リロ&スティッチ

ディズニーの異色の人気作品が実写映画化
ハワイの孤独な少女と破壊的エイリアンの出会い
姉妹や周囲の人々とのつながりをあたたかく描く

  • 2025/06/04
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リロ&スティッチ©2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ディズニーの人気アニメーション『リロ&スティッチ』(2002)を実写映画化。スティッチの声はアニメ版で原案・監督を務めたクリス・サンダースがアニメ版に引き続きスティッチの声を担当、出演はハワイのビックアイランド(ハワイ島)で生まれ育ち、数百人の候補者から選出され本格的な演技は今回が初となるマイア・ケアロハ、ハワイのカウアイ島出身のシドニー・アグドン、舞台『ラッキー・ガイ』のコートニー・B・ヴァンス、コメディアンとしても人気のザック・ガリフィアナキス、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のビリー・マグヌッセンほか。監督は、短編を基にした2021年の長編映画『マルセル 靴をはいた小さな貝』で監督・脚本・プロデューサー・声優を務め、数々の映画賞を受賞したディーン・フライシャー・キャンプが手がける。両親を亡くし、周囲に馴染めずひとりぼっちのリロは、暴れん坊のエイリアン、スティッチと出会い……。スティッチの可愛さや暴走ぶり、両親を亡くした姉妹の結びつき、周囲のみんなとのつながり、スティッチが姉妹と家族になっていくこと。オリジナルのアニメ版に敬意をもって、実写としてオハナ(ハワイ語で家族の意)をめぐるドラマもよりしっかりと描くファンタジー作品である。

豊かな自然が広がるハワイのカウアイ島。両親を失い姉ナニと2人で暮らす6歳の少女リロは、想像力が豊かで少し変わった女の子。友達ができずいつもひとりぼっちの彼女に、見た目はモフモフで超キュートなのに暴れん坊の不思議な生き物、破壊生物として開発されたエイリアン“試作品626号”が現れる。その生物と動物保護施設で出会ったリロは何も知らずにスティッチと名づけ、家に連れ帰る。愛を知らないスティッチと孤独なリロの出会いは、家族や周囲の人たちを巻き込みながら思いがけない事件へと展開し……。

マイア・ケアロハ,クリス・サンダース(声),シドニー・アグドン

両親をなくした孤独な少女リロと、高い破壊能力をもつやんちゃなエイリアン、スティッチが出会い、家族になってゆく物語。両親を亡くした姉妹の結びつき、家族を築いていくこと、周囲の人たちとのあたたかい関係、困難に直面しても夢を諦めないことなどを描いている。ディズニーの人気アニメーションの実写映画化については『白雪姫』のこともあり、いろいろな課題や心配があるなか、『リロ&スティッチ』はすでに本国アメリカで大ヒットし高い評価を得ていることは周知の通りだ。オリジナルのアニメ同様、ハワイの人々や文化も大切なテーマとして尊重し、キャストの多くはハワイ出身の俳優を起用、スタッフもオアフ島出身の脚本家クリス・ケカニオカラニ・ブライトをはじめ現地のスタッフが多数参加。オハナ(家族)の概念や、フラ(ダンス)やハワイ語のセリフなどが丁寧に描かれていることも魅力となっている。

いたずら好きで高い破壊能力をもつエイリアン、スティッチの声は、アニメーション版から引き続き、作品の“生みの親”であるクリス・サンダースが担当。フラとエルビス・プレスリーを愛するリロ役はマイア・ケアロハが、想像力が豊か過ぎるせいで変わり者扱いされ、友達ができずに孤独を感じている6歳の少女として。リロの姉で、両親を事故で亡くしてからリロの親代わりをしている18歳のナニ役はシドニー・アグドンが、スティッチを生みだした「悪の天才」を自称する科学者ジャンバ博士役はザック・ガリフィアナキスが、地球の生物や文化を愛する銀河連邦のエイリアン、プリークリー役はビリー・マグヌッセンが、リロとナニ姉妹を見守る優しい青年デイヴィッド役はカイポ・デュドイトが、地球外生命体の脅威から地球を守る極秘の活動をしているCIAのエージェント、コブラ・バブルス役はコートニー・B・ヴァンスが、リロとナニの隣人で、幼い頃から姉妹の成長を見守っているトゥトゥ役はエイミー・ヒルが(エイミーはアニメ版で青果店のハセガワの声を担当)、姉妹を担当する社会福祉局の職員ケコア役はティア・カレルが(ティアはアニメ版でナニの声を担当)、ナニとデイヴィッドが働くレストランのマネージャー、ルアウ役はジェイソン・スコット・リーが(アニメ版でデイヴィッドの声を担当)、それぞれに演じている。アニメ版の声のキャストが実写版で俳優として出演しているのも注目だ。
 日本語吹替版では、オリジナルのアニメーション版やその続編、TV シリーズでもスティッチの声を担当してきた山寺宏一が引き続き担当。リロの声はテレビや映画などでに人気の子役・永尾柚乃が、ナニの声はME:IのMOMONAが、デイヴィッドの声はTravis Japan の中村海人が、プリークリーの声はオリジナルのアニメ版で同役を担当した三ツ矢雄二が引き続き担当し、さらに長谷川忍(シソンヌ)、渡辺えり、手塚秀彰、五十嵐麗、深見梨加が参加している。

