正体

横浜流星と藤井道人監督の熱いタッグによる注目作
なぜ死刑囚が1年以上逃亡できたのか、その目的とは
思いがけない角度で希望を示すヒューマンドラマ

  • 2024/11/22
  • イベント
  • シネマ
正体©2024 映画「正体」製作委員会

横浜流星と『青の帰り道』『ヴィレッジ』に次ぐ長編映画で3度目のタッグ、『余命10年』『青春18×2 君へと続く道』の藤井道人監督が、作家・染井為人の小説を原作に映画化。共演は、『ゆとりですがなにか インターナショナル』の吉岡里帆、SixTONESのメンバーで俳優としても活躍する『燃えよ剣』の森本慎太郎、『ゴールデンカムイ』の山田杏奈、NHK大河ドラマ「どうする家康」の山田孝之ほか。凶悪な殺人事件の容疑者で死刑判決を受けた鏑木慶一が脱走。警察が捜索を続けるなか鏑木は街に潜伏し逃走をし続ける。鏑木はどのようにして潜伏し逃走をし続けているのか、行方を追う刑事、殺人事件の被害者の家族、報道関係者、そして逃走中に鏑木が関わった人たちのこと。逃亡する死刑囚の足跡を追うサスペンスであり、思いがけない角度で人の心情のあり方を映すヒューマンドラマである。

日本中を震撼させた殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木慶一が脱走。潜伏し逃走を続ける鏑木と、日本各地で出会った沙耶香、和也、舞は、刑事の又貫から取り調べを受ける。3人がそれぞれ出会った鏑木は、凶悪な殺人事件の犯人とはまったく別人のような存在だった。人相を変え、間一髪の逃走を1年以上続けて日本を縦断する鏑木の目的はなんなのか。情報提供の懸賞金が跳ね上がるなか、鏑木がある場所にいると警察に通報が――。

吉岡里帆,横浜流星

公私ともに交流があり、長編映画で3回目のタッグとなる横浜流星と藤井監督による最新作。そもそもこの企画は4年前から、「横浜流星主演で長編映画を作る」と決めた藤井監督がその第1作として立ち上げた企画だったとのこと。諸事情からほかの作品が先に進められ公開されたのち、満を持して完成したという。監督は、横浜とお互いを知り尽くしている、このタイミングで撮れてよかったとも思うと話し、「我武者羅に駆け抜けてきた」とコメント。『ヴィレッジ』と同様に脚本作りから参加した横浜は、2024年11月18日に東京で行われた公開直前イベントにて、時間をかけて作り上げたこの作品への思いをこのように語った。「4年かけて妥協せず完成させた自信作です。死刑囚が逃亡するというサスペンスですけど、その中身はヒューマンドラマで、エンタメになっています。沢山の方々に楽しんでいただきたいですし、いろんなことを感じていただけると思います。皆さんが受け取ったものを大切にしていただきたいです」
 また藤井監督は原作者の作家・染井為人氏への感謝をこのように語っている。「原作の染井先生は同世代ということもあり、会ったその日に意気投合しました。染井先生が僕らのために多くの時間を割いてくださり、作品の話をたくさんできたこと、本当に感謝しております」
 そして染井氏は、撮影前から監督と横浜と話をしてきたこと、映画化への思いをこのようにコメントしている。「監督の藤井道人さんと主演の俳優さんとは、クランクイン前から連絡を取り合いました。その際に御二方の『正体』に対するリスペクト、そして並々ならぬ覚悟を感じ、これは必ずやいい映画になるであろうと確信いたしました」

