eHills Club 試写会日記

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唐人街探偵 東京MISSION

日本の実力派俳優たちが中国の人気シリーズに出演
中国の探偵コンビが日本やタイの探偵と共に難事件に挑む
東京を舞台に描くポップなアクション・エンターテインメント

唐人街探偵 東京MISSION©WANDA MEDIA CO.,LTD. AS ONE PICTURES(BEIJING)CO.,LTD.CHINA FILM CO.,LTD “DETECTIVE CHINATOWN3”

日本の実力派俳優たちが中国の人気アクション・シリーズに出演し、各国でヒットしている話題作。出演は、中国のスター俳優である『罪の手ざわり』のワン・バオチャンと『空海−KU-KAI−美しき王妃の謎』のリウ・ハオラン、シリーズ2作目から参加している『浅田家!』の妻夫木聡、タイのアクション・スターである映画『モンスターハンター』のトニー・ジャー、そして『64-ロクヨン-』の三浦友和、『すばらしき世界』の長澤まさみ、『聖おにいさん』の染谷将太、ドラマ「SUITS/スーツ2」の鈴木保奈美、『モータル・コンバット』の浅野忠信ほか。監督・脚本は『愛しの故郷(ふるさと)』のチェン・スーチェンが手がける。タイやニューヨークで事件を解決してきた中国の探偵コンビ、タン・レンとチン・フォンは、日本の探偵・野田昊から依頼され、密室殺人事件の解決のため東京へやってくる。頭脳派で美青年の甥っ子と莫家拳の使い手でケンカは強いがお調子者の叔父という中国の探偵コンビ、日本人と中国人のダブルであり裕福で切れ者の探偵、元刑事でムエタイ王者であるタイの探偵、4人が難事件に挑む姿をコミカルに描く。事件の謎解きや背景のドラマに加え、コミカルなやりとりも多々、人種や国籍を超えた調和にもサラリと触れる。派手なアクションと明るいノリで引きつける、陽気なアクション・エンターテインメントである。

各国のチャイナタウンで難事件を解決してきた中国人の探偵コンビ、タン・レンとチン・フォンは、日本の探偵・野田昊から殺人事件を解決するために協力を依頼され、東京にやってくる。今回のミッションは、東南アジアのマフィアの会長が殺害された密室殺人事件で、犯人として起訴された日本のヤクザの組長・渡辺勝の冤罪証明だ。タイの探偵で元刑事のジャック・ジャーも参加し解決を試みるなか、殺された会長の秘書・小林杏奈が何者かに誘拐される。事件解決率100%を誇るエリート警視正・田中直己が事件を追い、謎の指名手配犯・村田昭が現れ、状況はどんどんやっかいに。また世界の探偵が愛用するアプリ「CRIMASTER」の事件解決率世界ランキングに載る探偵たちが、難事件のニュースを聞きつけて東京に集結。そのランキング1位で正体不明の「Q」までも登場し混沌とするなか、タン&チン、野田、ジャックの4人はバラバラになり……。

妻夫木聡,リウ・ハオラン,ワン・バオチャン,トニー・ジャー

中国の人気俳優ワン・バオチャンとリウ・ハオランが主演する探偵バディものであり、シリーズ3作目にして初の日本公開となるエンタメ作。ド派手なアクション・シーンが多数、ヤクザありアキバ系のコスプレあり、渋谷スクランブル交差点を舞台にしたシーンありと、海外の人たちが映画やドラマやニュースなどからイメージする現代日本をコミカルに描いている。この物語は世界中のチャイナタウンでワン&リウが演じるコンビが難事件を解決するシリーズ作品で、1作ごとに事件をひとつ解決してゆく構成。シリーズ1作目と2作目は日本未公開で、2015年の『唐人街探案』ではタイのバンコクを舞台に、2018年の『唐人街探案2』ではニューヨークを舞台に描き、今回の3作目では東京が舞台に。共同制作には、映像企画制作会社STORY(『君の名は。』『天気の子』を手がけた川村元気氏と古澤佳寛氏が共同で設立)が参加。そして『唐人街探偵 東京MISSION』の共同プロデューサーを務めた古澤氏は、中国のみならず、すでに上映中の各国でヒットしている理由と作品の魅力についてコメントする。「舞台の日本があえてデフォルメされた日本であることでコメディ要素が入れやすく、凸凹コンビ探偵が、馴染み深いチャイナタウンを起点に友情+αに気づき、深めていく、コメディ、アクション、ミステリーを融合させた娯楽作であることが要因だったのだと思います。そして前向きな気持ちにさせてくれる作品であることもポイント。日本でもこの部分にも注目してほしいですね」