ビリー・マグヌッセン,ザック・ガリフィアナキス

スティッチの声を実写でも担当しているサンダースは、オリジナルのアニメーション版で監督・脚本・キャラクターデザインを手がけた人物。実写版のキャスティングが始まった時、サンダースは自身の監督・脚本による映画『ザ・ワイルド・ロボット』の制作中だったなか、スティッチの声を担当することは心に決めていたと話す。「この声をできる限り続けるつもりだ。このキャラクターは私にとって非常に個人的な存在だからね」
 キャンプ監督はスティッチの声をサンダースが続投することを喜び、「クリス・サンダースが戻ってきたのは夢が叶ったようなものだった」と話し、「彼は声だけでなく、時間や思考を惜しみなく提供し、私たちを導き、方向がずれた時に指摘し、アドバイスを受け入れ、質問に答えてくれた。<中略>彼からあの声が聞こえてくるのを見た時は、本当に現実離れした体験だった」とコメントしている。
 またオリジナルのファンが実写版で気になることのひとつは、スティッチのビジュアルや質感だろう。実写版のスティッチはCGや視覚効果と、パペット(操り人形)の匠の技術を融合させ、モフモフとした毛並みなどにこだわって丁寧に制作。視覚効果を手がけたクレイグ・ハマックは、オリジナルにできるだけ忠実に、ユニークで、繊細な特徴をもつ愛されるキャラクターを忠実に描くために多くの時間を費やした、と説明している。

字幕版のエンドソング、アニメ映画ではウィノナ・ジャッドが歌ったエルヴィス・プレスリーの名曲のカヴァー「Burning Love」は、実写版ではハワイ出身のグラミー賞受賞アーティスト、ブルーノ・マーズがプロデュースし、やはりハワイ出身でブルーノの甥でもある新進の兄弟デュオ、Nyjah Music & Zyah Rhythmが歌唱を担当。オハナをテーマにした作品にぴったりのコラボレーションとなっている。そして日本版のエンドソングは、Travis Japanが「バーニング・ラヴ」をカヴァーしている(デイヴィッドの声をTravis Japanの中村海人が担当しているつながりも)。
 劇中音楽では、シリーズのファンにおなじみの曲「アロハ・エ・コモ・マイ」ほか、実写版ではよりハワイのルーツ音楽を取り入れ、「He Lei Pāpahi No Lilo a me Stitch」ではハワイアンの歌い手であるマーク・ケアリイ・ホオマルがコーラスに参加。またネイティブ・ハワイアンの文化を体現する子どもたち、カメハメハ・スクールズ・チルドレンズ・コーラスのディレクターであるリンネル・K・ブライト(脚本家クリス・ケカニオカラニ・ブライトの実母)も「Henehene Kou 'Aka」などの曲に参加。「ハワイアン・ローラーコースター・ライド」には、ハワイ出身で「アメリカン・アイドル」シーズン21優勝者のイアム・トンギが参加している。
 キャンプ監督は実写版の制作にあたり、ハワイの要素を正しく表現する文化的な背景を重視。製作陣はハワイ出身の脚本家ブライトが観光地的なイメージではなく本物の文化の反映に尽力し、文化と言語に精通したコンサルタントチームと協力して制作したとコメント。プロデューサーのライアン・ハルプリンは語る。「脚本家のクリス・ケカニオカラニ・ブライトは、元の物語と文化に深いルーツをもっており、“オハナ”の概念を周囲のコミュニティや地域社会まで広げてくれた」

シドニー・アグドン,マイア・ケアロハ,クリス・サンダース(声)

本国アメリカですでに公開中の実写版『リロ&スティッチ』は、高い評価を得て大勢が映画館で楽しんでいる理由のひとつとして、23年前のアニメ映画の公開時に子どもだったファンが成長して親となり、子どもたちと共にファミリーで楽しんでいるとも。かわいらしいキャラクターたち、ハワイの美しい自然、時にはやさしく時には軽快に響くハワイの音楽、ハワイの人々や伝統的な文化や歴史への敬意、“オハナ(家族)”の結びつきを描くあたたかいストーリーなど、幅広い層がのんびり楽しめる安心感のある作品であることは間違いない。
 キャンプ監督は自身が監督・脚本・プロデューサー・声優を務めた『マルセル 靴をはいた小さな貝』を例に挙げ、『リロ&スティッチ』のキャラクターやテーマについて、このように語っている。「ふたつの作品は表面的には異なるプロジェクトですが、マルセルとスティッチは同じDNA を共有していると直感的に感じました。ふたりとも家族を探す異色の主人公で、単なる可愛さを超えた感情の深さが描かれます。アニメーション版は、私が最も愛するディズニー映画で、初めて観た時は圧倒されました。クリス・サンダースの芸術的なスタイルを基にしているから、当時のほかのディズニー映画とは全く異なる見た目で、プリンセスも登場しない。現代のハワイを舞台に、普通の人が日常を送り、幸せを追求している。だからこそ、実写化する上では、人間のキャラクターの感情と現実を深く掘りさげて、現実の経験に根ざした作品にしたいと思ったのです」

作品データ

公開 2025年6月6日より全国劇場公開
制作年/制作国 2025年 アメリカ
上映時間 1:48
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題 Lilo & Stitch
監督 ディーン・フライシャー・キャンプ
出演 クリス・サンダース(声)
マイア・ケアロハ
シドニー・アグドン
吹替版キャスト 山寺宏一
永尾柚乃
MOMONA
中村海人
長谷川忍(シソンヌ)
渡辺えり
三ツ矢雄二
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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