複数のマフィア、NY市警の刑事に追われ
1998年のニューヨークを猫と一緒に逃避行
ダーティで歯切れのいいアクション・クライム

かわいい猫をきっかけに、ハードな厄災に襲われ続ける青年の運命やいかに。出演は、『エルヴィス』『デューン 砂の惑星 PART2』のオースティン・バトラー、『ビール・ストリートの恋人たち』のレジーナ・キング、『THE BATMAN−ザ・バットマン−』のゾーイ・クラヴィッツ、『ラストナイト・イン・ソーホー』のマット・スミスほか。監督は『ブラック・スワン』『ザ・ホエール』のダーレン・アロノフスキー、脚本は原作者であるアメリカの小説家チャーリー・ヒューストンが手がける。野球選手として将来有望だったが夢破れた青年ハンクは、変わり者の隣人ラスから頼まれたネコの世話を引き受けるが……。ロシア人とユダヤ人とプエルトリコ人のマフィア、NY市警の刑事から標的とされ、執拗な追跡をかわしながらニューヨークの街を逃げ回る。最悪のヤバい状況にのまれていくハンクは、一発逆転を勝ち得ることはできるのか。1990年代を愛するアロノフスキー監督が、当時のニューヨークの勢いや雰囲気と共に歯切れ良く描く、巻き込まれスタイルのアクション・クライムムービーである。
1998年、ニューヨーク。メジャーリーグのドラフト候補になるほど将来有望だったものの、運命のいたずらによって夢破れたハンクは、バーテンダーとして働きながら、恋人のイヴォンヌと平穏に暮らしている。ある日、変わり者の隣人ラスからネコの世話を頼まれ、それを引き受けた途端、街中のマフィアたちが次々と彼の家へ殴り込み激しい暴力で脅迫してくる悪夢のような日々が始まる。やがてハンクは自身が裏社会の大金絡みの事件に巻き込まれたと知り、警察に助けを求めながら逃げ続けるなか、大きな悲劇が。あまりの理不尽にブチギレたハンクは、自分を巻き込んだ隣人やマフィアたちにリベンジすることを決意する。

