スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

マルチバースの世界に過去作のヴィランも再登場
ピーターと仲間たちとの熱いタッグと予想外の展開を
鮮やかに描くスパイダーマン“ホーム”シリーズ完結編

  • 2022/01/17
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※本記事は映画本編のネタバレを含みます。未鑑賞の場合はご注意ください。

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全世界的に大ヒットしているスパイダーマン“ホーム”シリーズ3部作の完結編。『カオス・ウォーキング』のトム・ホランド、『DUNE/デューン砂の惑星』のゼンデイヤ、『モーリタニアン黒塗りの記録』のベネディクト・カンバーバッチ、俳優としても活躍する『アイアンマン』の監督ジョン・ファヴロー、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のジェイコブ・バタロンとマリサ・トメイ、『フリーダ』のアルフレッド・モリーナほか。監督はスパイダーマン“ホーム”シリーズで高い評価を得ているジョン・ワッツが手がける。スパイダーマンは殺人の濡れ衣を着せられた上に、正体が高校生ピーター・パーカーであると世界中に報道され、彼が愛する人たちまで差別されてしまう。思い悩んだピーターは人々からその記憶を消すことができるかどうかドクター・ストレンジに相談するが……。前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で正体が明かされたその後、ドック・オクをはじめ、スパイダーマンの敵として過去作に登場したヴィランたちが現れる、マルチバースの世界を描く。強敵から愛する人たちを守るため、ピーターが仲間たちと結束して立ち向かう姿を映すSFアクションである。

トム・ホランド

スパイダーマンは殺人の濡れ衣を着せられ、その正体はアメリカの高校生ピーター・パーカーであると明かされた。ピーターは激しい論争の的となり、ガールフレンドのMJや親友ネッド、メイおばさんまで騒動に巻き込まれていく。思い悩んだピーターはドクター・ストレンジに相談し、ピーターがスパイダーマンであるという記憶をこの世界から消してもらうことに。ドクター・ストレンジが危険な呪文を唱えるなか、このユニバースにドック・オク、グリーン・ゴブリン、エレクトロ、サンドマン、リザードといった強敵たちを呼び寄せてしまい……。

いわゆるSFのパラレルワールドがカオスとなって交錯するような、マルチバースの世界を描く本作。懐かしい人気のヴィランたちが当時に演じた俳優たちの出演により再登場、というのが沁みる。パロディのような展開を本家本元で、主役クラスの俳優たちの共演により堂々とやりきる潔さ、テーマや心情の描き方に軸があるのでチープにはならず、込められた敬意や感謝が共感を呼ぶ内容となっている。混乱とパニックばかりではなく、ヴィランたちの不遇を見つめ直し、そこにどうアプローチするか、仲間とのチームワークや思いがけない強力な助っ人とのタッグなど、キャラクターたちがそれぞれに成長し得るものがある、というのは子どもや若い世代が観る映画としても魅力的だ。ワッツ監督は“クラシック・ヴィラン”が登場する本作のストーリーの着想について語る。「ただどうしたら面白くなるかを考えていたんだ。まさか見ることができるなんて思いもよらなかった視覚的な組み合わせや、どうやって物事を組み合わせるか。その中心にあるのは、この俳優たちは誰なんだ? ということ。アルフレッド・モリーナを再び見ることができたら、ウィレム・デフォーをマスクなしで見ることができたら、ジェイミーが出てくれて彼自身を見ることができたら、どんなに素晴らしいだろう、とね」