森本慎太郎,横浜流星

逃走を続ける死刑囚・鏑木慶一役は横浜が、捉えどころのない人物として。潜伏する先々で別人になりすます“5つの顔を持つ逃亡犯”を体現している。横浜は監督と共に4年前から脚本やセリフなどのやりとりをして準備を進めてきたことから、この映画について「非常に思い入れのある作品」と話し、2024年11月5日に東京で行われた完成披露舞台挨拶イベントにて、鏑木という人物とこの映画に込めた熱量についてこのように語った。「純粋な気持ちで観ていただきたいです。自分は“信じる”ことをあらためて考えて、とても突きつけられる思いでした。ただ彼は希望を持って生きていて、すごく心を動かされます。我々の覚悟や想いが込められているのでぜひ受け取ってください」
 そして藤井監督は公私共に交流のある横浜との関係について、このように語っている。「俳優・横浜流星との出会いは、僕にとってとても大きなものでした。お互い売れずに苦汁を飲んでいた時期を経て、お互いを鼓舞し合って、沢山の時間を過ごして今の関係があります」
 鏑木の無実を信じる安藤沙耶香役は吉岡里帆が、鏑木と共に工事現場で働く日雇い労働者の野々村和也役は森本慎太郎が、鏑木に恋心を抱く酒井舞役は山田杏奈が、鏑木を追う刑事・又貫征吾役は山田孝之が、又貫の上司である警視庁の刑事部長役は松重豊が、又貫の部下の刑事役は前田公輝が、一家殺人事件の遺族役は原日出子が、その妹役は西田尚美が、鏑木の過去を知る養護施設の園長役は木野花が、事件の鍵を握る謎の男役は山中崇が、鏑木が働く大阪の建設現場の社員役は駿河太郎が、沙耶香の父親役は田中哲司が、鏑木が東京でライターとして働く会社の上司でネットニュースの記者役は宇野祥平が、鏑木が長野で働く水産加工工場の社長役は遠藤雄弥が、それぞれに演じている。
 また原作者の染井氏は、本編の最後の判決シーンの撮影の際に見学に訪れたとのこと。そこで監督の発案により染井氏も傍聴人のひとりとしてこの撮影に参加したという。染井氏はキャストやスタッフへの感謝をこのように語っている。「藤井道人監督、水木プロデューサーをはじめとしたスタッフの皆さま、横浜流星さんをはじめとしたキャストの皆さま、この作品に携わってくれたエキストラ(各ロケ場所の地元の方々)の皆さま、協賛いただいた皆さま、数え切れないほど多くの方々のお力添えのもと、映画『正体』は完成に至りました。原作者として、心より感謝の意を表します」
 そして主題歌はヨルシカが書き下ろしの新曲「太陽」を提供。ヨルシカはこのようにコメントを寄せている。「監督との打ち合わせで印象的だったのは“讃美歌”というワードです。受け取ったメッセージを壊さないよう丁寧に作りました」

前田公輝,山田孝之,横浜流星

撮影は、劇中の夏編は2023年の夏に、冬編は2024年の冬に、2回に分けてそれぞれの季節に行われた。そして見どころのひとつは、藤井監督が、「流星は、人間になりきる力が圧倒的に高い。『正体』では彼の、まさに“七変化”が観られます」と語る、鏑木が“5 つの顔を持つ逃亡犯”として姿を変えていくところ。横浜は役作りで苦労した点や意識したことについて、2024年11月5日に東京で行われた完成披露舞台挨拶イベントにて、このように語った。「誰からも信じてもらえない状況の中で脱獄をするんですけど、どんな状況でも鏑木の真意や目的を見失わないようにすることを一番大事にしていたし、それをずっと維持していくのにとても苦労しました。5つの顔と言っていますが、別人格ではないので彼の心の部分や鏑木としていることを意識していましたし監督とメイク部、衣装部のみなさんと相談して追及しました。やりすぎるとコスプレになるし、街の中にいても紛れ込めるように意識しました」
 また横浜本人が行う大がかりなアクションも見どころだ。特にワンカット風に演出している、マンションの3階のベランダから飛び降りて全力疾走、橋から川に飛び込むシーンは、スタッフたちとタイミングを合わせるために横浜は合計14回この内容を行ったという。横浜が中学時代に空手の世界王者となり、2023年に映画『春に散る』をきっかけにボクシングのプロテストに合格したことは有名ながら、本格アクションを体現する気概に目を見張る。

鏑木が逃走し続けた理由、正体とはいったいなんなのか。そこにはサスペンスから一転して人の心情にフォーカスし、ふいに雲間からサッと射す光のように希望を感じさせるものがある。最後に、横浜、原作者の染井氏、藤井監督から観客へのメッセージをお伝えする。
 横浜「『正体』は監督と共に目標を決め、非常に思い入れのある作品です。人生は一筋縄ではかない。 人が人を欺き、陥れ、間違いが起き、理不尽で、"正義"が通用しないことが多々ある。状況は違えど、誰もが感じた事があると思います。それでも彼は信念を持って生きます。彼の生き様に何かを感じてもらえたら嬉しいですし、何故脱獄したのか、真意は何なのか、劇場で彼の正体を目撃していただきたいです」
 染井氏「感無量です。ぼくが描かなかった部分をあえて主軸に置いていて、映画『正体』は小説『正体』のアンサー作品だと思います。直で映画を観ていただいてもいいし、原作を先に読んでもいいし、とにかくたくさんの人に映画館に足を運んでいただきたいです。友達、恋人、家族と、お一人でも(ぼくは大体一人です)、ぜひ映画館で観てください」
 藤井監督「原作を提案してくれたプロデューサー、敬愛するキャスト、スタッフの4年間の想いが1本の映画になりました。人と人との繋がりが希薄になっている今だからこそ、沢山の方に観ていただきたいです」

作品データ

公開 2024年11月29日より全国ロードショー
制作年/制作国 2024年 日本
上映時間 2:00
配給 松竹
監督・脚本 藤井道人
脚本 小寺和久
原作 染井為人『正体』(光文社文庫)
出演 横浜流星
吉岡里帆
森本慎太郎
山田杏奈
前田公輝
田島亮
遠藤雄弥
宮ア優
森田甘路
西田尚美
山中崇
宇野祥平
駿河太郎
木野花
田中哲司
原日出子
松重豊
山田孝之
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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