劇場アニメ『ベルサイユのばら』

池田理代子の漫画が完全新作で劇場版に
18世紀後半の革命期のフランスを生きる
オスカルたちの劇的な運命を華麗に描く

  • 2024/12/24
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劇場アニメ『ベルサイユのばら』©池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

池田理代子の漫画『ベルサイユのばら』が、1972年の連載開始から50年以上を経て、初めて完全新作での劇場版アニメとして完成。声の出演は、『ルパン三世』峰不二子役(三代目)の沢城みゆき、ミュージカル『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役の平野綾、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』ポップ役の豊永利行、『仮面ライダー THE NEXT』風見志郎役の加藤和樹、『アナと雪の女王』オラフ役の武内駿輔、『SPY×FAMILY』ロイド役の江口拓也、『千と千尋の神隠し』ハク役の入野自由ほか。監督はテレビアニメ「アオハライド」の吉村愛、脚本はテレビアニメ「NANA」の金春智子が手がける。将軍家の跡取りである男装の麗人オスカル、隣国オーストリアから14歳で嫁いできた王妃マリー・アントワネット、オスカルの従者で幼なじみの平民アンドレ、スウェーデンの伯爵フェルゼン、18世紀後半にフランスのベルサイユで生きる彼らの愛と人生を描く。原作の長い物語を劇場版にするべく4人の主要人物の物語として構成し、かつ原作の肝“ときめきポイント”で知られるエピソードをしっかり描く。ストーリーや登場人物たちの心情をオリジナルの歌で演出、ベルサイユでの豪華絢爛な貴族たちの生活、困窮してゆく街の平民たち、そしてフランス革命、という激動の時代をドラマティックに描くアニメーションである。

18世紀後半のフランス。将軍家の末娘でありながら跡取りの“息子”として育てられた男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。隣国オーストリアから14歳でルイ16世の妃になるために嫁いできた王妃マリー・アントワネット。オスカルと兄弟のように育った従者で幼なじみの平民アンドレ・グランディエ。知的で情の深いスウェーデンの伯爵ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン。ベルサイユで出会った彼らはそれぞれの思いや信念のもと、互いに影響を与えながら、激動の日々を生きてゆく。

ベルサイユのばら

革命期のフランスを生きる人々を劇的かつ耽美的に描き、累計発行部数2000万部を超える池田理代子の有名な漫画を、初めて完全新作の劇場版アニメとして製作。これまで1974年に宝塚歌劇団によって舞台化され、1979年にテレビアニメ化、同年に日仏合作により実写映画化も。原作は全10巻、2014年から40年ぶりに新エピソードの単行本4巻が発表されている。筆者は幼い頃にテレビアニメを中盤〜最終回まで観て、前半の内容が知りたくて漫画を読んですっかり夢中に。幼い子どもには訳のわからないことがたくさんあったものの、激動のフランスを舞台にしたドラマティックな大人の世界にドキドキしたことを覚えている。原作者の池田氏は漫画『ベルサイユのばら』について問われると、「作品は、読む読者が感じ取るもので、私にとってどうと聞かれると難しいのですが、世代を超えて読み継がれるということは、本当に嬉しいです」とコメント。そして劇場アニメ化について、池田氏は喜びと共にこのように語っている。「多くのファンの方たちから、新しいアニメをというご希望をよくいただくので、まさかそれが実現するなんて、驚きと嬉しさでいっぱいです」
 また吉村監督は映画化について、制作中にこのように語っている。「華麗で重厚な世界観、オスカルやアントワネット、魅力的な人物たち…。毎日素敵なばらにどっぷり浸かりながらお仕事ができ、ファンの1人としてとても幸せです。ありがとうございます。この素晴らしい作品を上手く映像化できるように、スタッフ一同頑張って制作させていただいてます」
 そして原作のファンという脚本家の金春智子は熱い思いを語る。「かつて原作を連載で読んでいた私には、オスカルさまは永遠の憧れで、『ベルサイユのばら』は何度読んでも胸が熱くなるバイブルです。なので、脚本のオファーをいただいた時には、大げさではなく本当に夢のように幸せでした! 今はただただ映画の完成、そして公開が待ち遠しいです」

