ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今

20年以上にわたるシリーズの登場人物が大集合
出産し結婚したブリジットのその後を描く
新たなスタートの局面で奮闘する彼女の完結編

  • 2025/04/22
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ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今©2025Universal Pictures

2001年の第1作から24年、あのブリジットの物語が4作目にしてとうとう完結。主演は製作総指揮も務めるレネー・ゼルウィガー、共演は『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のヒュー・グラント、『キングスマン』のコリン・ファース、『それでも夜は明ける』のキウェテル・イジョフォー、Netflixドラマ「One Day/ワン・デイ」のレオ・ウッドールほかイギリスの人気俳優を中心に。監督は『To Leslie トゥ・レスリー』のマイケル・モリス、脚本と製作総指揮は原作者のヘレン・フィールディングが手がける。2016年の前作でブリジットは妊娠・出産、最愛のマークと結婚して幸せに暮らしていたものの、マークが4年前に突然他界。2人の子どものシングルマザーとして過ごすなか仕事に復帰し……。現代社会のあるあるネタ、新しい出会いに失敗談、恋のこと、家族のこと。体当たりのコメディにハーレクイン的恋愛ドラマ、お約束の展開を盛り込み、現代を迷走しながらも突き進むブリジットの「今」のエピソードである。

息子ビリーを出産後、妹のメイベルも生まれ、ブリジットは一男一女の母として苦手な家事をなんとかこなしながら日々奮闘している。愛する夫・弁護士のマークは4年前にスーダンの人道支援活動中に他界。突然のことで悲しくて寂しくて立ち直れない日々が続いていたなか、親友たちや元彼・ダニエルらに支えられ、仕事に復帰。そして公園で出会った29歳の爽やかな青年ロクスターとアプリで繋がり、意気投合。子どもたちが通う学校の厳しい理科教師ミスター・ウォーラカーには、子どもたちへの真摯な優しさがあるとわかり、次第にブリジットとの距離が縮まってゆく。

レネー・ゼルウィガー,ほか

子どもが産まれ結婚した9年前の前作『プリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』で3部作完結と思いきや、まさかの4作目にして遂に完結編。「まだやるの?」と思う向きは筆者も含め多いと思うが、第1作からぜんぶ観てきたことから、映画を観ながらどこか同窓会を眺めている気分になるような、音楽で懐メロを聴くような感覚が味わえる内容となっている。
 ブリジット・ジョーンズは、イギリスの作家ヘレン・フィールディングが執筆するイギリスの新聞の連載コラムから生まれたキャラクター。ジェーン・オースティンの名作『高慢と偏見』から影響を受けながら、現代的なあるあるネタをユーモアたっぷりに取り入れ、ハーレクイン・ロマンスの王道スタイルも活かしつつ、ブリジットが毎回仕事や恋愛で失敗を繰り返し大コケして、ズタボロになりながらも彼女らしく進んでいく姿を観客が見守る、独特なロマンティック・コメディだ。ロマコメは観客が主人公に感情移入してうっとりする、というのがひとつのパターンながら、このシリーズはブリジットになりたいとはさほど思えず、観客が応援し見守るスタンスになるところもユニークな特徴と言える。ところで、25年間同じキャラクターを人気俳優が演じることは、特に女性の場合それほど多くはない。歳を重ねて容姿が変わってゆくこと、さらにこのようなコメディだと、俳優として成長し演技派として成熟したなか、波乱含みのキャラクターとして体を張ったコメディの演技をしたいとは思えないのもわかる。しかしレネーは24年間で2度のオスカー受賞を経た後に、この完結編で再びブリジットとして出演し、原作者ヘレン・フィールディングと共に製作総指揮も務めていることに、レネーの俳優や人としての懐の広さが感じられてなんとも味わい深い。レネーはこのシリーズに再び出演を決めた理由について、原作者フィールディングがこの時期の物語に込めた思いも大きいと語る。「ヘレンは小説『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ全巻のなかでも、最も個人的に思い入れがあると述べているわ。子どもとの時間や自分の生き方など、彼女の人生において最も大切で内省的な時期を描いている」
 ワーキング・タイトル・フィルムズのプロデューサーたちは、シリーズ全作の製作を担当。そのひとりアメリア・グレインジャーは、原作者のフィールディングとレネーがブリジットの本質を見つめて尽力してきたからこそ、これまでのブリジットの波乱の人生すべてに実在感と共感があるのだと語る。そして今回がシリーズ初参加となるモリス監督は、ブリジットの両親を演じるベテランをはじめ、20年以上同じ役を演じてきた俳優たちと共に仕事をする醍醐味を語る。「このようなシリーズものに後から参加するということは、何年もの歴史を共有した人たちの中に飛び込むということなんだ。レネー、ジム・ブロードベント、ジェマ・ジョーンズなど、20年以上もそれらの役を演じてきた素晴らしい俳優たちと仕事をするということ。まるで本物の家族の一員になったような感覚だったよ」

