人気ミュージカルを実力派のメンバーで映画化
オズの秘密を知った対極の魔女2人は運命を分つ
朗らかな楽曲で差別や正義を問うミュージカル
2003年の初演から20年以上舞台で愛され続けているミュージカルを、充実のスタッフとキャストで映画化。出演は、エミー賞、グラミー賞、トニー賞の受賞経験のある『ハリエット』のシンシア・エリヴォ、グラミー賞受賞ミュージシャンのアリアナ・グランデ、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のミシェル・ヨー、ドラマ「ブリジャートン家」のジョナサン・ベイリー、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』のジェフ・ゴールドブラムほか実力派が顔を揃える。監督は『クレイジー・リッチ!』『イン・ザ・ハイツ』のジョン・M・チュウ、舞台「ウィキッド」を初演から手がけてきたスタッフ、製作のマーク・プラットとデイヴィッド・ストーン、脚本のウィニー・ホルツマン、そして作詞作曲のスティーヴン・シュワルツは製作総指揮も兼ねて参加している。『オズの魔法使い』で少女ドロシーがオズの国に迷い込むよりずっと前のこと。この国で最も嫌われた“悪い魔女”のエルファバと、最も愛された“善い魔女”グリンダ、2人の学生時代の出会いと友情、オズの国の秘密にまつわる出来事を描く。大嫌いから始まる友情、マイノリティであること、孤立と孤独、そのなかでも自分の力を見つけてコントロールし世界に役立てていくこと。舞台のテーマやストーリーを尊重し、さらにドラマティックに迫力ある美しいビジュアル、パワフルな歌とダンスで惹きつける、感動的なミュージカル作品である。
魔法と幻想の国オズ。“悪い魔女”エルファバが死んだ―人々にそう伝える“善い魔女”グリンダ。かつて2人の魔女はシズ大学で出会い、友情を育み学生時代を共に過ごしたのだ。優しく聡明でありながら家族や周囲から疎まれ孤独に育ったエルファバと、裕福な家庭で愛されて育ち誰よりも特別であることを望むみんなの人気者グリンダ、対極のふたりは大学の寮で偶然ルームメイトに。見た目も性格も魔法の才能もまるで異なるふたりは反発し合うが、互いの本当の姿を知るにつれかけがえのない友情を築いていく。ある日、誰もが憧れる偉大なオズの魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、グリンダとともに彼が司るエメラルドシティへ。そこでオズに隠されていた“ある秘密”は、世界を、そしてふたりの運命を永遠に変えてしまう。
後の“悪い魔女”エルファバと、後の“善い魔女”グリンダの学生時代の出会いと友情、世界の秘密を知り運命を違えるまでを描く映画版の第1作。ポップで華やかなサウンドと歌、生き生きとしたダンス、カラフルでダイナミックな映像、そして差別や平等、善悪や正義について問いかけるテーマをドラマとして魅力的に描き、とても楽しめる作品だ。原作は作家ライマン・フランク・ボームによる1900年の『オズの魔法使い』の世界観を題材に、まったく新しい小説として作家グレゴリー・マグワイアが1995年に発表した『ウィキッド』。そして2003年に『ウィキッド』を原作にミュージカルとして内容を構成、クリスティン・チェノウェスとイディナ・メンゼル(初代ウィキッド役、『アナと雪の女王』のエルサ役「Let It Go」の歌唱でも有名)主演で戯曲化され、今回の映画化では舞台の製作陣が企画の中心となり丁寧に映像化がなされている。舞台版は全世界で大ヒットしていることから映画化の話がたびたびあったなか、ようやく実現。舞台でも映画でも製作をつとめるマーク・プラットは、映画ではより詳しい物語の内容や映像のディテールを追求できると語る。「舞台版ではいろんなアイデアやテーマや筋書きを削らざるを得ません。上演時間が限られているので、ストーリーを縮小したり、観客の想像力に委ねるしかありませんでした。それを今回、映画では実現できます」
また原作から物語を脚色して戯曲を執筆したウィニー・ホルツマンは、ストーリーのテーマについて語る。「出会いは人生を変えてくれますから。それから、これは若い女性ふたりが、自分たちで世の中をよくしたいのだと気づく物語でもあります。その気づきが、彼女たちを思わぬところへ導きます」
