二宮和也主演×川村元気監督の初タッグで
日本発の有名なインディーゲームを実写化
ユニークかつスタイリッシュに心理を描く
二宮和也を主演に迎え、初監督作『百花』で第70回サン・セバスティアン国際映画祭にて最優秀監督賞を受賞した川村元気監督が、KOTAKE CREATEによる世界的な人気を誇るインディーゲーム『8番出口』をまさかの実写映画化。共演は、ドラマ『VIVANT』の河内大和、『糸』の小松菜奈ほか。脚本は川村監督との共同で『百花』の平瀬謙太朗、音楽はYasutaka Nakata (CAPSULE)名義でPerfumeほか多数のアーティストへの楽曲提供で知られる中田ヤスタカと、『百花』『サンセット・サンライズ』などの作曲家・網守将平が手がける。川村監督はこの映画のストーリーについて、「水鈴社公式note」2025年7月9日の「川村元気 小説『8番出口』刊行記念インタビュー」にてこのように語っている。「『8番出口』にはシンプルなルールがあって、異変があったら引き返して、異変がなかったら前に進む。二択を繰り返すゲームなんです。そのルールを解釈してみると、そもそも人生というもの自体がいろいろな二択の繰り返しでできているな、と。つまり、この真っ白な空間で起きていることは人生のメタファーなんじゃないか。この物語の主人公は、自分の人生にとって重大な二択を抱えた状態であの空間に入る。あの空間の中で、前に進むか引き返すかという小さな二択を繰り返しながら、自分が抱えている大きい二択の結論に向かっていく……というおおまかな流れも浮かび上がってきました。ここでもゲームのルールに対して解釈を作ることで、物語が生まれてきたんです」
ストーリーのないシンプルな“異変”探しの無限ループゲームはどのような実写映画になるのか? ホラー風味あり心理ドラマ風でもあり、サウンドや音楽、ビジュアルの仕掛けや隠喩が面白く感覚を刺激する、意外にも年齢性別問わずシンパシーを感じさせるものがあるユニークな作品である。
ある日、男が迷い込んだ地下通路にはこの標識があった――。
異変を見逃さないこと。
異変を見つけたら、すぐに引き返すこと。
異変が見つからなかったら、引き返さないこと。
8番出口から外に出ること。
日本のインディーゲームクリエイターのKOTAKE CREATEが1人で制作し、累計販売本数190万本超の世界的ヒットを記録したゲーム『8番出口』を実写映画化。どういう内容になるのか、いわゆるゲーム映画のスタイルだとちょっとつまらないかもなどと個人的にふんわり考えていたら、いい意味で思いがけないストーリーを味わった。例えば日常で考えごとをしていて、自分にとって困難なテーマだと解決しない思考のループに嵌まり込み、ぐるぐると堂々巡りになることがあるが、この映画ではそれを体験的なストーリーとして転化している。そういった考えあぐねる思考の流れが無限ループの迷路ゲームとして隠喩されているのだ。悩んで考えて、自分なりの答えを得るまで何度でも最初からやり直して同じようなルートを繰り返す。そしていつしかその問いに自分なりの答えを見出すこと=自身の行く道を選択することで、出口が見つかるという。禅問答を映像化したようなアイデアと体感がユニークで面白い。川村監督は2025年6月24日に東京で行われたマスコミ試写後のトークイベントにて、2023年11月にゲーム『8番出口』に出会った時に、「白くてプレーンな空間に一目惚れした」とコメント。そしてこのゲームを映画化することへの気概について、これまでにプロデューサーとして『君の名は。』『怪物』など数々の映画を製作してきたことをふまえて、2025年3月28日の映画公式NEWSにてこのように語っている。「『8番出口』に出会った時、これは日本発の世界で勝負できる「発明」だと興奮しました。でも、いったいどんな映画になるのか? 今まで映画を四十本以上作ってきて、これほどまでにどんな映画になるのかわからない作品はなかった。けれども、それこそが映画館で体験したいエンタテインメントだとも思いましたし、自分が監督としてチャレンジするのならばそういう作品でありたいと思いました」
ゲームの生みの親、映画の原作者であるKOTAKE CREATEは2024年12月27日の映画公式NEWSにて、喜びと共にこのようにコメントを寄せている。「『8番出口』が実写映画化します!2023年11月末にゲームを発売し、その約1年後には映画化が発表されているとは全く思っていなかったので、驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。映画の話が来た時は、ストーリーが無いゲームをどう映画にするのかと思っていたのですが、『8番出口』の世界観や雰囲気を壊す事なく、映画として面白い物になっていると思います!撮影現場も見学させていただき、あの地下通路やおじさんが目の前に存在していて本当に凄かったです!ぜひ楽しみにお待ちいただけると幸いです!僕も公開がとても楽しみです!」