レネー・ゼルウィガー,キウェテル・イジョフォー,ほか

家族や友人たちに支えられ2人の子育て中のシングルマザーとなったブリジット役はレネーが、最愛の夫の死を乗り越えていくなか、相変わらず日記や心のなかで自問自答しながらじりじりと歩んでいく姿を明るく好演。レネーはドジで愛嬌のある、愛されキャラのブリジットについて、「キャラクター相手に奇妙な言い方だけど旧友と再会した気分よ。1作目から25年、ブリジットの環境もずいぶん変わったわ。架空のキャラクターだけど、観客と同じペースで人生を歩んでいるの」とコメント。このユニークな感覚についてレネーは説明する。「フィクションである主人公の人生と、彼女を愛し共感する人たちの人生が同じペースで進むなんてとても面白い。観ている人たちは、ブリジットの人生に自分自身が映し出されているように感じるの。そしてブリジットと再会することで、彼女がどのように成長し、人生がどのように変化し、どんなふうに目の前の困難に立ち向かっているかを観たいの。それは彼女と共に成長してきた誰もが感じていることだと思うわ」
 モリス監督はレネーによるブリジットの魅力について語る。「レネーはブリジットを通じて圧倒的な楽観さとボジティブさを表現した。ブリジットを見ていると、彼女が周りの人をとても大切に思っていて、彼らにとってすべてがうまくいってほしいと願っているのがわかる。レネーはそれを体現しているんだ」
 ブリジットが新たに出会う29歳の年下男子ロクスター役はレオ・ウッドールが、息子の学校の厳格な理科教師ウォーラカー先生役はキウェテル・イジョフォーが、ブリジット宅の家事を完璧にサポートする美人で有能すぎるベビーシッターのクロエ役はニコ・パーカーが、ブリジットが仕事復帰後に担当するTV番組の司会者のひとりであるタリサ役はジョゼッテ・シモンが、ブリジットのシリーズ作品のおなじみ、ブリジットがシングル時代からの同僚のミランダ役はサラ・ソルマーニが、ブリジットが妊娠して以来のかかりつけ医で、さまざまなことに的確なアドバイスをくれるローリングス先生役はエマ・トンプソンが、そして他界したもののブリジットや子どもたちを見守っている夫のマーク役はコリン・ファースが、それぞれに演じている。
 そしてブリジットの元上司で元彼、生涯軽薄な遊び人を貫いているダニエル・クリーヴァー役のヒュー・グラントは、今ではブリジットの良き友として。ヒューは「クリーヴァーを演じるのは楽しい」と話し、「彼は現代の社会問題なんて気にも留めない化石のような人物で、かえってそれが新鮮なんだ。素行は良くないけどね」とコメント。レネーはヒューと1作目から20年以上に渡り同じキャラクターとして共に演じてきたことについて、「本当に素晴らしくて特別なこと」とコメントしている。

