北野武の原作・監督・脚本・編集・出演による最新作
戦国時代を生きる男たちの野望や愛憎が絡み合い、
“本能寺の変”にいたる経緯を独自の視点を交えて描く
北野武の原作・監督・脚本・編集、そして出演により、戦国時代を生きる男たちの野望や愛憎を描く。出演は、ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、木村祐一、遠藤憲一、浅野忠信、大森南朋、小林薫、岸部一徳ほか豪華な布陣で。織田信長が天下統一を掲げて対抗勢力と激しく戦うなか、信長の家臣・荒木村重が反乱を起こして失踪。信長は羽柴秀吉、明智光秀ほかの家臣に命じて捜索するが……。武将、農民、芸人らの野望や思惑、愛憎が絡み合い、“本能寺の変”へといたる経緯を独自の視点を交えて描く。北野武は2023年4月15日に東京で行われた完成報告会見にて、“本能寺の変”をテーマに映画化を決めた理由について、「ここ何年か歴史ブームで、織田信長、明智光秀と本能寺の変が取り上げていると思いますが、歴史考証の専門家の方が調べた中で、約80の諸説があるんです。80の中で僕自身が考えていたのは、『裏で秀吉がかなり動いたのかな』と思ったのがきっかけで映画化しようと思っていた」とコメント。信長の跡目をめぐり、反逆するもの、策略を練るもの、野心をむきだしにするもの、翻弄されるもの、戦国時代を生き抜こうとする男たちの姿を色濃く映す大作である。
戦国時代の日本、織田信長は天下統一を掲げ、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げている。その最中、信長の家臣・荒木村重が反乱を起こして失踪。信長は自身の跡目相続を餌に、羽柴秀吉、明智光秀ほかの家臣たちに村重の捜索を命じる。秀吉の弟・秀長と軍司・黒田官兵衛の策で村重は捕らえられ、光秀に引き渡されるが、光秀は以前から付き合いのあった村重を殺さず匿う。村重の行方がわからず苛立つ信長は、徳川家康に疑いの目を向け始める。だが、それはすべて仕組まれた罠だった。
北野武が「何十年も前にだいたいは書き上げていた」という脚本を練り上げて、約30年を経て完成した映画。福島聡司プロデューサーは監督の脚本の完成まで、「誰が死んで、誰が生き残るのか? 台本の稿を重ね、決定稿になるまでにそれが何度も入れ替わったのも印象的でした」とコメント。そして映画のHPの監督インタビューでは、“本能寺の変”の約80の諸説から“羽柴秀吉説”を選んだ理由と、タイトルである“首”についてこのように語った。「明智光秀を使って徳川家康を殺そうとした織田信長が、光秀の裏切りに遭う。光秀を動かして天下をとろうとしたのは実は秀吉だった! という構図をちょっと複雑にしたんだけど、日本人の誰もが知っているこの人物の関係性は分かりやすいし、面白いんだよね。しかも、信長やその跡目を狙うほかの武将は敵の武将の首に固執するけれど、百姓上がりの秀吉は首なんかどうでもいい。その違いを描くのも今回のテーマだったね」
織田信長の跡目を狙う“猿”こと羽柴秀吉役はビートたけしが、策略を練り首をとることにこだわらずに敵を出し抜いていく武将として。信長役の加瀬よりも年若い家臣の秀吉を演じるのに年齢が合わないのではという福島プロデューサーの問いについては、「いいんだよ、そんなの」と笑いながら話し、秀吉役を自ら演じた理由について、2023年11月15日に東京の日本外国特派員協会で行われた記者会見にてこのように語った。「本当に監督1本でやりたい気持ちはあったが、出演するとなると自分の中ではやりやすいのは秀吉だなと。昔からタレントを戦国武将になぞらえた本がよくあって。信長がぼんちおさむちゃんだとか、紳助が明智光秀だとか、俺が大抵秀吉なんですよ(笑) 色々なもの見ると、やっぱり自分がやりやすいのは秀吉だなという感じがあったし、ストーリーの影の部分の悪人をやっているので、監督を同時にやる時にけっこう離れて人の芝居を見られるということがあって。だから自分の時はどうにもならなくなっているが(笑) 監督をやるために秀吉を選んだのと、やりやすいので、当然そうなった」
強すぎる忠義心から謀反を決意する明智光秀役は西島秀俊が、狂気をまとう暴君の織田信長役は加瀬亮が、侍大将を夢見る元百姓の難波茂助役は中村獅童が、信長に謀反を起こして首を狙われる荒木村重役は遠藤憲一が、秀吉に戦略を助言する軍師・黒田官兵衛役は浅野忠信が、秀吉の弟で官兵衛と共に兄を支える羽柴秀長役は大森南朋が、秀吉に仕えることになる元甲賀忍者の芸人・曽呂利新左衛門役は木村祐一が、光秀の家臣・斎藤利三役は勝村政信が、甲賀の里・荒張の森のリーダー般若の佐兵衛役は寺島進が、家康に仕える伊賀忍者・服部半蔵役は桐谷健太が、毛利軍の清水宗治に仕える僧侶・安国寺恵瓊役は六平直政が、千利休に仕える間宮無聊役は大竹まことが、茂助の幼馴染の百姓・為三役は津田寛治が、備中高松城の戦いで秀吉と敵対する備中高松城主・清水宗治役は荒川良々が、信長の小姓・森蘭丸役は寛一郎が、信長の家臣となった宣教師の従者・弥助役は副島淳が、徳川家康役は小林薫が、裏で暗躍する茶人・千利休役は岸部一徳が、それぞれに演じている。