地下通路を迷う男役は二宮和也が、謎のループ空間に閉じ込められる人物として。ゲーム好きとして知られる二宮は、川村監督との初タッグを喜び、ユーモアと共にこのようにコメントしている。「とにかく川村監督とご一緒したいと思っていたので、お声を掛けていただいたのが嬉しくて参加出来てよかったなと思いました。この作品は中々言語化が難しいのですが、我々のこだわりの一秒一秒を早く皆様に観ていただきたいと思っております。では、異変にお気をつけて、、皆様が映画館から出られる事を祈っております」
監督は二宮が演じるキャラクターについてこのように説明。「二宮和也さんは、まるで意思を持ったかのように異変を見せながら無限にループする地下通路に迷い込んだ主人公です。彼の役には名前がありません。恐ろしいことや不思議なことが日々起こる“現代”において、困難な“現実”をサバイブしていく“人間”を演じてもらいました」
劇中ですれ違い続けるおじさん役は河内大和が、謎の女性役は小松菜奈が、そして浅沼成、花瀬琴音と登場人物5人のみで展開。ホラー風味については、延々とすれ違い続けるおじさんが、真顔でも笑顔でもだんだんコワくてキモくて笑えてくる、みたいな。ほかにもいろいろ仕掛けがあるので観てのお楽しみに。
登場人物たちについて、監督は前述の「水鈴社公式note」にて、このように語っている。「今回の登場人物たちには名前がないんです。彼はある意味で、世間そのものなんです。スーパースターでも罪深い罪人でもなく、世間という存在を一人に凝縮したような主人公を、二宮くんに演ってほしかった。あと、映画は一切回想とかを使っていないので、主人公たちがどういう背景を持っている人間なのかは具体的には描かれてないんです。ただ、二宮くんにはこっそり伝えていて、それによって彼の芝居の中で、主人公の罪悪感だとかトラウマみたいなものがにじみ出てればいい。映画はそういう作り方をしました。彼とのセッションは大成功でした。二宮くんの対応力は、本当に素晴らしかったです」
また監督はクレジットにある「脚本協力:二宮和也」の理由について、「脚本の段階から撮影の現場まで、彼の豊富なアイデアに、その多彩な演技に、大いに助けてもらいました」と話し、二宮がどのように映画に関わったかをさまざまなシーンで紹介している。「水鈴社公式note」では、「二宮さんの芝居から得たもの」が原作の小説に生かされているのかという質問に、「それはもう、ものすごく入っています。二宮くんのアドリブで生まれたシーンとかセリフとかアクションなんかも、小説に取り込ませてもらっています。それがなかったら、だいぶ薄いものになっていたと思います(笑)」と楽しそうに回答。前述のマスコミ試写では、監督と共同脚本の平瀬はこのように語っている。
平瀬「(二宮は映画制作に)めちゃくちゃ参加してくださっていたと思います。現場に入る前も何回も本打ちをして、脚本の内容に関しても一緒に詰めていきましたし、入ってからも直して。(一般的に)俳優さんたちは完成してから観るものですけれど、途中の試写にも来てくれて意見交換したり、積極的に制作に関わってくださいました」
川村監督「ゲームを作る時はいろんなテストプレイをして作り直していきます。二宮くんは自虐的に(ユーモアを込めて)言うのが、そのテストプレイのプレイヤーみたいなことをやらされていたと。シナリオ通りやる、撮る、編集するで、平瀬くんと僕とニノでみる、うまくいってない→ その日の夜にみんなで本を書き直し→ 二宮くんと翌朝に打ち合わせ→ リテイクする。ひたすらその二宮くんをゲームプレイヤー的に使って最適解を生み出すみたいな作り方をしていたので、脚本協力であり、ゲームのデモテストプレイヤー的なことをひたすらやってもらったところがありました」
音楽は日常にある音を効果的に取り入れているYasutaka Nakata(CAPSULE)のサウンドが印象的だ。また名曲「ボレロ」を使っているところが『8番出口』の世界観にとてもよく合っている。同じフレーズをループして高まっていくことで有名なこの曲は、2025年からアメリカでも著作権フリーになったこともあり(フランスでは2016年よりパブリックドメインに)、どことなくタイムリーだ。
2025年7月9日には川村監督が書き下ろした小説『8番出口』が刊行。監督は映画と小説について、「たとえて言うなら双子みたいな関係」と前述の「水鈴社公式note」にてコメント。原作のゲームから得た着想の起点について、このように語っている。「自分が初めて『8番出口』というゲームに触れた時の話をすると、僕は地下通路のあの真っ白い空間が、能舞台みたいだなと思ったんです。能の演目の多くは、あの世とこの世の境目を描いている。だとしたら……というところから、物語の設定が浮かび上がってきました」
