英国人教師とはぐれペンギンの出会いと顛末
厳しい情勢のなか変化していく人々の心情を
実話をもとにあたたかい視点でユーモアと共に
© 2024 NOSTROMO PRODUCTION STUDIOS S.L; NOSTROMO PICTURES CANARIAS S.L; PENGUIN LESSONS, LTD. ALL RIGHTS RESERVED.1976年のアルゼンチンで中年の英語教師と群れからはぐれたペンギンの出会いとその後、という風変わりでハートウォーミングな実体験を綴った原作を映画化。出演は『ロスト・キング 500年越しの運命』のスティーヴ・クーガン、『2人のローマ教皇』のジョナサン・プライス、コメディアンで劇作家でもあるアルゼンチン系スペイン人の俳優ヴィヴィアン・エル・ジャバーほか。監督は『フル・モンティ』のピーター・カッタネオ、脚本は『あなたを抱きしめる日まで』でスティーヴ・クーガンと共に脚本を担当したジェフ・ポープが手がける。軍事政権下で政治的な弾圧が続く1976年のアルゼンチン、人生を諦めかけていたイギリス人の教師トム・ミッチェルは思いがけず、原油に汚染されたペンギンを海岸で保護する。女性にモテたくて保護したペンギンとの、諸事情から仕方なく始まった共同生活が、トム自身の人生と学生たちの教育にユニークな影響を与えていく。アルゼンチンの当時の不穏な情勢とそこで生きる人たちの姿を捉えつつ、愛らしいペンギンと共に過ごすうちに登場人物たちの内面がやわらいで整っていくさまをユーモアと共にあたたかい視点で描く。シニカルでビターな側面を含みながらも、何歳からでも人は変われるという味わいを感じさせるヒューマンドラマである。
1976年のアルゼンチン。人生に行き詰まりを感じていた英国人の教師トムは、名門寄宿学校の英語教師としてブエノスアイレスへ赴任。軍事政権下の混乱する情勢のなか周囲に馴染めず、不真面目な生徒たちに手を焼き、トムは教育への情熱を失いかけていく。ある日、学校が休校となったことをきっかけに訪れたウルグアイの海岸で、バーで知り合ったウルグアイ女性カリナと散策中に、原油に汚染されたペンギンの死骸を発見。その中で唯一生き延びていたペンギンがいたことから、トムはカリナにいい顔を見せようとして保護する。その後、諸事情により仕方なくブエノスアイレスへ連れ帰り、ペット禁止の学校の宿舎で共同生活をこっそりスタート。そしてペンギンはフアン・サルバドールと名付けられ、トムだけでなく、関わるすべての人々の心情に変化をもたらしていく。

世界22カ国で刊行されている、実在するイギリス人教師トム・ミッシェルによる回顧録『人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日(原題:THE PENGUIN LESSONS)』を原作に、カッタネオ監督が映画化。2024年のトロント国際映画祭をはじめ世界中の映画祭で評判となり、アメリカやドイツなどで異例のヒットとなった作品だ。無気力で社会と距離を置いていたような主人公がペンギンとの共同生活をきっかけに、学校関係者や生徒たちのみならず、市井の人々とも少しずつ心を通わせていく。原作にはないアルゼンチンの厳しい情勢とそれに直面する人々の思いや行動などを加え、希望や再生を伝える人間ドラマとして深みが増している。カッタネオ監督は原作を読み、「直感的に『これは素晴らしい映画になる』」と感じたそうで、原作と脚色の素晴らしさをこのように讃えている。「1976年のブエノスアイレスにある英国寄宿学校セント・ジョージ・カレッジを舞台に、人間とペンギンが築く思いがけない絆――その物語は私の想像力を強く刺激し、このユニークでオリジナルな世界をスクリーンに描きたいという情熱を呼び起こしました。トムの奥深い原作を基に、ジェフ・ポープが脚色した脚本は、物語のユーモアや情熱、複雑さを的確に捉え、主人公の内面を見事に描き出しています」