そして映画の監督に起用されたジョン・M・チュウは最初の公演を観に行っていたほど舞台版のファンであり、監督したい作品を聞かれるたびに「迷わず『ウィキッド』と答えていた」とのこと。チュウ監督は、「舞台版を観た人たちにも、想像すらしなかった形で同じ物語を体験してほしい」と話し、映画ファンへの思いをこのように語っている。「これまでにない体験を観客に届けたい。僕と同じ気持ちを映画館で味わって欲しい。笑ったり歌ったりして感じられる。自分は変われたって」
後に“悪い魔女(ウィキッド)”と呼ばれるエルファバ役はシンシア・エリヴォが、情感豊かに熱演。孤独や苦悩や悲しみを切々と訴え、自身の力を解き放つパワフルさを朗々と歌い上げるシンシアの表現力は感動的だ。舞台でイディナをはじめ数々の実力者たちが演じてきたエルファバ役の映画でのキャスティングは、製作陣が非常にこだわったなか、作詞作曲担当のスティーヴン・シュワルツは「まるで最高の楽器から最大限の魅力を引き出す方法を心得た奏者のよう。凄味も深みも溢れ出ている」、原作小説の著者グレゴリー・マグワイアは「クラッと来た。あのパワーに、複雑な感情。まさに究極の演技力」と絶賛。シンシア本人はエルファバに深く共感し、「人と違う存在でいる気持ちが私には痛いほど分かるの」と語っている。
後の“善い魔女”グリンダ役はアリアナ・グランデ役が、華やかかつユーモラスに。いわゆるカースト上位の雰囲気を含みつつ、育ちが良く気前のいい憎めない感じ、わざとらしく髪を振る素敵さの演出というやりすぎのかっこ悪さ、ステレオタイプかと思いきやそれだけじゃない深みや人情もある、といったコメディエンヌとしての味わいが面白い。アリアナは子どもの頃からグリンダに憧れていて、作品とキャラクターに強い思い入れがあるという。彼女は世界的な人気ミュージシャンであるものの、オーディションが行われると知ってからは歌と芝居の先生に師事して特訓を受け、改めてクラシックやオペラの歌い方ができるように声帯を鍛え直したとも。アリアナは語る。「この作品は、真実や人間らしさや誤解されながら生きることの面倒臭さを伝えるために戦っているし、人は善であると同時に悪にもなり得ることを見せてくれます。私たちみんなの中にも少しずつ、この女性たちふたりがいるのだと気づいていただけるはずです」
2人が学生として過ごすシズ大学で出会う、一見すると軽薄で空虚に見えるウィンキー国のモテ王子フィエロ役はジョナサン・ベイリーが(「俺は軽薄で空虚だよ」と自他共に認める会話が面白い)、自立を望むエルファバの妹ネッサローズ役はマリッサ・ボーディが、シズ大学の魔法学の権威マダム・モリブル役はミシェル・ヨーが、エメラルドシティの宮殿からオズ全土を統治する指導者・オズの魔法使い役はジェフ・ゴールドブラムが、ひそかにグリンダに思いを寄せる素朴な学生ボック役はイーサン・スレイターが、グリンダの取り巻きでゴシップ好きの皮肉屋ファニー役はボーウェン・ヤンが、同じく取り巻きでファニーの相棒シェンシェン役はブロンウィン・ジェームズが、ヤギの姿のディラモンド教授の声はピーター・ディンクレイジが、映画オリジナルのキャラクターであるシズ大学の寮母ミス・コドル役はキアラ・セトルが、それぞれに演じている。
エルファバの妹ネッサローズ役のマリッサ・ボーディは実生活で車椅子を使っている俳優であり、自身が車椅子を使うキャラクターを演じることに意義を感じているという。またヤギのディラモンド教授役のピーター・ディンクレイジは、「自分の強みを見出すエルファバに僕も共感する」と話し、この映画のテーマについてこのように語っている。「やっぱり、誰もがどこかで少しずつ疎外感を味わっているからこそ、この物語が心に響くのではないでしょうか。孤独感の中にも自立心や強みを見出すというのがテーマですよね。それになによりも、優しさについて教えてくれます。そこが一番大事です」
チュウ監督は出演者たちについて楽しそうに語る。「完璧なキャストにするために、みんなでとことん時間をかけました。求めていたのは歌も演技もできて、ちょっぴり“Ozian”(オズの人々)な俳優たちです。だって登場するキャラクターたちはどこか奇妙だし、少し左寄りな感じでしょ。これは型にはまらないキャラクターを描いた映画です。だからあえて現場も型にはまらないキャストで固めました」
日本語吹き替え版では、高畑充希、清水美依紗、海宝直人、田村芽実、入野自由、kemio、塩田朋子が参加している。
映画では舞台の歌もキャラクターもシーンもまったくカットすることなくすべてを生かし、さらに世界観を深めることを目標に製作。舞台版の作詞作曲を手がけて映画では製作総指揮も兼ねるスティーヴン・シュワルツは、戯曲版と映画の脚本を執筆したホルツマンと共に映画化について話してきたなか、改めてこの物語のテーマについてこのように語っている。「どのキャラクターも、世の中に対して秘密を抱えています。ときには、自分でも気づかない秘密です。それがこのミュージカルのテーマでもあります。つまり、表面上は見えない何かをさらけ出すことなのです」
