野生の島のロズ

最新AIロボットが無人島でひな鳥を育てることに
多様性と共生、自然とテクノロジーの未来のこと
現代に通じるテーマが展開するアニメーション映画

  • 2025/02/17
  • イベント
  • シネマ
野生の島のロズ©2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

『シュレック』『ヒックとドラゴン』シリーズなどのドリームワークス・アニメーションによる30周年記念作品。声の出演は、『それでも夜は明ける』のルピタ・ニョンゴ、『グラディエーターII』のペドロ・パスカル、Netflixドラマ「HEARTSTOPPER ハートストッパー」のキット・コナー、『ビートルジュース ビートルジュース』のキャサリン・オハラ、『生きる LIVING』のビル・ナイ、『スター・ウォーズ』シリーズのマーク・ハミルほか。原作はアメリカの作家でイラストレーターのピーター・ブラウンによる2016年の児童文学『野生のロボット(原題:The Wild Robot)』、監督・脚本はディズニーで『リロ&スティッチ』や、ドリームワークスで『ヒックとドラゴン』などを手がけてきたクリス・サンダース。嵐により、運搬中の最新型AIロボットが無人島に漂着。生存競争の激しい大自然で動物たちがワイルドに暮らすなか、ロボットが命令を求めて彷徨っていると、小さな生き物と出会う。擬似家族、子育て、多様性と共生、生物とAIは共存できるのかといった自然とテクノロジーの未来についてなど、現代の暮らしにつながるさまざまなテーマを物語としてドラマティックに構成。子どもから大人世代まで幅広い層が楽しめるアニメーションである。

嵐の夜、ロボットの入った箱が無人島に漂着。偶然に起動ボタンが押され、最新型アシスト・ロボットROZZUM(ロッザム)7134=ロズが目覚める。未来的な都市生活に合わせてプログラミングされたロズは、人間からの命令を求めて無人島の大自然を彷徨う。島に生息する野生動物たちは生き抜くことが最優先で狂暴、組み込まれたプログラムがまったく通用しないなか、ロズは学習機能を駆使して未知の動物たちの行動や言語の学習を試みる。動物たちから“怪物”呼ばわりされながらも、試行錯誤を繰り返すうちに意思疎通できるように。そんなある日、親を亡くした雁の卵をみつけて孵化。生まれた雛鳥から「ママ!」と呼ばれたロズは、ひな鳥を育てる初の任務を開始。ひな鳥を“キラリ”と名付け、ハズレ者のキツネのチャッカリや、子だくさんのオポッサムであるピンクシッポら動物たちに知恵を借りながら子育てを始めるが……。

野生の島のロズ

ピーター・ブラウンが文と絵を手がけた原作の著書は児童文学でありながら、2016年の発表当時にニューヨーク・タイムズのベストセラーリストで1位となり、チルドレンズ・チョイス・アワードの年間最優秀イラストレーター賞や、ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞など数々の文学賞を受賞した物語だ。はぐれもの同士が支え合う擬似家族のような関係は映画や小説でよく描かれるテーマながら、やはりホロリとくるものがある。サンダース監督は原作との出会いと、ストーリーの魅力について語る。「娘の学校の宿題を通じて原作に出会い、すぐに映画化の可能性を模索した。この本で最も心を打たれたのは、一見するとシンプルな物語に秘められた奥深さだ。いわゆるヒーローもヴィランも出てこないけれど、とても深みがある。大冒険の物語も楽しいが、静かで内面的なところにこそ本当に共感できるものが存在する。この作品は、私がフィルムメーカーとして優先する要素を美しく体現していて、ドリームワークスの過去のどの作品ともまったく異なる作品だと思った」

無人島に漂着した最新型のAIロボット、ロズの声はルピタ・ニョンゴが、ロズが島で出会うキツネのチャッカリの声はペドロ・パスカルが、ロズが育てる雁のひな鳥キラリの声はキット・コナーが、子だくさんの肝っ玉かあさんオポッサムのピンクシッポの声はキャサリン・オハラが、島で最年長の雁で渡り鳥のリーダーの声はビル・ナイが、ロズを回収するために島へとやってきたロボット、ヴォントラの声はステファニー・シュウが、我が道をゆくビーバーのパドラーの声はマット・ベリーが、切れ者で厳格なオスのワシ、サンダーボルトの声はヴィング・レイムスが、島の野生動物界の頂点に君臨するクマ、ソーンの声はマーク・ハミルが、それぞれに表現している。
 日本語吹き替え版では綾瀬はるか、柄本佑、鈴木福、いとうまい子といった俳優たちをはじめ、千葉繁、山本高広、田中美央、種崎敦美ほか声優たちが参加している。そして雁の声として、作品の宣伝アンバサダーであるお笑いコンビのハリセンボンも。

