大泉洋主演、垣根涼介の小説を入江悠監督が映画化
世直しを目指し、徳政一揆で民衆を率いた男の物語
迫力の映像とドラマ性で引きつける、力強い時代劇
直木賞受賞作家・垣根涼介の小説を、『22年目の告白―私が殺人犯です―』『あんのこと』の入江悠監督が映画化。出演は、『月の満ち欠け』の大泉洋、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』の堤真一、なにわ男子のメンバーであり、大河ドラマ「どうする家康」の長尾謙杜、『室町無頼』の松本若菜、Netflixシリーズ「地面師たち」の北村一輝、ドラマ「新宿野戦病院」の柄本明ほか豪華な顔合わせで。室町時代、飢饉と疫病に苦しむ京の都で、権力者たちは民衆を思いやることなく浪費し続けている。混沌とした情勢のなか、腕の立つ牢人・蓮田兵衛(はすだ・ひょうえ)は倒幕と世直しを画策する。歴史書に一度のみ登場する実在した人物が民間の人々を率いて一揆を起こし、幕府に挑む姿を描く。大規模なアクションシーンに加え、蓮田兵衛が出会う少年の成長物語、兵衛とかつての悪友との鍔迫り合い、兵衛と恋仲の女性との対話など人間ドラマを描いていく。これまで映像作品で描かれることがほぼなかった室町時代を舞台に、寛正三年の徳政一揆で民衆を率いた人物に着想を得て、オリジナルの物語で引きつける、力強い時代劇である。
1461年、応仁の乱前夜の京(みやこ)。大飢饉で疫病が蔓延し、加茂川ベリには二ヶ月で八万を超える死体が積まれ、人身売買や奴隷労働が横行している。権力者たちは何の手も打たず浪費し続けて格差社会となっていた。悲惨な状況と窮民を見た牢人・蓮田兵衛はひそかに倒幕と世直しを画策する。そんななか、兵衛は天涯孤独の少年・才蔵と出会い、武術の師に預けられた少年は六尺棒という武器の達人となり、兵衛の手下となる。そして兵衛は集結したさまざまな使い手たちや民衆を束ね、巨大な権力に向けて大暴動を仕掛ける。行く手を阻むのは、兵衛のかつての悪友・骨皮道賢率いる幕府軍。“髑髏の刀”を手に一党を動かす道賢を前に、兵衛は命を賭して戦いに挑む。
日本史上、初めて武士階級として一揆を起こした蓮田兵衛と仲間たちを描く垣根涼介の同名の小説を入江監督が映画化。映像作品ではほとんど描かれてこなかった室町時代を舞台に、豪華なキャストと大規模なスケールで製作された時代劇だ。寛正三年の徳政一揆の記述として、歴史書に一度のみ記されている蓮田兵衛、やはり実在した人物ながら記録が少ない骨皮道賢といった謎の多い人物を中心に、寛正三年の徳政一揆にまつわる物語をフィクションとして描いている。入江監督は連続ドラマWの「ふたがしら」で京都撮影所を経験していたなか、映画で初めて時代劇を手がけたことについて熱意と共に語る。「東映の映画を観て育ち、東映の映画が10代の頃の鬱屈した気持ちを受け止めてくれた。しかも時代劇を撮れるというのは僕にとってとても特別なこと」
牢人で剣の達人・蓮田兵衛役は大泉洋が、一揆勢を率いて戦う姿をシリアスに。普段は軽妙でユーモアのある役が多い大泉は、自身の信じる道をゆく凛々しい武士・兵衛を演じたことについて、2024年2月11日に東京で行われた製作発表会見にてこのように語った。「兵衛は分かりやすくカッコいいので男が憧れると思います。多くは語らず、一見ダメそうに見えるけど、信念を持っている。命がけで時代を変える。仲間を守って、立ち向かえないと思える敵にも立ち向かうんですよ。無頼と書かれた紙を手に立ち向かう姿はカッコいいですよね」