西島は台本を読んだ時の思いについて、映画のHPのNEWSにある2023年9月25日付の記事「本ポスター&本予告解禁!」にコメントを寄せている。「生きるか死ぬかの毎日で、首だけになってしまえば、地位も名誉も何もないという無常観。死と隣り合わせの日々の中、滑稽なことと笑った直後に悲惨なことが起きたり……ほかの監督では感じることのできない、北野監督ならではの世界観があった」
北野武は充実の布陣であるキャストについて、完成報告会見にてこのように語った。「最近になって北野組に参加してくれたキャストの皆さんが皆優秀で、集まることができたら撮れるなと思い、ようやく創れるなと思いました」
この作品のテーマについて、また劇中で男同士の愛憎を描いたこと、時代劇における男色について、北野武は日本外国特派員協会の記者会見にてこのように語った。「映画のテーマは信長、明智光秀の“本能寺の変”を中心とした物語ですが、NHKで描く大河ドラマはかっこいい役者を使って、歴史的に綺麗ごとを並べたような戦国の物語を描く。そういうところで触れないのが、信長とか、小姓の森蘭丸や前田利家と信長の関係とか、そういう男同士のホモセクシャルの関係というのを絶対に日本の大河ドラマは描かない。もっと戦国時代の男色というのは男同士、その人に命をかけるというような意味での男色であって。当然信長は子供を22歳に授かっている。性的な関係が違うというのは、ほとんど日本のテレビなんかは描かない。もっと戦国時代はドロドロした男同士の関係や裏切りとか色んなことが同時に起こってああいう風な事件になったというのを30年前台本に書いた。それをたまには時代劇を撮ろうということで、撮ってみた結果ですが。試写会の段階ではかなり好評で非常に喜んでます」
また映画HPの監督インタビューでは、第76回カンヌ国際映画祭の「カンヌ・プレミア」部門でワールドプレミアとして上映され、男同士の愛憎のもつれを描くシーンにも好評を得たことについてこのように語った。「そこもカンヌでは思った以上に反応がよくて。戦国時代という形ではあるけれど、描いているのは欲望や裏切りという、現代と変わらないもの。“武士道”なんていうヘンな理屈を言わず、男の狙う出世と名誉、男同士の愛憎劇をストレートに描いたからウケたのかもしれないね」
一般的な時代劇でこうした内容が描かれることはほとんどないなか、この映画で男同士の関係を含む人間の泥臭さを描いたこと、スタッフとキャストへの感謝について、北野武は完成報告会見にてこのように話した。「今、時代劇といえば大河ドラマなどで描かれていますが、綺麗な出世物語ばかりで、人間の汚い部分や業というものが描かれていない。この作品は『自分が撮ればこうなる』という発想から作り上げました。完成までだいぶ苦労しましたが、スタッフとキャストのおかげで作ることができたと思っています」
完成報告会見にて、株式会社KADOKAWAの代表取締役社長・夏野剛氏が「日本が世界に誇る才能・北野武監督待望の最新作であり、製作費15億円をかけた大作映画」と紹介し、監督は「出来たらこの映画がヒットしていただいて、あと何本か撮れる状態になればいいなと思ってます」とざっくばらんにコメント。そして現在すでに新たな制作を進めていて、そのテーマは「暴力映画におけるお笑い」であるとも。また映画HPの監督インタビューにて、映画作りへの思いについて北野武はこのように語った。「映画は100年ちょっとの歴史の中であまり変化していないけれど、おいらは絵画の世界で写実的な絵が抽象画になる動きがあったり、キュビズム(前衛美術運動)が生まれたように、映画もそっちの方向にじゃんじゃん転がっていってもいいんじゃないかなと思っていて。『気狂いピエロ』(65)をあの時代に発表して、映画の作り方を一新させたジャン=リュック・ゴダールみたいなひっくり返し方で、映画はもっともっと進化しなきゃおかしい。それに俺自身、こうでなきゃいけないっていう既存の常識をぶっ壊してスゴい映画を作りたいと思っているんでね。ピカソの絵なんか見ちゃうと、風景画や写実的な絵の何がいいんだ?って思うよね。それと同じ感覚になるような映画を作りたいという想いがずっと続いているんだよ」
公開 | 2023年11月23日より全国公開 |
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制作年/制作国 | 2023年 日本 |
上映時間 | 2:11 |
配給 | 東宝 KADOKAWA |
監督・脚本・編集 | 北野武 |
原作 | 北野武『首』(角川文庫/KADOKAWA刊) |
出演 | ビートたけし 西島秀俊 加瀬亮 中村獅童 木村祐一 遠藤憲一 勝村政信 寺島進 桐谷健太 浅野忠信 大森南朋 六平直政 大竹まこと 津田寛治 荒川良々 寛一郎 副島淳 小林薫 岸部一徳 |
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