アロノフスキー監督が1998年のチャーリー・ヒューストンの小説を映画化。映画には1990年代のニューヨークへの愛着がたっぷりと込められ、当時の街を知る人たちには特に楽しい内容となっている。監督が1998年の初の長編映画『π』(インディペンデント・スピリット・アワードにて新人脚本賞受賞)を撮っていた1990年代、監督はニューヨークのイースト・ヴィレッジに住み仕事をしていたことから強い思い入れがあるという。「90年代のニューヨークは“ピーク・ヒューマニティ(人間らしさが極まっていた頃)”と呼びたいくらいだ。世界にはどこか無邪気さがあって、最大の心配事はY2K(2000年問題)。大統領は不倫と偽証で窮地に陥り、ソ連は崩壊して“明確な敵”はいない。9.11の前で、MDMAは合法、ヒップホップは隆盛、グランジはピーク、エレクトロニック・ミュージックが芽を出していた。僕は『π』の宣伝で街を駆け回り、ロケ地はゲリラ撮影で、至るところにシンボルをタグ付けしていた。生きている実感に満ちた時代だった」
脚本を執筆した原作者のヒューストンは「物語には笑いが多い」と話し、アロノフスキー監督作品への思いをこのように語っている。「彼の感性がそこに生きている。非常にダークな感触で、それはダーレンの真骨頂。彼の仕事には深いアーネスト(本気)さがあり、感情の強度が非常に強く、つねに前面に出ている。彼のキャラクターは深く“感じ”、いつも旅に出る――そこが好きだ」
高校野球の寵児だったが夢破れて今はバーテンダーをしているハンク役はオースティンが、とことんツイてない青年の意地と根性を表現。オースティンはハンクのキャラクターについて語る。「彼はニューヨークに出てきてバーテンダーになり、酒で自分を麻痺させ、最低限の暮らしをしている。そこに、命のやり取りになる状況が次々に襲いかかる。それが心臓に電気ショックを与える除細動器(デフィブリレーター)のように彼を蘇生させ、彼が大切に思う人々を守るため、そして自分が死なないために、責任を引き受けさせるんだ」
原作者ヒューストンはハンクの人物像についてこのように説明する。「彼はこのままでは一生、成長も変化もせずに過ごしてしまう危険がある。だが状況が彼に襲いかかり、逃げ続けるのか、それとも挑戦を引き受け、これまでの選択と向き合うのか、決断を迫る旅に彼を駆り立てる」
オースティンはもともとアロノフスキー監督が好きでずっと一緒に仕事をしたいと思ってきて、今回の現場をとても楽しんだとのこと。彼はこの映画でカーアクションも含むすべてのスタントを自身でこなし、6階の非常階段から壁をよじ登る場面もオースティンが自ら演じている。監督はアクションについて、物理法則を無視するような過剰なシーンにはしたくなかったと語る。「僕は、地に足の着いた真実味のあるアクションにしたかった。そういう暴力の方が、むしろ危険に感じられるから」
ハンクの恋人で救急救命士(EMT)のイヴォンヌ役はゾーイ・クラヴィッツが、NY市警の刑事エリーズ・ローマン役はレジーナ・キングが、ローマン刑事が“恐ろしい怪物”と呼ぶ、敬虔な正統派ユダヤ人でマフィアの殺し屋である兄弟コンビのシュムリー役はヴィンセント・ドノフリオが、リーパ役はリーヴ・シュレイバーが、兄弟の母親役はキャロル・ケインが、ドラッグ・ディーラーのコロラド役は歌手のバッド・バニーことベニート・マルティネス・オカシオが、ハンクに猫を預けるパンクロック好きの隣人ラス役はマット・スミスが、コロラドがつながりをもつロシアン・マフィアのギャングであるパーヴェル役とアレクセイ役はニキータ・ククシキンとユーリ・コロコルニコフが、それぞれに演じている。なかでも一番目立っているキュートなキャラクターはやはりラスの猫バドだ。バド役は以前に野良猫だったというトニックが愛らしく。主任アニマル・トレーナーのメリッサ・ミレットはトニックをこのように賞賛している。「トニックは本当に素晴らしい猫。ハンクと猫がニューヨークで逃避行し、クレイジーな出来事が次々に起こる物語だから、とにかくタフな猫が必要だった。トニックはライヴ・ショーで鍛えられていて、混沌に慣れている。エアショーで目前を飛行機が離陸するのを見ても平然としていたし、モンスタートラックやドラッグレース、トラクターレース――轟音の中でも大丈夫。だから彼こそ適任だった。ダブルは5匹いたけれど、トニックは仕事が大好きで、全体の90%をこなした」

