eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

Our Friend/アワー・フレンド

全米雑誌大賞を受賞した記者のエッセイ映画化
末期がんを患う妻と介護する夫、2人の娘たちを
夫妻の親友が住み込みで支え続けた実話をもとに描く

Our Friend/アワー・フレンド© BBP Friend, LLC 2020

2015年に「Esquire」誌に掲載され、全米雑誌大賞を受賞したエッセイ「The Friend: Love Is Not a Big Enough Word」を映画化。出演は、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のオスカー俳優ケイシー・アフレック、『フィフティ・シェイズ』シリーズのダコタ・ジョンソン、コメディ作品を中心に製作や脚本も手がけているジェイソン・シーゲルほか。監督は2013年のドキュメンタリー映画『BLACKFISH』などで高く評価されているガブリエラ・カウパースウェイトが手がけ、エグゼクティブ・プロデューサーとしてリドリー・スコットが名を連ねる。ジャーナリストのマットは、末期がんを患う妻ニコルと2人の娘の世話を懸命にしているなか、日々の重圧に押しつぶされそうに。そんななか、夫妻の親友デインが住み込みでサポートをしてくれるようになり……。患者も介護する側も最後までいい時間を過ごそうと思っていながらも、病状が悪化し状況が変わるにつれ困惑し混乱し、大人も子どもも全員が手探りで模索を続けていくさまを丁寧に映し出す。愛する人の死についてありのままに、またそれを支えてくれた大切な友人について描く、実話をもとにフィクションとして映画化した作品である。

仕事に打ち込むジャーナリストのマットと舞台女優である妻のニコルは、2人の幼い娘を育てながら毎日を懸命に生きていた。だが、ニコルが末期がんの宣告を受けてから、一家の生活は一変。妻の介護と子育てによる負担でマットが押しつぶされそうになるなか、親友のデインが自宅のあるニューオリンズからアラバマ州の田舎町フェアホープまでやってきて一家のサポートをするように。最初は2〜3週間の予定だったが、デインは一家の状態を心配し、住み込みでしばらく残ることに。かつて人生に絶望した時にマットとニコル夫妻から心を救われたデインは、自身の内面に問題を抱えながらも、一家を献身的に支え続ける。そして闘病生活は約2年となり……。

ケイシー・アフレック,ジェイソン・シーゲル

アメリカ人のジャーナリスト、マシュー(マット)・ティーグによるエッセイを映画化した本作。夫の愛する妻であり2人の娘の母である女性が死に直面し、家族と彼らを支える友人たちの姿を映してゆく。これまでドキュメンタリーを手がけてきたカウパースウェイト監督は、音楽や映像効果で“お涙ちょうだい”を過剰に演出することはなく、原作をもとに紆余曲折あった夫婦のエピソード、2人の愛娘たちとのあたたかな時間、またデインの状況や彼の葛藤などを織り交ぜて描き、親しい人たちとのつながり、痛みや喪失、それを受け入れていくことなどを伝えている。この映画が初のフィクション作品であるカウパースウェイト監督は、内容に心から引きつけられたことや映画化への思い入れについて語る。「これこそ自分が語るべきだという物語に出会うことがある。これは私にとってそういう作品だった。マットの記事は『Esquire』に掲載された時に読んでいて、その正直さと新鮮な切り口にとても感動した。今まで読んだことがない語り口で、喪失と向き合った記事だった。SNSはめったに使わないけれど、この時はマシュー・ティーグをタグ付けして投稿したのを覚えているわ。それからしばらく経って、マイケル・プルスから脚本を渡されて、思わず『私この話を知っている!』と言ったの。本当に心からやりたいと思える企画だった」