貴族で将軍家の末娘でありながら跡取りの息子として育てられたオスカルの声は、近衛連隊長としてマリー・アントワネットの護衛を務めるさまを沢城みゆきが凛々しく。沢城は高い人気のある原作への思いについて、劇場版の完成前にこのように語っている。「池田理代子先生の描かれたオスカルをバイブルに、そこから田島令子さんの声の入ったオスカル、実写映画や舞台でもそれぞれに昇華されたオスカルが誕生してきました。その歴史の中へ、もう1人、吉村監督の元で新たなオスカルが生まれようとしています。(作画の方々のとんでもない仕事量!!)今はただ、その完成の日を緊張しながら静かに待っているところです」
 無邪気で世間知らずの14歳の少女から、フランス王妃となるマリー・アントワネットの声は平野綾が、国母でありながら恋愛にのめり込むひとりの女性として。原作の大ファンという平野はアントワネットの声を担当することについて「夢のよう」と話し、このように語っている。「漫画・アニメ・舞台を観続けてきた、いちファンである私にこんな日が来るなんて思ってもみませんでした。今回の演出は、かなりの挑戦だと思います。製作陣も皆様それぞれに思い入れがあって、リスペクトを持って作品作りしているのがとても伝わってきました。誰もが持っているベルばらのイメージに革命を起こす、新たな時代の幕開けとなるような作品になることを期待しております」
 ジャルジェ家に仕える、オスカルの従者で幼なじみのアンドレ・グランディエの声は豊永利行が、アントワネットと惹かれ合うスウェーデンの伯爵ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンの声は加藤和樹が、フランス衛兵隊のアラン・ド・ソワソンの声は武内駿輔が、近衛隊の副官でオスカルの部下である伯爵家の次男フローリアン・ド・ジェローデルの声は江口拓也が、パリの新聞記者ベルナール・シャトレの声は入野自由が、アントワネットの夫であるルイ16世の声は落合福嗣が、オスカルの父ジャルジェ将軍の声は銀河万丈が、アンドレの祖母でオスカルの乳母“ばあや”ことマロン・グラッセ・モンブランの声は田中真弓が、そしてナレーションは黒木瞳が、それぞれに表現している。
 また主題歌は絢香が自身の作詞・作曲による「Versailles - ベルサイユ -」を提供している。
 劇中には1カットのみで名前も名乗らずオスカルとの関わりもない町人@的な状況ながら、ロザリーも登場。原作ではオスカルに憧れて慕う健気な娘として人気のキャラクターのひとりながら、劇場版の4人を中心とする構成で登場させるのが難しかったなか、それでもどうしても、という製作陣の思いにより1シーンでのみ登場となったそうだ。

ベルサイユのばら

2024年12月8日に東京で行われた完成披露試写会イベントでは、原作者の池田氏がサプライズで登場。劇場版アニメを観た印象について、自身の生き方と重ねてこのように語った。「『ベルサイユのばら』を描いたのは私が24歳の時でした。そして今日劇場版を見せていただき、自分の想いがまず少しも変わっていないこと、自分の信念に忠実に生きる、そのように生きようと思ったことが、少しも変わっていないことに自分なりに感動しています。映画を鑑賞したのは今日で2回目ですが、最後は我が作品ながら泣けてきました」
 また同イベントにて、『ベルばら』ファンを公言する黒木は、「ナレーションという大役をいただいて、大変光栄で感謝しております」と話し、嬉しそうにこうに語った。「劇場版アニメが公開されるとのニュースをいち早く知って、『民衆の1人でもいいから参加させてほしい!』と立候補しました」。そして15歳の頃に『ベルばら』を観たことが自身の原点と話し、原作と劇場版への思いをこのように熱く語っている。「宝塚との出会いは『ベルサイユのばら』でした。物語に心奪われて、パリに行く度にベルサイユ宮殿を訪れました。『ベルサイユのばら』の魅力は史実だけではなく、その時代に生きた1人1人の登場人物にスポットを当てて人生や愛や苦悩を描いたところだと思います。この度はナレーションという形で参加させていただいたことを大変光栄に思っております。史実とフィクションを交えた物語は後世に残る愛ある作品です。何度でもご覧いただきたいと思います」