そして映画と小説の違いについてこのように話している。「映画は、ほとんどセリフがないんです。モノローグも一切ありません。それに対して小説は、真っ白な地下通路を歩いている登場人物たちの膨大な“心の声”でできている。小説は主人公の内面を掘り下げるのにとても向いている表現手法ですから、小説『8番出口』ではそこを全部書いています。加えて、あの空間に対して僕はどういう見立てをしたのか、異変に対してどういう見立てをしていたのかという解釈は、小説の中でたっぷり表現しています」
小説の執筆は映画の撮影が終わった後から、映画の編集作業と同時並行で開始。それによりプラスになったことも多くあったと監督は言う。「それぞれのシーンや登場人物たちの裏付けを取るというか、自分の中の根拠みたいなものを作っていった感覚があるんです。加えて、映画ではカットしてしまった異変とか、撮り終わって編集した後に『やっぱりこの異変、やっておけばよかったな』というものがいくつかあって、それを小説版に入れたりもしています」
この作品のテーマについては、小説でより詳しく書いているという。「“無関心の罪”はこの物語のテーマの一つです。例えば人を殺すとか、おカネを盗むとか暴力を振るうこと、セクハラとかパワハラみたいな罪って、顕在化していますよね。だけど、現代人が日常的にもっとも頻繁に起こしている罪って、暴力や戦争や差別などに対して“見て見ないふりをする”ことじゃないでしょうか。その“無関心の罪”は、地下通路の異変を気付かずやり過ごしてしまうことと、重ね合わせて描くことができるんじゃないかと思ったんです」
映画が先か小説が先か? その問いについては、「そこはもう、直感で(笑)。小説か映画か、どちらを入口にしても楽しめるような仕掛けにはなっていますので。ただ、どちらを先に選んだかによって、映画の見え方は変わるし、小説の感じ方も変わる。『8番出口』らしく、まずはその“二択”から楽しんでもらえればと思います」と監督はコメントしている。
映画のエンドロールには「協力」として、『怪獣』の是枝裕和監督や『国宝』の李相日といった監督たちの名前も。そして映画『8番出口』は、アジア、ヨーロッパなど100以上の国と地域での上映が決定。2025年5月に行われた第78回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクションのミッドナイト・スクリーニング部門への出品が決定した際には、みんなで喜び合ったという。その時の二宮と原作者KOTAKE CREATEの喜びのコメントをご紹介する(お祝いは省略)。
二宮「川村監督から電話が来て 『え?アフレコ録り直しかも!?』と、恐る恐る出てみたら『ニノ!カンヌ決まったぞ!』という最上級の驚きの電話でした(笑)。その後は2人で喜び合い、オフィシャルセレクションだよ!ミッドナイト・スクリーニングだよ!凄すぎる!!と大盛り上がりとなりました。勿論、映画というものは公開日から観てくださった方々の心に届いて初めて完成するものです。ですが、映画に関わる人間なら一度は立ってみたい場所の1つでもあります。本当に最初から関わって作り上げた作品。より多くの方々に届くことを祈っています!」
KOTAKE CREATE「自分の作ったゲームが、映像化され、さらにはカンヌ国際映画祭に行くなんて夢にも見ておりませんでした。これをきっかけに、より多くの人にゲームと映画の『8番出口』が届くと嬉しいです」
川村監督もカンヌでの正式上映に大いに驚き喜び、キャストやスタッフ、関係者への感謝を伝えている。最後に、監督が前述のマスコミ試写のトークイベントにて伝えた、自身がこの映画で目指したことと、観客へのメッセージをご紹介する。「僕がやりたかったのは、現実とゲームの世界と映画の世界、その境目が曖昧になる体験をしていただくことです。映画を観終わって映画館から帰る時に、『もしかしたらまだ続いているんじゃないか』という奇妙な体験ができるのは、Youtubeやtiktokやnetflixなどテレビやスマホなどの媒体では体験できない、絶対に映画館じゃないと楽しめない体験かなと。そこはかなり映画館向けを意識して作ったので、今日はこうして映画館で観ていただいたことが本当に嬉しいなと思っています」
公開 | 2025年8月29日より全国東宝系にてロードショー |
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制作年/制作国 | 2025年 日本 |
上映時間 | 1:35 |
配給 | 東宝 |
英題 | Exit 8 |
原作 | KOTAKE CREATE「8番出口」 |
監督・脚本 | 川村元気 |
脚本 | 平瀬謙太朗 |
脚本協力 | 二宮和也 |
音楽 | Yasutaka Nakata (CAPSULE)、網守将平 |
出演 | 二宮和也 河内大和 浅沼成 花瀬琴音 小松菜奈 |
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