監督は原作を最初に読んだ時の思いと映画化のきっかけについて語る。「18年前に本を初めて読んだとき、これほど面白くて血がたぎる思いをしたことはなかった。それから時が流れ、ある日、チャーリーが突然メールをくれた。原作権を取り戻し、脚本を書いた、と」
ヒューストンはこの小説を物語の舞台となっている1998年に執筆。アロノフスキー監督が注目したことへの喜びと物語への思い入れをこのように語っている。「主人公には自分の実体験がたくさん織り込まれている。18年前、ダーレンがこの本に興味を示してくれたときは本当に興奮した。彼のヴィジュアル・センスと物語運びのダイナミズムが、この物語に注がれるのがうれしかった」
撮影は、ロウアー・イースト・サイド、チャイナタウン、コニーアイランド、ブライトン・ビーチ、そしてクイーンズ区フラッシングなどニューヨーク市街地のさまざまな場所で実施。さらに劇中では、マンハッタン・ブリッジを映し、クイーンズ区フラッシング・メドウズにある1964年万博の“ユニスフィア”付近でのカーチェイスなど、許可が簡単にはとれないような場所も登場している。ニューヨークで生まれ育った監督は、「イースト・ヴィレッジこそ、ニューヨークを“ポップ”にする核(カーネル)なんだ。世界でいちばん電気的で、いちばんクリエイティブで、いちばん楽しい場所だと思っている」とコメント。原作者のヒューストンはアロノフスキー監督と実力派のキャストによる映画化をとても喜び、このようにコメントしている。「僕もダーレンも90年代はイースト・ヴィレッジに住んでいて、どこかで道は交差していたはず。<中略>このプロジェクトの喜びの一部は、そうした共有された生活体験とリアリティにある。あの時代を振り返って再訪できるのは、ただただ楽しい」
プロダクション・デザイナーのマーク・フリードバーグも街への思いを語る。「ダーレンも私もこの街の出身で、ニューヨークがさまざまな領域、民族的な地区から成り立っていることを理解しているんだ。私たちが生まれた頃の街はまさにそうだったし、少しずつ溶け合いつつあるとはいえ、多くの地区はいまも特有で、境界線があるかのように際立っている。物語の面白い部分のひとつは、ヒップスター文化のイースト・ヴィレッジから始まることだ」
そしてフリードバーグは「街とその環境は、脚本にも監督の個人的体験にも深く結びついている」と話し、「『コート・スティーリング』はニューヨーカーが作るニューヨークの物語なんだ」とコメントしている。
また劇中の楽曲は、監督のお気に入りのポストパンク・バンドであるアイドルズが担当。アイドルズのジョー・タルボットが脚本から楽曲を制作し、映画音楽の作曲家ロブ・シモンセンも加わってスコアを提供。監督は楽曲が映画とマッチしていることについてこのように語っている。「スクリーンで聴こえるスコアはすべてアイドルズの演奏だ<中略>ロウアー・イーストの90年代のストリートの感覚にぴったりの、パンクな手触りになった」

“コート・スティーリング”とは「盗塁失敗」という意の野球用語で、広義としては「チャンスを掴もうとして失敗すること」という意味も。ニューヨークの街で残虐なマフィアの殺し屋たちから猫と共に逃げ回り、ハンクは奴らへのリベンジを果たすことができるのか。筆者はこの映画を観ていてふと、ダニー・ボイル監督の『トレイン・スポッティング』(1996)を思い出した。1990年代のロンドンの街やカウンターカルチャーや人々ぜんぶをひっくるめて愛着とともに表現するあの感覚だ。衣装デザイナーのエイミー・ウェスコットは、この映画への思いをこのように語っている。「ニューヨークで育ち、若い頃をNYで過ごした多くの人にとってノスタルジックな映画になるはず。私たちがその時代を正しく描けていますように。そして、ダーレンが観客を連れていく“ライド”を楽しんでいただけますように」
今回の制作では、監督が映画学校初日に出会って以来の仲という撮影のマティ・リバティークをはじめ、監督と長い付き合いのスタッフたちが再集結。監督はそれを大いに喜び、「家族が再集合した」とコメント。そして『π』を作った頃から映画制作への思いはずっと変わっていないという。「それでも本質は同じ。マティと僕が、その瞬間瞬間にベストな解決策を考える――チーム、クルー、俳優たちと過ごす一瞬一瞬を最大限に活かして、最高の映画を作るんだ」
監督は『コート・スティーリング』の制作について、「気が散るものがあふれる時代に、わざわざ映画館に来て“最高だった”と思ってもらえるものを作るのが、今の自分にとって最も価値のある仕事だと感じた」とコメント。最後に監督から観客へのメッセージをご紹介する。「まず何より“楽しい映画”を作りたかった。2時間、完全に心を奪われる、映画館にいる間は最高の時間を過ごしてほしい」
| 公開 | 2026年1月9日より全国の映画館にて公開 |
|---|---|
| 制作年/制作国 | 2025年 アメリカ |
| 上映時間 | 1:47 |
| 配給 | ソニー・ピクチャーズ |
| 原題 | Caught Stealing |
| 監督 | ダーレン・アロノフスキー |
| 原作・脚本 | チャーリー・ヒューストン |
| 出演 | オースティン・バトラー レジーナ・キング ゾーイ・クラヴィッツ マット・スミス リーヴ・シュレイバー ヴィンセント・ドノフリオ ベニート・マルティネス・オカシオ |

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