中国から来たチン・フォンの叔父で自称・探偵の便利屋であるタン・レン役はワン・バオチャンが、美人に弱いお調子者ながらケンカは強く頼れる面もあるタイプとして、タン・レンの甥のチン・フォン役はリウ・ハオランが、中国で警察学校の受験に失敗し探偵として活躍する冷静で頭脳明晰な青年として、日本の探偵・野田昊役は妻夫木聡が、実家が裕福でいつも華美なスーツをまとう切れ者として、元刑事でムエタイ王者のタイの探偵ジャック・ジャー役はトニー・ジャーがストイックで不屈の精神を持つパワフルな人物として。東南アジアのマフィアの会長秘書・小林杏奈役は長澤まさみが、エリート警視正・田中直己役は浅野忠信が、双子の姉妹で検事の妹・川村芳子役と裁判官の姉・川村晴子役は鈴木保奈美が、指名手配中の殺人犯・村田昭役は染谷将太が、密室殺人事件の犯人として起訴される日本のヤクザの組長・渡辺勝役は三浦友和が、それぞれに演じている。また香港の映画スター、アンディ・ラウの友情出演も。

三浦友和,ほか

見どころのひとつであるド派手なアクション・シーンは最初から。三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの「Welcome to TOKYO」にのせて、空港での一大バトルが展開。フラッシュモブさながら、そこにいる通行人や空港関係者ら総勢400人を超える全員が敵味方に分かれて激しい攻防戦を繰り広げるシーンだ。この撮影は、名古屋市の国際会議場を空港に見立てて美術セットを制作し、リハーサルを入念に行い、『唐人街探案』全シリーズでアクション監督を務めている『ラッシュアワー2』などのウー・ガン(伍剛)の指示によりワンカットで撮ったというから驚く。パワフルで緊張感があり、勢いやノリのある痛快なシーンとなっている。またワン・バオチャン、リウ・ハオラン、妻夫木聡、トニー・ジャーの4人が有名キャラクターに扮するコスプレパレード、バトル・ゲームさながらスモウ・レスラーやどんどん増える剣道の使い手と対戦する格闘シーンなど、日本のポップ・カルチャーを実写でコミカル変換している感覚が面白い。日本での撮影は、新宿歌舞伎町シネシティ広場(ゴジラ前広場)、浜離宮恩賜庭園、東京タワー、横浜中華街、兵庫県姫路市の圓教寺、秋葉原の電気街にて中央通りの上り3車線のうちの2車線を完全通行止めにして実施したカーアクションなど。またエンドクレジットで出演者やエキストラたちがみんなで踊る群舞はシリーズ作品のお約束とのことで、今回はポップダンサーのKITEが振付を担当。インドのボリウッド風の大団円といった軽快な印象でカラッと明るい。
 そして渋谷スクランブル交差点は、大規模な撮影のための道路使用許可が困難であることから、栃木県足利市の競馬場跡地に巨額の費用を投じてオープンセットを制作。この「渋谷スクランブル交差点」は、映画『サイレント・トーキョー』とNetflixのドラマ『今際の国のアリス』でも登場しているセットであり、そもそも『唐人街探偵 東京MISSION』のために作られたとのこと。「このセットの費用で日本なら映画1本を作れます」(古澤プロデューサー)というほどの『唐人街探偵 東京MISSION』の総製作費は65 億円で、うち日本国内での製作費は31億円という莫大なもの。この作品は内閣府が実施する「外国映像作品ロケ誘致実証調査」の対象作品第1号として、外国映画のロケーション誘致により、地域経済の振興などにどれくらいの経済効果や社会効果などの費用対効果があるか、これから日本が継続的に海外作品のロケ誘致を進める上でどのような課題があるか、といった調査を実施。ジャパンフィルムコミッション(JFC)の資料によると、『唐人街探偵 東京MISSION』の撮影では多大な経済効果があり、映像制作や各地域のロケ対応におけるスキルの向上、海外に向けた日本の魅力の発信、それによるインバウンド観光の増加の見込みといった効果があげられている。これから日本でも海外の映像作品の撮影を積極的に受け入れる体制が徐々に整っていくのかもしれない。