絵のタッチは原作や1979年のテレビアニメのイメージを活かし、アントワネットの目が大きく黒目に星がきらきら光る絵柄をそのまま、レトロなニュアンスを尊重したアニメーションに。映像としては映画のようなカメラワークを思わせるアニメという最新の手法となっていて、レトロ感と現代性のミックスが丁寧になされている。「ベルばら」でショックや悲しみなどを表現する目元の縦線と白目のシーンもしっかりあり、おお〜と懐かしくなる。
 アニメーション制作はテレビアニメ「呪術廻戦」「進撃の巨人」などのMAPPAが担当。キャラクターデザインを担当した岡真里子は、制作中にこのようにコメントしている。「正直あの『ベルサイユのばら』という伝説的な作品に携わる日が来るなんて今でも信じられないという気持ちでいっぱいです。毎日緊張と喜びの中で仕事をしています。とにかく全てのものが描いていて楽しいです。作品が持つ美しさと力強さをお届けできるようこだわりの強い監督とスタッフと共に引き続き全力を尽くします」
 また劇中には、ベルサイユ宮殿、オスカルが家族と暮らすジャルジェ家、フランス革命と関りのある、パリの歴史的な場所であるコンコルド広場、オスカルとアントワネットとフェルゼンが出会う仮面舞踏会の会場であるオペラ座などが登場。美術監督の中村豪希は作画のこだわりについて、「ベルサイユ宮殿は外観、内観含めまして可能な限り資料を調べ、それぞれ個性的な室内の装飾、庭園の雰囲気などを再現しております」とコメントしている。

ベルサイユのばら

物語のディテールを現時点で伝えるのは不可なので書けないものの、オスカルの精悍さもエレガントさも、アンドレのあのセリフも、アントワネットとフェルゼンのあれこれも、たくさんの原作のときめきポイントをしっかり抽出することに注力されている本作。筆者は子どもの頃に原作を読んだきりであるものの、そうそう、ここだよね、わかる! という共感が随所にあった。やはりこの劇場版は原作を読んでから観ることがおすすめだ。
 近年は、2022年から誕生50周年を記念した展覧会「誕生50周年記念 ベルサイユのばら展 −ベルばらは永遠に−」が東京ほかにて順次開催。2024年7月には宝塚公演が行われ、2025年1月には完全新作の劇場版アニメが公開に。前述の完成披露試写会イベントでは、12月18日が誕生日である池田氏をサプライズで祝福。池田氏は祝福を受けとめつつ、作品になぞらえてこのように語った。「作品誕生から50年も経ったのかと思います。オスカルではないですが、自分はどういう風に死ぬのか、真剣に考える様な歳になりまして、卑怯者としては死なないように、そして自分の死を受け入れようと改めて今日思いました」
 そして同イベントにて、沢城と吉村監督が伝えた思いとメッセージをご紹介する。
 沢城「最初に台本を読んだ時に『フランス万歳』というセリフをちゃんと言えないとこの作品は終わらないと思ってプレッシャーでしたが、先ほど池田先生がおっしゃったように、透徹した意志を持ってアフレコを進めたところ、自分として腑に落ちる『フランス万歳』に辿り着けたように感じました。期待を持って自信を持って、来年の公開を迎えることが出来ます」
 吉村監督「これから先も愛される作品の歴史のひとつになる事がとっても幸せで、この劇場版も皆さんに末永く愛していただけたら嬉しいです」

参考:「池田理代子 オフィシャルサイト

作品データ

公開 2025年1月31日より全国公開
制作年/制作国 2024年 日本
上映時間 1:53
配給 TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
原作 池田理代子
監督 吉村 愛
脚本 金春智子
キャラクターデザイン 岡 真里子
声の出演 沢城みゆき
平野 綾
豊永利行
加藤和樹
武内駿輔
江口拓也
入野自由
落合福嗣
銀河万丈
田中真弓
ナレーション 黒木 瞳
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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