そして兵衛という人物とこの映画のテーマについて、大泉は熱く語る。「一本筋が通っていて心に熱い信念を持った兵衛は、僕自身も憧れるような人です。荒廃し切った時代でどこか自分の命は諦めつつ、戦う中で得た“仲間のために”という覚悟を胸にしながら、兵衛を演じていました。命がけで世の中を変えようと立ち上がっていく人たちの姿から、勇気をもらえるような映画です」
兵衛のかつての悪友で洛中警護を担う骨皮道賢役は堤真一が、民衆と敵対する幕府側の武装集団の頭目として。道賢に拾われ、兵衛に預けられる没落武士の子・才蔵役は長尾謙杜が目覚ましく成長してゆく少年として、昔は道賢と恋仲で現在は兵衛の恋人である高級遊女・芳王子役は松本若菜がしなやかに威勢よく。琵琶湖エリアの今津浜で才蔵を鍛える、棒術の達人で兵衛の師・唐崎の老人役は柄本明が、その一味である刀鍛冶屋の主・小吉役は般若が、朝鮮職人の子で弓の名手・超煕役は武田梨奈が、また悪政を続ける室町幕府のなかで真面目に務めようとする政所執事・伊勢貞親役は矢島健一が、民衆を見下す有力大名・名和好臣役は北村一輝が、民を支援せず風雅な暮らしに大金を注ぎ込む八代將軍・足利義政役は中村蒼が、才蔵を追跡する比叡山の僧兵で土倉の主・法妙坊暁信役は三宅弘城が、それぞれに演じている。
見どころは大泉、堤、長尾によるアクション、剣や槍、弓や長尺棒などによる戦い、約300人のエキストラが参加する一揆などの大規模なスケール感だ。アクションでは、東京を中心に活動するアクション監督の川澄朋章と、京都の殺陣師・清家一斗が参加し、大泉と堤と長尾のアクションを練り上げていった。入江監督はその意図について、「川澄さんと清家さんという普段交わらないお2人が意見を出し合うことで、王道なものとトリッキーなものが融合した面白いアクションができるのではないかと思った」と話している。
大泉は本格的な殺陣とアクションは今回が初挑戦であり、アクションの練習初日に100本の素振りをして(素振りの本数は怪我防止で徐々に減らしたそう)、刀を家に持ち帰り自主練をしたとも。この年齢で本格的な殺陣は身体的にしんどかったとぼやきつつも、大泉は、50歳の今だからこそ出せる、兵衛としての味わいもあったはず、とコメントしている。
当初、堤が演じる道賢は立ち回りのシーンがほとんどなかったものの、撮影が進むにつれて急遽、監督の判断で兵衛と道賢の一騎討ちのシーンが追加に。その理由について入江監督は笑顔で嬉しそうに語る。「(コロナ禍により)撮影の延期が繰り返される中でも、ここまで漕ぎ着けたのは大泉さんと堤さんがこの企画を面白がって、諦めないでいてくれたから。そう思うと、お2人が戦っている姿をもっと見たくなった」
堤は製作発表会見にて、「僕、今年還暦ですよ。腰が痛くて痛くて」と笑顔でコメント。そして道賢の役作り、この映画への思いをこのように語っている。「道賢は実在した人物ですが、記録にはあまり残されていません。演じる上で大切にしていたのは、目指すところは同じはずなのにやり方や立場が違う兵衛との関係性。一騎討ちのシーンもありましたが、洋ちゃんの殺陣は本当にカッコよかったです。本格的な骨太の時代劇になったなと感じています」
一方、六尺棒という特殊なアクションに挑んだ長尾は、練習では素振り500本など厳しいトレーニングを重ね、撮影では琵琶湖に落ちるシーンも、クライマックスで多勢と戦いながら屋根を超えていくワンカットのシーンも代役ナシで行うなど体を張って表現。才蔵の成長さながら長尾が能力を鍛えていったことについて、入江監督はこのように讃えている。「どう考えても人間にこの動きは無理だと思うようなことにも、長尾くんが果敢に挑戦してくれた。彼のエネルギーにたくさん助けられた」
