式HP
https://www.globalcitizen.org/en/connect/togetherathome/
※チャーリー・プース、ナイル・ホーラン、ショーン・メンデス、カミラ・カベロ、ジェニファー・ハドソンらが出演した過去のコンサートの詳細も紹介。

※4月19日11:30〜4月22日AM11:30までアーカイヴ配信予定。
※プライム会員の登録なしで、Amazonアカウントをもっていれば視聴可能。

レディー・ガガ『クロマティカ』

2020年内に発売予定
2,750円(税込) ユニバーサルミュージック
https://www.universal-music.co.jp/lady-gaga/

ノラ・ジョーンズ『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』

2020年6月12日発売
通常版:2,860円(税込) ユニバーサル ジャズ
https://norahjones.lnk.to/PickMePR

:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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