野生の島のロズ

この映画では最新AI搭載ロボットのビジュアルを手描きのような質感で描写しているのが特徴。島の雄大な大自然と共に、なつかしい絵本を思い出すタッチのぬくもりを感じさせる動物たちも多数登場する。サンダース監督は自身が影響を受けた人物のひとりがスタジオジブリの宮崎駿監督であると話し、以前に『ヒックとドラゴン』のプロモーションで来日した際に宮崎監督と会った時のことについて、「彼のアトリエで過ごすことできて、素晴らしい経験をさせてもらいました」と笑顔でコメント。サンダース監督は宮崎作品からの影響について、2025年1月に来日し登壇した日本語吹替版完成披露イベントにてこのように語った。「自分自身もそうですし、一緒に仕事をする仲間みんな同じ答えだと思います。宮崎駿監督、その中でも特に『となりのトトロ』は常にみんなの一番であると思います。本作との関連で言うと、森が出てきますが、宮崎監督が描く森には神秘性、没入感、奥行きがあり、私たちもそこにインスピレーションを受けて森を描きましたが、それをかなえるためにドリームワークス・アニメーションのやり方をすべて変えなくてはいけませんでした。キャラクターを含めて、“手描き感”を感じていただける作品になっています。愛してやまない宮崎作品の背景、キャラクターの手描き感をこの作品でも感じてもらえたら嬉しいです」
 劇中には47種の動物たちが登場。キャラクターを担当するクリエイティブ・チームは、制作のために博物館に赴き、多様な動物の体の解剖学や、動物たちの映像を研究。モーション・キャプチャーのセッションなども取り入れてリアルな動きを実現した。映像としては、合計28,710羽の雁たちが海を渡るシーンや、80,000頭のカラフルな蝶が舞う、ロズが森を彷徨うシーンなども注目だ。
 サンダース監督は美しい映像づくりの取り組み、影響を受けた作品や芸術についてさらに具体的に語る。「大自然に迷い込んでしまうハイテクロボットの物語なので、自然の表現は可能な限り有機的なものにする必要があった。CGアニメーションの技術は、エキサイティングなカメラの動きを可能にしたが、その代償として手描きキャラクターの温かみが失われた。だから絵画的なスタイルを選び、徹底的なリアリズムよりも印象派的なディテールを強調し、深みのある絵を描くことに焦点を当てた。本作の背景は、人の手によって描かれている。『バンビ』のようなディズニー古典の動物描写から、宮崎駿監督による『となりのトトロ』の独特な雰囲気の森、モネの絵画に至るまで、インスピレーションは様々なものから得た。『長ぐつをはいたネコと9つの命』や『バッドガイズ』でのドリームワークスの技術的な進歩も活用して、 私たちは全くユニークなスタイルのアニメーション映画を作り上げた。クロード・モネが宮崎の森に生命を吹き込んだところを想像してみてほしい」

野生の島のロズ

また劇中の音楽は、自身が監督・製作を手がけた短編『ラスト・リペア・ショップ』がアカデミー賞にて短編ドキュメンタリー賞を受賞した作曲家クリス・バワーズが担当。グラミー賞受賞経験のあるシンガーソングライター、マレン・モリスの書下ろし曲「Kiss the Sky」と「Even When I'm Not」も注目されている。

そして2025年2月9日(日本時間)に発表された第52回アニー賞の長編アニメ部門では、長編作品賞(最優秀作品賞)、監督賞、キャラクター・アニメーション賞、キャラクター・デザイン賞、声優賞(ルピタ)、音楽賞(クリス・バワーズ)、美術賞、編集賞、FX賞、最多の9賞を受賞。2025年3月に授賞式のある第82回ゴールデングローブ賞ではアニメ映画賞、作曲賞(クリス)、主題歌賞(「Kiss The Sky」)、シネマティック&ボックスオフィス・アチーブメント賞(興行成績賞)の4部門にノミネート、第97回アカデミー賞では長編アニメ映画賞、作曲賞(クリス)、音響賞の3部門にノミネート、と主要な賞で注目されている。
 野生の島に流れ着いたよそ者であるAIロボットのロズと、野生の動物たちと大自然の物語。異種のものたちが支え合うこと、自然と共生して生き抜くこと、子どもが成長し巣立っていくこと。その過程や経緯にあるさまざまな感情をロボットと動物たちのストーリーでユニークに表現しているこの映画について、サンダース監督は来日イベントにて、「この映画はドリームワークスと作り上げましたが、スタッフみんなが生涯でNo.1だと感じている作品です」とコメント。最後に、監督が日本語吹替版完成披露イベントにて観客に伝えたメッセージをご紹介する。「ドリームワークスのスタッフと共に精魂を込めて作った作品であり、私のキャリアの中でも、みなさんにお見せできることが、こんなにも嬉しい作品は初めてです。どうぞ楽しみにご覧になってください!」

作品データ

公開 2025年2月7日より全国公開
制作年/制作国 2024年 アメリカ
上映時間 1:42
配給 東宝東和、ギャガ
原題 THE WILD ROBOT
監督・脚本 クリス・サンダース
原作 ピーター・ブラウン『野生のロボット』(福音館書店刊)
声の出演 ルピタ・ニョンゴ
ペドロ・パスカル
キャサリン・オハラ
ビル・ナイ
キット・コナー
ステファニー・シュウ
マット・ベリー
ヴィング・レイムス
マーク・ハミル
日本語吹き替え版 声の出演 綾瀬はるか
柄本 佑
鈴木 福
いとうまい子
千葉 繁
種ア敦美
山本高広
滝 知史
田中美央
濱ア 司
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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