本作の監督・脚本のチェン・スーチェン(陳思誠)は、1978年生まれ、中国の瀋陽出身。名門芸術大学である中央戯劇学院を卒業後、俳優として活動。2014年に映画監督として『北京愛情故事』を手がけ、2015年に本シリーズの1作目『唐人街探案』、2018年に第2作『唐人街探案2』を監督し、各国で劇場公開されたシリーズ2作の大ヒットで地位を確立。2019年に撮影した東京編『唐人街探案3』は、新型コロナウィルスの影響で公開日を2020年の旧正月から2021年の旧正月に延期して公開。公開初日に約10億1,000万元(約164億円)、公開4日間で30億元(約490億円)の興行収入を記録したというニュースも。スーチェン監督の手腕について、古澤プロデューサーは語る。「そもそも各国のチャイナタウン(唐人街)を舞台に探偵の活躍を描くという発想は、表現の自由度を高めるためだったようです。周知の通り、中国の映画には検閲があります。探偵の活躍を描くとなるとどうしても公安警察を登場させることになる。舞台を海外にすれば、公安警察の立ち位置も自在に描けて、結果主人公の探偵を際立たせることができます。非常に冴えた発想だなと思いました」
 スーチェン監督はこの作品の人気を喜びながらも、中国の映画業界について「ディズニーの市場価値は数千億ドルだが、中国のすべての映画会社の市場価値はディズニーの6%未満」とコメント。監督が映画製作者として真摯な思いを語ったコメントを中国のメディア「China.org.cn」より引用する。「中国の観客にどのようなストーリーを伝えればいいのか。どうすれば中国の映画産業をより豊かにして、海外の観客にも受け入れられるようなストーリーを上手く作ることができるのか。前進しなければ取り残される。私たちの世代には大きな責任があると思う」
 『唐人街探案』は各国の事件を解決してゆく人気シリーズであることから、今後も各国の実力派スタッフたちと共同製作してゆくだろう。世界の映画製作者たちとコラボレーションし、さまざまな技術や取り組み方などを学び、各国の社会や民族性を考えて物語を考える、ということを続けていくなか、スーチェン監督が目指す創作がどのように変化してゆくのか気になるところだ。

妻夫木聡,リウ・ハオラン,ワン・バオチャン,長澤まさみ

また劇中で目立つ楽曲は、冒頭の三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの「Welcome to TOKYO」に加え、なんといっても注目はエンディングシーンに流れるマイケル・ジャクソンの名曲「Heal the World」だ。楽曲の使用料が「中国では同じ費用で低予算の商業映画を作ることができる」ほどの高額だったことから、スーチェン監督も躊躇はしたものの、「世界の調和のメッセージを伝える曲」として、ほかの曲ではどうしても合わない、「人類全体を反映する素晴らしい曲はますます少なくなっている」という思いから使用を決断したとのこと。主要キャスト4人をはじめ、さまざまな国籍や年齢の人たちが平和に集うさまをあたたかく映すシーンとなっている。「あなたとわたし、子どもたち、すべての人種のために世界を癒そう」という心の在り方を穏やかに伝える「Heal the World」について、スーチェン監督が語る楽曲への思い入れを「China.org.cn」より引用する。「映画をつくっていた当時、新型コロナウィルスが発生するとは思いもしませんでした。振り返ってみると、今この曲は違う意味を持っています。この曲がもつ意味を置き換えることができる曲はほかにありません。マイケルはもうここにいませんが、彼はいつまでも偉大なアーティストです。私の映画がこのように彼の曲と相互作用することを光栄に思います」

英題『DETECTIVE CHINATOWN3』として、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、タイ、カンボジア、ブルネイ王国など12か国で公開し、イギリスやドイツなどヨーロッパでの公開も予定している本作。「1作目の時点で、エンディングで次回作の予告をする構成」(奥澤プロデューサー)ということで、次回はイギリスのロンドンが舞台となりそうだ。タン&チン、野田、ジャックたちと、探偵世界ランキング第1位「Q」との関係がどうなるかという展開も含め、次回作も楽しみだ。

参考:「China.org.cn

2021年6月18日更新

作品データ

公開 2021年7月9日よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2021年 中国
上映時間 2:16
配給 アスミック・エース
原題 唐人街探案3
監督・脚本 チェン・スーチェン
出演 ワン・バオチャン(王宝強)
リウ・ハオラン(劉昊然)
妻夫木聡
トニー・ジャー
長澤まさみ
染谷将太
鈴木保奈美
奥田瑛二
浅野忠信
シャン・ユーシェン
三浦友和
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。