撮影は滋賀、兵庫、大阪、そして京都撮影所などで実施。才蔵の修行シーンは琵琶湖畔にて、道賢の本拠地は旧白髭神社跡地にて、足利義政と大名のシーンは平安神宮の尚美館で行われた。またこの映画では、これまでに映像作品でほとんど描かれたことのない室町時代を表現するため、東映京都撮影所の職人たちが伝統と技術を結集したとも。京都撮影所には一揆が行われる御所前の通りとして、約68坪のオープンセットを建築。入江監督は時代劇でありながら映画『マッドマックス』のような荒くれ者たちのワイルドな世界観をイメージしていたそうで、撮影では巨大な送風機で風を起こし、合計約600kgのはったい粉が砂塵のように舞うさまが表現されている。
日本の時代劇を映画として打ち出していく、という気概が熱いこの作品。東映京都撮影所の伝統的な技術と、入江監督の現代的な映像感覚の融合により、時代劇の魅力をより広く伝えていこうという意気込みが感じられる。原作者・垣根涼介は映画への思いについてこのようにコメントを寄せている。「さて、この稿を書いている段階で映画はまだ完成していないが、京都まで撮影見学に赴いた時、役者やスタッフの皆さんは凄まじい緊張感の中でそれぞれの役割を懸命にこなされておられた。きっと圧倒的迫力の映像美になるのだろうと、今からたいへん期待しております」
大泉は製作発表会見にて、このようにメッセージを伝えた。「近年ここまでのスケールで撮られている映画はそうないかと思います。蓮田兵衛もそうですが、ここで描かれている人々が皆、本当に必死に時代を変えようとした人物ばかりです。男たちはカッコよくて、女性たちは美しくて、どこか今の時代にも通ずる映画になっていると思います。完成しましたらぜひ観ていただいて、何か自分でもアクションを起こしたくなる映画です。どうか映画『室町無頼』をよろしくお願いいたします」
そして入江監督は、小説の魅力、この映画への取り組みと思い入れについて、時代劇を支える古株のスタッフへの感謝と共に、観客へのメッセージをこのように語っている。「小説『室町無頼』を読んだのは8年ほど前のこと。蓮田兵衛と才蔵という無名の2人が師弟のようになって、時代を変えていく。ものすごく面白い小説だと思いました。室町時代というのは、これまでほとんど映像作品では描かれたことがありません。映画人、そして日本映画にとっても新しい挑戦になる。意気込んで臨み、室町時代について調べて脚本を書き進めていきました。大きな支えとなったのは、時代劇の知識や経験といった無形の財産を豊富に持った京都撮影所のスタッフの方々の存在です。目指したのは、室町時代を描いた金字塔となるような映画。武器の種類や戦い方、人数の規模など、これ以上のアクションはできない、狂気の沙汰だと思うほどふんだんに入れ込んでいます。“盛大なお祭り”のような映画をぜひご覧いただきたいです」
公開 | 2025年1月17日より全国公開 |
---|---|
制作年/制作国 | 2024年 日本 |
上映時間 | 2:14 |
配給 | 東映 |
監督・脚本 | 入江悠 |
原作 | 垣根涼介『室町無頼』(新潮文庫刊) |
出演 | 大泉 洋 長尾謙杜 松本若菜 遠藤雄弥 前野朋哉 阿見 201 般若 武田梨奈 水澤紳吾 岩永丞威 吉本実憂 土平ドンペイ 稲荷卓央 芹澤興人 中村 蒼 矢島健一 三宅弘城 柄本 明 北村一輝 堤 真一 |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。