撮影は、ロンドンからバックニー・ウィマクやグランド・ユニオン運河、ハムステッド・ヒースの街や緑地、そしてレイク・ディストリクトの丘陵や湖など風光明媚な場所などで行われた。ブリジットと子どもたちの暮らしには、昔ながらのバブや趣のあるカフェ、アンティーク・ショップなどがある、ハムステッドの街の歴史ある小道フラスク・ウォークも登場。17世紀創業のパブ「The Flask」も舞台となっている。またブリジットと知り合う青年ロクスターが犬を助けるシーンのガーデンパーティは、リッチモンドにあるピーターシャム・ハウスの個人庭園にて撮影。ロクスターは広大な自然公園「ハムステッド・ヒース」の公園管理人であり、北ロンドンの街の雰囲気がさまざまに映されている。ブリジットたちが暮らす北ロンドンは、原作者フィールディングがしばらく住んでいた場所であり、モリス監督の地元でもあるとのこと。監督はこのエリアの特長についてこのように話している。「北ロンドンはファミリー向けのイメージがある。ずっと昔からハムステッド・ヒースがあり、あの地域ならではの独特な雰囲気があるんだ」

レネー・ゼルウィガー,レオ・ウッドール,ほか

最愛の夫の死に深い悲しみを抱きながらも、人生を再び進めていこうと奮闘するブリジットの「今」を描く物語。新しいキャストたちの参加もあるものの、多くは20年以上に渡って昔ながらの同じメンバーたちが、わいわいしているなごやかさが印象的だ。予定調和の会話や展開を安心して眺めるような、時代劇を観ているふうの感触もある。とはいえ、高齢になろうとも遊び人を貫くダニエルが死を意識するようになるなど、そのあたりは現実味がありなかなかせつない。20〜30代を経て、中年〜シニアとなったキャラクターたちの人生や恋愛の悲喜交々は、いまドラマ「続・続・最後から二番目の恋」でも描かれている。自分も20代の頃はこういったドラマにまったく興味がなかったので、若い世代が興味ないだろうことはよくわかる。そして今となっては、自分もこの世代のドラマの楽しみ方がわかる年齢になったのだなとしみじみ思う。ブリジットのシリーズは今回が完結編といわれているが、『あぶない刑事』シリーズのように終わりといってからまた続編、ということもあるかもしれないなと。リタイア後のシニアのブリジットと成長した子どもたち、変わらない元気な友人たち、見送った人たち、普段の生活のなかの「生と死」を意識する内容も、それはそれでいいかもしれないと個人的に考えたりも。
 レネーはアメリカ人でありながら英国人女性のブリジットとして全世界的に認められ愛されてきた。レネーはこのシリーズが伝えるポジティブなメッセージについて、このように語っている。「面白いのは、“ブリジット・ジョーンズ”シリーズのみんなとの映画製作を中心として、私自身の数十年の人生を時系列で振り返ることができること。真の友人との再会はいつも心にグッとくる。別れる時はなおさらね。ブリジットというキャラクターのファンは、彼女と私の間に強い相関性を見出しているけど、その解釈は人それぞれなの。私たちがブリジットを映画で描く以前から、彼女はすでにみんなに愛されていた。ブリジットは私たちに完璧である必要はないと教えてくれる。ありのままの自分でも恋愛や仕事で成功することができるし、幸せになれる。完璧でなくてもいいの」
 モリス監督は、シリーズの特徴や魅力といったレガシーを踏まえつつ、マークと死別したブリジットの悲しみと希望、喪失感と笑いが思いがけないかたちでリンクする人生の新たな局面について、どのようにリアリティのある描写をするか思案したという。そしてこの映画に込めた思いやテーマについて、監督はこのように語っている。「極めて『ブリジット・ジョーンズの日記』らしい作品である一方で、シリーズ前作では無縁だった問題や感情に向き合う映画を作るにはどうすればよいのか。ブリジット、あるいは私たちが、想像を絶するような辛いことをどうやって乗り越えるのかという疑問に深く切り込み熟考を重ねた。そして”悲しみのコメディ”を作るという考えに至ったんだ。本作は、すべての人々が避けては通れない経験に敬意を払いたいと願う映画だ」

作品データ

公開 2025年4月11日より全国劇場公開
制作年/制作国 2025年 イギリス・アメリカ
上映時間 2:05
配給 東宝東和
原題 Bridget Jones : Mad About The Boy
監督 マイケル・モリス
原作 ヘレン・フィールディング著『Bridget Jones : Mad About The Boy』
製作総指揮 ヘレン・フィールディング
レネー・ゼルウィガー
出演 レネー・ゼルウィガー
キウェテル・イジョフォー
レオ・ウッドール
コリン・ファース
ヒュー・グラント
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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