イタリア取材時、露伴は呪いの怪異を聞く
水上都市ヴェネツィアの美しい映像と共に
絶望に差し込む光をスタイリッシュに描く
漫画家・荒木飛呂彦氏の人気コミック『岸辺露伴は動かない』の映画化第2弾が完成。出演は、ドラマや前作の映画から引き続き『スパイの妻』の高橋一生、NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」の飯豊まりえ、そして新たなキャストとして、『ラストマイル』の井浦新、『ホリック xxxHOLiC』の玉城ティナ、『空母いぶき』の戸次重幸、『罪と悪』の大東験介ほか。監督は『ショウタイムセブン』の渡辺一貫、脚本はアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの小林靖子、音楽は菊地成孔/新音楽制作工房、人物デザイン監修・衣装デザインは植伊佐夫、ドラマシリーズ・映画版の制作メンバーが手がける。相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むこともできる特殊能力“ヘブンズ・ドアー”を備えた人気マンガ家・岸辺露伴は、取材旅行でイタリアのヴェネツィアへ。そこで見知らぬ男から奇妙で恐ろしい出来事を聞き……。“幸せの絶頂の時にやってくる「絶望」”とは。ファンからの人気も高い“原点”のストーリーである短編「懺悔室」に映画オリジナルのエピソードを加え、時空を超えて続く呪いが引き起こすサスペンスと、どう生きるかを自身で選択する人たちの姿を描く。日本映画としては初となるヴェネツィアでのオールロケにより、ドラマティックな映像が美しい。怪奇でありミステリーであり恋愛ドラマでもあり、岸辺露伴の世界観で光と影を強いコントラストで映す物語である。
相手を本にして生い立ちや秘密を読み、指示を書き込むこともできる特殊能力“ヘブンズ・ドアー”を備えた人気マンガ家・岸辺露伴は、取材旅行でイタリアのヴェネツィアを来訪。ある教会で懺悔室を取材するなか、自ら懺悔室に入り神父のいるべき場所に座してみると、ひとりの仮面をつけた男が告白のために現れる。「体験はリアリティを作品に生む」という信念と好奇心に駆られた露伴は、そのままフードを目深に被って神父になりすまし、男の告白に耳を傾ける。その男は25年前の奇妙で恐ろしい出来事を語り始め……。
2020年にスタートしたドラマシリーズ、2023年の映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』と、同じキャストと製作陣を中心とする映像化であり、岸辺露伴シリーズの映画化第2弾。荒木飛呂彦氏の人気作品を原作に、独特の怪異や幻想が行き交うゴシックでスタイリッシュな世界観と、個性的な登場人物たちが織りなすユニークなドラマとなっている。原作の“原点”と言われ、ファンの間でも人気の高いエピソードである「懺悔室」の映画化について、高橋はこのように語っている。「ここにきて、ようやく原作の原点に手が届きました。この幸運も生身の人間だからこそ感じられることでしょうか、これまでご一緒してきたスタッフに加え、イタリアの陽気で真撃な素晴らしいスタッフが加わり、また新たな岸辺露伴の世界を作れたのではないかと思います」
また筆者が高橋さんを取材した記事「CREA WEB」の2025年5月23日付「岸辺露伴を演じて6年、高橋一生がいま感じているのは幸せか、絶望か?『最初から、この作品はどこか“バグ”のような存在でした』」にて、映画では原作の“その先”が描かれていることについて、このように語っている。「もともと荒木先生が書かれているものからその先に行った内容であったとしても、これまでに露伴を何度も演じてきた経験から、露伴ならこうするだろうと調律する感覚があります。また完成作を観た集英社の編集担当の方々が『まったく違和感がなかった』と言ってくれた時は、やっぱり嬉しかったです。<中略>僕たちも違和感はまったくなかったですし、(小林)靖子さんの脚本力と、これまで積み重ねてきたチームとしての自信が背景にあったので、何の不安もなかったです」
脚本家の小林靖子は今回の映画化について、喜びと共にこのようにコメントしている。「原作『懺悔室』は、初めて岸辺露伴をメインにして発表された作品です。ドラマはもう5年目ですが、このファーストエピソードに辿り着くには必要な時間だったと思います。これも皆様の応援あってこそと感謝いたします」
人の心や記憶を本にして読み、さらに命令を書き込むこともできる特殊な能力“ヘブンズ・ドアー”を持つ漫画家・岸辺露伴役は高橋一生が、好奇心に溢れ、リアリティを重んじる表現者として。高橋は露伴役を2020年から演じ続けていることについて、このように語っている。「20年に岸辺露伴を演じさせていただいてから、これまでテレビドラマシリーズは4シーズン、前回の映画も入れて全10話、5年目になります。<中略>これだけ長い時間を一つの役と生きられることは、俳優として貴重な体験ですし、幸運に感じています」
露伴の担当編集者である家京香役は飯豊まりえが、明るく華やかに。飯豊と高橋は露伴シリーズの共演を機に2024年5月に結婚、「一つの作品に参加させて頂いた事がきっかけとなり、現場を共にする中で、互いに縁の深まりを感じておりました。約一年の交際を経て、作品に関わる皆様からも祝福を受け、この日を迎えることが出来ました事を、ご報告させて頂きます」と連名で発表したことは記憶に新しい。劇中でも露伴のバディ役を務め、公私共にパートナーとして充実していることが伝わってくる。