ジャーナリストのマット・ティーグ役はケイシーが、仕事に打ち込み家庭を顧みない夫から、不慣れながらも妻の介護や娘2人の子育てを懸命にするようになった姿を自然に、舞台女優の妻ニコル役はダコタが、娘たちに愛情をたっぷり注ぐさまや末期がんに苦しめられる姿などさまざまな様子を真摯に、2人の親友デイン役はジェイソンが、自身の事情がありつつもティーグ一家にとことん寄り添い世話をする複雑な心境を、葛藤も含めてあたたかく表現。舞台監督でニコルの親友シャーロットの夫アーロン役はジェイク・オーウェンが、デインが旅先で出会う女性テレサ役はグウェンドリン・クリスティーが、終末医療の看護師フェイス・プルイット役はチェリー・ジョーンズが、それぞれに演じている。
 この物語は、デインが内面に抱えるものに共感できる人も多いだろう。ジェイソンは、彼がマットとニコル夫妻を14カ月間サポートし続けたことや、役作りについて率直に語る。「自分の生活を投げ打ってまで友だちを助けに行く男がいったいどんな人物なのか、そこを掘り下げることに魅力を感じた。デインの献身を無私無欲の行為と捉えて演じるのが、最もシンプルなアプローチだろう。ただ、デインにはもう少し複雑なところがある。思うに彼は、自分の生活に潜む何かから逃げている。僕はデインのそういうところに興味が湧いた。人生の道筋がわからなくなってきた彼にとって、友だちの家族の面倒を見ることが良い言い訳になるのかもしれない。僕は単なる自己犠牲者ではなく、自分の問題も抱えていて、それを整理しようとしている男としてデインを演じたかった」

ジェイソン・シーゲル,ほか

実際には、2012年にニコルが末期がんの告知を受け、2013年にデインが住み込みで一家をサポートし始め、2014年にニコルが他界。マシュー・ティーグがそれから約1年後の2015年に「Esquire」誌にエッセイを執筆し、この映画の原作となった記事「The Friend: Love Is Not a Big Enough Word」は今もWEBで公開されていて読むことができる(https://www.esquire.com/lifestyle/a34905/matthew-teague-wife-cancer-essay/)。マシュー・ティーグは記事を書いたきっかけとなった当時の思いについて、「妻のニコルが亡くなってしばらくは、そのことについて考えたり書いたりしたくなかった。だが、1年が経った頃、死について正直に語る文化が醸成されていないことについて、『Esquire』の編集者であるマイク・ウォーレンに熱弁した。死について直接的に話すことを避けてきたから、実際に妻を看取ることになった時、その現実を予期できなかったんだ」とコメント。また彼は記事を読んだ読者からの反響についてこのように語っている。「記事が掲載されると、多くの反響が殺到した。『愛する人を亡くした』『介護をしている』など状況はさまざまだったが、皆疲れ果てて心を痛めていた。僕は『自分の心をさらけ出すことで、人の助けになったかもしれない』と感じることができて、とてもうれしかった」
 原作の脚本化にはマシュー・ティーグ本人が深く関わり、彼は記事の映画化が「この数年で私の生活の中心でした」とコメント。ティーグは脚本家のブラッド・イングルスビーに対して感謝と共に、このように語っている。「ブラッドとは1年半もの間、1日も欠かさず連絡を取り合い、脚本開発を進めていった。書き手はどうしても書いたものをコントロールしたくなるものだが、ブラッドは僕にも書かせてくれたり、僕のフィードバックやアイデアを取り入れたりしながらまとめてくれた。仲間どころか、親友になれたと言っても過言ではない」
 またデイン本人は、彼を演じたジェイソンと撮影セットで会ったとのこと。ティーグ本人は「自分や自分の家族について書き、それが公になることには慣れている」ものの、デインはそれに対して少し戸惑っていたとも。ティーグが語るデインの言葉からは、デインの人物像がしみじみと伝わってくる。「彼は有名人ではなく、描いた出来事は彼にとってなにも特筆すべきではないことだったので、なぜ多くの人たちが心を動かされているのか不思議と言っていました」
 脚本家のイングルスビーはアラバマ州のフェアホープを訪れ、ティーグと彼の娘たちとデインに直接会って感じたこと、脚本の執筆に熱意をもって取り組んだことについて語る。「(彼らと会った時に)重大な責任を感じた。幸いマットと密接に連絡をとりながら進めることができた。数ページ書いてはマットに読んでもらい、必ず彼の承諾を得ながら書き進めていった。彼は私に心を開き、正直に語ってくれたことが、自分のキャリアのなかで最高の経験となった。デインの献身とニコルの人物像をありのまま描きたかったし、何よりもマットが満足する脚本にしたかった」