社会との関わりを避けるかのような英語教師トム役はスティーヴ・クーガンが、ペンギンとの暮らしにより生きる気力や教育への情熱、過去のある出来事を乗り越えていく姿を飄々と表現。監督はスティーヴについて、「生徒や教員に共感を示し、政治的意識に目覚めていくトムを演じるスティーヴの姿は、まさに卓越したもの」と称賛し、このように語っている。「物語の冒頭、トムは明らかに“助けが必要な状態”です。しかしスティーヴ・クーガンの演技によって、その不機嫌さや皮肉さは乾いたユーモアを帯び、観客を惹きつける魅力へと変わりました。フアン・サルバトールと名付けられたペンギンと心の絆を深めるにつれ、スティーヴは悲しみと温かさを自在に行き来し、やがて自分の人生を取り戻していくトムを見事に体現しています」
名門寄宿学校の校長役はジョナサン・プライスが、トムと親しくなる同僚の物理教師タピオ役はビョルン・グスタフソンが、トムたちの暮らす宿舎で働くメイドのマリア役はヴィヴィアン・エル・ジャバーが、マリアの孫娘ソフィア役はアルフォンシーナ・カロッチオが、それぞれに演じている。
そしてペンギンのフアン・サルバドール役は主に2羽のマゼランペンギン、ババとリチャードが担当。本物のペンギンでは負担になるシーンは人形やロボットなどで代用しているものの、ほとんどのシーンは本物のペンギンによるもので、スタッフもキャストも全員がペンギン優先ですべてを受け入れて撮影に臨んだ。カッタネオ監督はとても和やかだったというペンギンとの撮影について、このように語っている。「フアン・サルバドールは小さなマゼランペンギンです。私たちの愛するペットと同じく、その魅力の一部は“欠点”にあります。頑固で、少し汚れていて、魚の匂いがする――。彼をスクリーンに収めるためには、型にはまらない自然なアプローチが必要でした。キャストとスタッフに忍耐と柔軟さを求め、ペンギンの予測不能な行動を受け入れることで、脚本にはない魔法の瞬間が訪れました。その小さな“アドリブ”は、現場の全員に喜びをもたらし、映画の中でも特に私のお気に入りのシーンを生み出してくれました」
またスティーヴはペンギンのさまざまな動きに対応して柔軟に演じたことについて、このように語っている。「幸い、これまでのキャリアで即興演技を多く経験してきたので、計画通りに動いてくれないときも動揺せずにすみました。無理にコントロールしようとせず、受け入れること――それが最高の瞬間を生むこともあるのです」

ぽてぽてとのんびり2足歩行し、つぶらな瞳で見つめる姿が愛らしいペンギンのフアンと、フアンを愛する人たちの心の行方を描く物語。ペンギンのなかでも特にマゼランペンギンはつがいになると一生を共にすることが多いそうで、フアンの示す愛情行動は染み入るものがある。スティーヴは撮影前にフアン役のマゼランペンギン、ババとリチャードの住処に赴き、数週間をかけて話しかけたり抱きかかえたりしながら信頼を築いていったとのこと。ペンギンへの思いやこの映画のメッセージについて、スティーヴはこのように語っている。「撮影が始まる頃には、もう彼らを抱き上げるのにすっかり慣れていました。別れのときは本当に感動的でした。ペンギンには、人の心をほぐす不思議な力があります。人間は往々にして内向きになり、些細なことに囚われすぎるものですが、この鳥たちは“すべてを真剣に受け止めすぎないこと”を教えてくれます」
劇中では、マリアの孫で同じく働き者のメイドであるソフィアが、政治についての持論をトムにはっきりと意見した際、生意気で不愉快だと切り捨てるのではなく、耳を傾けて議論し歩み寄ろうとする姿が印象的だ。監督はマリアとソフィアを通じて原作にはない内容を描いた理由と、観客へのメッセージについて、このように語っている。「脚本段階では、物語の背景にある軍事独裁政権の残虐行為を描くため、原作にはない新たな要素を加えました。当時のブエノスアイレスでは、主人公トムは学校の壁と、自らの無関心によって守られています。しかし1976年のアルゼンチンを舞台にする以上、その陰で行われていた非人道的な行為を無視することはできません。そこで、2人の脇役を通して国民が受けた痛ましい仕打ちを描きながらも、物語の中心はあくまでトムの贖罪と覚醒に置く――このバランスを大切にしました。観客がアルゼンチンの歴史に関心を持ち、さらに知りたいと思っていただければ幸いです」
| 公開 | 2025年12月5日(金) 新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開 |
|---|---|
| 制作年/制作国 | 2024年 スペイン・イギリス |
| 上映時間 | 1:52 |
| 配給 | ロングライド |
| 原題 | THE PENGUIN LESSONS |
| 監督 | ピーター・カッタネオ |
| 脚本 | ジェフ・ポープ |
| 原作 | トム・ミシェル「人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日」 |
| 出演 | スティーヴ・クーガン ヴィヴィアン・エル・ジャバー ビョルン・グスタフソン アルフォンシーナ・カロッチオ デイヴィッド・エレロ ジョナサン・プライス |

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