懺悔室で露伴を神父と思い込み恐ろしい告白をする謎の男・田宮役は井浦新が、ヴェネツィアの老舗の仮面職人マリア役は玉城ティナが、田宮が告白する恐ろしい話の鍵となる人物・浮浪者のソトバ役は戸次重幸が、ソトバを死なせてしまったことで、不気味なほどの“幸運”に襲われる“呪い”をかけられた水尾役は大東験介が、それぞれに演じている。
渡辺監督は、撮影現場ヴェネツィアでの出演者たちの尽力について、2025年5月12日に行われたジャパンプレミアにて、感謝と共にこのように熱く語った。「本当に夢のような時間で、自分が思っている10倍、20倍のレスポンスが皆さんの芝居から返って来て、人の演じる力の凄さを感じることが出来ました。人間ドラマとしての完成度も楽しんでご覧いただければ幸いです」
この映画は邦画として初めて、街全体が世界遺産に登録されているイタリア・ヴェネツィアにてオールロケを実施。サン・マルコ広場を始め、サン・ロッコ教会、ペスカリア市場、プンタ・デラ・ドガーナ、バルバリーゴ・ミノット宮殿、パロッツオ・ダ・モスト、そして原作にも登場するサンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ広場など名所の数々で大規模ロケが行われた。映画の撮影に許可が下りるのが異例という歴史的建造物や、イタリアのルネサンス期を代表する画家ティントレットの絵画など、貴重な建物や絵画が多く映っていることも魅力だ。高橋はヴェネツィアで撮影したこの映画の魅力について、2025年4月15日に東京で行われた完成報告イベントにて、このように語った。「ヴェネツィアの風景の中でお芝居をして、それがしっかりとした世界で統一されているというか、地面に足がついている気がしました。まるで海外でオペラを観ているような感覚に僕はなりました。これまで観たことのない作品に仕上がっているのではないかという確信があります。言葉にすると月並みかもしれませんが、これまでにない世界が表現されているのではないかと。原作ファンの方にも、実写でファンになってくれた方にも、シリーズを観たことがない方にも、ヴェネツィア旅行をしているような感覚で観ていただける作品でもあります。ぜひ体験していただけたら」
また渡辺監督は、ヴェネツィアにてオールロケを実行できた感動と、この作品の本質的なテーマについてこのように語っている。「この記念すべき大切なエピソードを、オールヴェネツィアロケで撮影できたなんて、クランクアップした今でも信じられない。そこは陰と陽が混在する、不思議な街だった。廃墟、墓地、教会、貴族の館、迷路のような石畳の路地。そしてそこにいつものように凛として立つ露伴先生…。撮影した全ての場所、全ての時間が愛おしい。いつまでも撮り続けていたい、この時間が終わらないでほしい…。そんな思いを抱きながら撮影を続けるうちに、『「懺悔室」はこの街でなければ生まれなかったのだ』と確信した。この物語は“呪い”の物語でもあるが、“愛と覚悟”の物語でもあったのだ。退廃的で不道徳な気配に満ちた水都で繰り広げられる、弱くて滑稽で、それでも懸命にもがき続ける人々の奇妙な世界を覗き見て欲しい」
また高橋は監督が語るこの物語のテーマについて、前述の「CREA WEB」の取材にて、このように語っている。「愛というテーマも、幸運と同じくらい曖昧だなと感じます。いろんな種類の愛があるし、人それぞれの捉え方もある。自己愛もあれば、他者への愛もあるし、もっと大きな愛もある。今回の作品においては、一貴さんが話しているように、幸せを受け入れる覚悟やその根本にある愛について寓話性を通して、それぞれに感じてもらえたらと思います」
歴史的な水上都市ヴェネツィアに漂う不穏な影に、一条の光のように差し込むものとは。露伴が出会う怪異、ある呪いと家族、幸運、絶望、希望、祝福、あらゆる混沌を突き抜けてゆくものに焦点が合った時、見えてくるものとは。原作者の荒木飛呂彦氏は前述のジャパンプレミアにて、深い感慨と共にこのようにメッセージを伝えた。「この度、実写映画化にあたって“オールヴェネツィアロケ”とお聞きし『そこまでやる(行く)のか…。』と思いました。“短編”だった作品が、『岸辺露伴』がそうやって広がっていくことがとても感慨深いです。旅情豊かで、人生があって、香り高い宝石のような第一級のサスペンス作品。私たちの目指すところはそこだからです」
同イベントにて荒木氏からのメッセージに、監督と高橋は強く感動し感謝の言葉を伝えた。また高橋は原作ファン、映像作品のファン、これから初めて露伴作品に触れる観客に向けて、このようにメッセージを伝えている。「原作ファンの方、これまで僕が演じさせて頂いてきた露伴の世界を愛してくださる方、どちらの方達にとっても、また、今から作品を見てくださる方にとっても、どなたにおいても楽しんで頂ける作品になっています。新たに加わった出演者の方達もご一緒する事が光栄な俳優さんばかりです。是非そちらも楽しみにして頂けると嬉しく思います。僕が露伴としてここまで演じさせて頂いた幸運と、携わって下さった皆さんとの出会いの幸運。その重なりとも云えるものを、劇場に足を運んでくださる皆様にお届け出来ること。楽しみにしております」
参考:「CREA WEB」
公開 | 2025年5月23日よりロードショー |
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制作年/制作国 | 2025年 日本 |
上映時間 | 1:50 |
配給 | アスミック・エース |
原作 | 荒木飛呂彦 |
監督 | 渡辺一貴 |
脚本 | 小林靖子 |
出演 | 高橋一生 飯豊まりえ 玉城ティナ 戸次重幸 大東駿介 井浦新 |
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