ゼンデイヤ,トム・ホランド

スパイダーマンとして街と人々の安全を守る高校生ピーター・パーカー役はトム・ホランドが、さまざまな混乱と重圧のなかで成長していく姿を好演。3部作でピーターを演じてきたトムは、ピーターがシリーズを通して遂げた成長について語る。「ピーターはこれまで、(スパイダーマンというよりは)ずっとスパイダー“ボーイ”だった。そしてこの作品は彼がいかにスパイダー“マン”に成長していくかの物語だ。彼が大人になって、アベンジャーズの一員として、その重い責務を負うことを自ら選択する物語なんだ」
 ピーターの彼女MJ役はゼンデイヤが、ピーターの親友ネッド役はジェイコブ・バタロンが、ピーターを育ててきた叔母メイ役はマリサ・トメイが、以前にトニー・スタークの運転手であり親友だったハッピー・ホーガン役はジョン・ファヴローが、強大な力をもつ魔術師ドクター・ストレンジ役はベネディクト・カンバーバッチが、アジア系の魔術師ウォン役はベネディクト・ウォンが、それぞれに演じている。さらに2019年の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』にカメオ出演して話題となったJ・K・シモンズが、スパイダーマンを敵視する「デイリー・ビューグル.net」の編集長J・ジョナ・ジェイムソン役として再び登場するのも注目だ。
 本作ではヴィランとして、2004年の『スパイダーマン2』より金属製のアームをもつドック・オクことDr.オットー・オクタビアス役のアルフレッド・モリーナ、2014年の『アメイジング・スパイダーマン2』より強力な電気を操るエレクトロ役のジェイミー・フォックス、2002年の『スパイダーマン』より凶暴な別人格でグライダーに乗り攻撃するグリーン・ゴブリン役のウィレム・デフォー、2007年の『スパイダーマン3』より体が砂でできているサンドマン、2012年の『アメイジング・スパイダーマン』より爬虫類の体となった科学者リザードなど、過去シリーズから懐かしいキャラクターが登場。演技派で知られる3人の俳優たちは、人気シリーズで久しぶりに以前と同じキャラクターとして出演したことを心から楽しんだとのこと。アルフレッドは前回に出演した当時の気持ちと、ドック・オクとして再出演することへの思いを語る。「あの作品のことを誇りに思っているし、参加できてすごく嬉しかった。テクノロジーを駆使したテントポール作品に出演したのはあれが初めてだったからワクワクしたよ。また戻ってこられて最高に嬉しいけど、いい意味で、前回よりも大きな責任を感じているんだ。今はこのキャラクターの人気の高さがわかっているからね。17年前は、夢中になって楽しんだ。今回は、ファンをがっかりさせたくないという気持ちがあるんだ」
 ワッツ監督はヴィランたちへの思いと、本作で描いた彼らの物語について語る。「これまで多くの素晴らしい俳優が出演しており、彼らを一堂に集め、それぞれのストーリーを別の形で終わらせる方法を見つけることができたと思う。彼らはある意味、事故やテクノロジーのミスの犠牲者のようなものだ。自信過剰からくるものだったり、純粋に偶然によるものだったり。ジェイミー・フォックスが電気ウナギの水槽に落ちたのも単なる事故だったが、そういうことをきっかけとして、セカンドチャンスというストーリーを伝えることができたんだ」
 なかでも特に面白いのは、サム・ライミ監督による2002年の『スパイダーマン』の主演トビー・マグワイア、マーク・ウェブ監督による2012年の『アメイジング・スパイダーマン』の主演アンドリュー・ガーフィールドが登場すること。3人のスパイダーマンが顔を揃える、「そうきたか!」という展開が意表を突く。ヴィジュアルとしても痛快であり、目的を深く理解して共有し、力を合わせてヴィランたちに立ち向かう協力体制が、コミカルながらも爽やかでいい塩梅となっている。

アルフレッド・モリーナ

「僕はすでに2回観ていて、しかも出演しているのにまた観たい」というトム・ホランドは、何度も観たくなるという作品の魅力について語る。「この作品の素晴らしいところは、ストーリーが幾重にも織り込んであって、かつノスタルジックで、いろんな形で映画の素晴らしいセレブレーションになっていること。きっとファンは何度も観たくなるんじゃないかな」
 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は世界的にヒット中で、全米および海外の成績を合計した全世界累計興行収入が15億3585万6116ドル(約1766億円)となり、『アベンジャーズ』を抜いて全世界累計興行収入の歴代8位となったというニュースも。トムは観客へのメッセージを語る。「みんなが映画を楽しんでくれることを願っている。僕たちが住んでいるこのクレイジーな世界から2時間20分の逃げ場になってほしい。更にクレイジーな世界だけど、安全に楽しめる。この映画を観て、充実感を味わってほしい。絶対にがっかりはしないと確信している。映画を観終わってから、僕たちのキャラクターにもっと愛情をもってくれたら嬉しいな」
 “マーベル・シネマティック・ユニバース”の(MCU)の27作目である本作。MCUの28作目となるマーベル・スタジオ最新作『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』は2022年5月4日に日本公開予定であり、さらなる展開をしていくMCUの世界が楽しみだ。

作品データ

公開 2022年1月7日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにて公開中
制作年/制作国 2021年 アメリカ
上映時間 2:28
配給 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題 Spider-Man: No Way Home
監督 ジョン・ワッツ
脚本 クリス・マッケナ
エリック・ソマーズ
製作 ケヴィン・ファイギ
エイミー・パスカル
出演 トム・ホランド
ゼンデイヤ
ベネディクト・カンバーバッチ
ジョン・ファヴロー
ジェイコブ・バタロン
マリサ・トメイ
アルフレッド・モリーナ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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