撮影は、マットとニコルが実際に暮らしていたアラバマ州フェアホープにて。劇中の楽曲には、ニコルが大ファンだったレッド・ツェッペリンの楽曲「Ramble On」「Going to California」を使用している。この2曲は本国プレミアの数日前にようやくレッド・ツェッペリンから使用許可を得たとのこと。監督はもともとこの2曲を使用するべく制作を進めていたが、予算が厳しかったことから、エグゼクティブ・プロデューサーのリドリー・スコットや監督やプロデューサー、各人がバンドのメンバーに楽曲の使用について個人的に手紙を送付。そうして、特にリードシンガーのロバート・ブラントが映像を見て納得したことから、際どいタイミングながらも予算内で使用許可を得ることができたそうだ。

ジェイソン・シーゲル,ダコタ・ジョンソン,ケイシー・アフレック

家族のつながり、友情、愛する人を看取ること。誰もが生きていく上でいつかは経験するだろうことについて描く本作。30代で末期がんの宣告を受けた快活な妻、不慣れな介護や子育てや家事をしながら最愛の妻ニコルを看取る夫、不安に苛立ちながらも母をいたわる長女、状況がよくわかっていない幼い次女、一家を献身的にサポートする夫妻の親友デイン。劇中で彼らは悲しみや苦しみに暮れるだけではなく、残された時間を大切に過ごそうと心を砕き、現代に生きる多くの人が抱える葛藤、また過去の思い出などが描かれている。マシュー・ティーグは映画のテーマと、亡き妻ニコルへの思いを語る。「ニコルが亡くなった時、死のあり方について誰からも本当のことを教わってこなかったことに気づいた。だからこの映画では、たとえ動揺するような内容であっても、正直に語ってほしいと願った。僕はニコルに失礼のないよう、彼女との思い出を汚すことのないようにと心配ばかりしていたので、彼女がこの映画を観るとしたら楽しんでくれるかどうかということは念頭になった。でも、撮影中に友だちから『ニコルが見たら、きっと気に入ってくれたはず』と言われて、確かにそうだと思えた。アーティストとしても気に入ってくれるはずだし、自分の物語がこのように語り継がれ、多くの人の役に立てることを喜んでくれたに違いない」
 そしてカウパースウェイト監督は原作の記事を読んだ時の思い、この作品で伝えたいことについて、このように語っている。「(マットの記事は)とても美しく描かれていると同時にユニークな手法で物語を運んでいました。マットが自分たちについて記事で書いたように、人生にはけたたましい笑いや幸福もあれば、そのどちらにも当てはまらない中間点があります。これらの小さな感情を寄せ集めたものが人生であり、彼ら一家を襲ったがんがすべてを支配するわけではないのです。私はこの作品を通して、人生は必ずしも平等ではないが、それでも美しいと伝えたかった。だからこれらのことをできるだけちゃんと存在させて描きました」

参考:「Esquire

2021年9月24日更新

作品データ

公開 2021年10月15日より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2019年 アメリカ
上映時間 2:06
配給 STAR CHANNEL MOVIES
原題 Our Friend
監督 ガブリエラ・カウパースウェイト
脚本 ブラッド・イングルスビー
原作 マシュー・ティーグ
出演 ケイシー・アフレック
ダコタ・ジョンソン
ジェイソン・シーゲル
チェリー・ジョーンズ
グウェンドリン・クリスティー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。