楽曲はユニークな世界観が展開。エルファバとグリンダが初対面でまったくそりが合わずに何かと張り合っていがみ合う曲「ワット・イズ・ディス・フィーリング?」、グリンダがエルファバに人気者へ変身する方法を指南する「ポピュラー」、ホウキに乗って窓を突き破り空高く飛び立つエルファバが力強く思いと信念を歌い上げる「ディファイング・グラヴィティ」など。またシズの大学図書館で王子フィエロが「ダンシング・スルー・ライフ」を歌うシーンは、巨大な本棚がぐるぐると回転するなかパフォーマーたちが次々と移動しながら歌い踊るという難易度の高い演出が特徴。ジョナサンをはじめこのシーンの出演者たちはこのシーンのためだけに5ヶ月かけて振付やスタントや安全対策など入念な稽古とリハーサルを経て作り上げた注目のシーンとなっている。チュウ監督は楽曲の魅力と映画化について語る。「歌詞を読むと、とても力強い。だけどステージ上でフラッシュライトを浴びて歌うと、とても親密にも聞こえて、映画にぴったりだ。映画というのは、作品を目の前で感じることもできるし、何百メートルもの壮大な風景だって体感できる。そのダイナミックさこそオズに必要なものだし、特に『ウィキッド』は映画化されるべき作品だったんだ」
この1作目『ウィキッド ふたりの魔女』に次いで、続編の2作目『Wicked Part Two(原題)』は2025年11月21日に世界公開予定。エルファバが“悪い魔女”になるまでが描かれた第1作に続く後編では、グリンダが“善い魔女”になる経緯が描かれるという。第2作も楽しみだ。
第1作は数々の映画賞で注目され、米国映画批評会議主催の第96回ナショナル・ボード・オブ・レビューにて作品賞と監督賞を、主演のシンシアとアリアナはスポットライト・アワードを受賞。第97回アカデミー賞では作品賞など10部門でノミネートされ、衣装デザイン賞、美術賞の2部門で受賞となった。2025年2月に来日したチュウ監督は映画について、「オズは誰もが知る魔法の国だ。美しい世界を実際に体感することができる。最高だよね」と嬉しそうにコメント。また監督はこの映画の魅力について、ジャパンプレミアイベントにてこのように語った。「まったく正反対であるふたりがお互いの違いを乗り越えて友情を結ぶことは世界中の人が望んでいることであり、こういったことが可能なのだということをミュージカルに乗せて表現している素晴らしい映画なんだ」
シンシアは劇中で動物たちが迫害されることをあげ、現代社会にも通じるエルファバの思いを語る。「動物を助けるために思いやりの輪が広がっていく。人に頼らず自分の力を解放する。その力で世界を良くしようとするの」
最後に、子どもの頃からグリンダに憧れて『ウィキッド』のストーリーに強い思い入れをもつアリアナが熱く語る、この物語のテーマをご紹介する。「きっと誰もがグリンダとエルファバに、何らかの形で自分を投影できると思います。だって彼女たちが象徴するのは、複雑さに、人間らしさに、ゴージャスなニュアンスに、愛に、隔たりでしょ。それから、愛し、反発し、自分を見出し、正しいことをしていくうえでのややこしさ。そういうものすべての大元に愛があります。人生って深い、そう思わせてくれるのがこの物語です。誤解されながら生きることの面倒臭さや、善と悪が自分の中で共存している感覚や、違いを受け入れること。これは、そういうものが詰まった作品です」
公開 | 2025年3月7日より全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2024年 アメリカ |
上映時間 | 2:40 |
配給 | 東宝東和 |
原題 | Wicked |
監督 | ジョン・M・チュウ |
製作 | マーク・プラット |
脚本 | ウィニー・ホルツマン |
原作 | ミュージカル劇「ウィキッド」 作詞・作曲/スティーヴン・シュワルツ 脚本/ウィニー・ホルツマン |
出演 | シンシア・エリヴォ アリアナ・グランデ ジョナサン・ベイリー イーサン・スレイター ボーウェン・ヤン ピーター・ディンクレイジ ミシェル・ヨー ジェフ・ゴールドブラム |
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