エマ・ストーン×Y・ランティモス監督
陰謀論を盲信する男が女性CEOを誘拐
緊張感みなぎる個性派のサイコスリラー
©2025 FOCUS FEATURES LLC.エマ・ストーンとヨルゴス・ランティモス監督の5度目のタッグによるサイコスリラー。共演は、『憐れみの3章』のジェシー・プレモンス、オーディションで抜擢された映画初出演のエイダン・デルビスほか。脚本は『ザ・メニュー』の共同脚本および製作総指揮を務めたウィル・トレイシー、製作は『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』のアリ・アスター、『パラサイト 半地下の家族』の製作陣が手がける。著名な女性CEOミシェル・フラーは、ある日突然2人の男に拉致される。彼らはミシェルが地球を滅ぼそうとしている宇宙人だと盲信して自宅の地下室に監禁し……。ミシェルが犯人たちを刺激しないように監禁場所から逃げようと必死で説得や懐柔を試みるなか、主犯格の犯人であるテディの思想や過去や行動が明らかになっていく。2003年の韓国のカルト映画『地球を守れ!』を原作に、監督と強烈な顔合わせの製作陣、そしてランティモス組の俳優たちが新作として練り上げる個性派のサスペンスである。
カリスマ経営者として脚光を浴びるミシェルが、何者かによって誘拐される。犯人はミシェルがCEOを務める製薬会社の下請け会社社員のテディと、彼の従弟ドンの2人組。陰謀論に心酔する2人は、ミシェルが地球を侵略しにきた宇宙人だと信じ込み、彼女に今すぐ地球から手を引くよう要求する。ミシェルは彼らの馬鹿げた要望を一蹴し、監禁をやめさせようと必死で説得や懐柔を試みるなか、事態は思いがけない方向へ突き進んでいく。

韓国のカルト映画を原作に、ウィル・トレイシーが執筆した脚本をランティモス監督が気に入って映画化。2026年の第98回アカデミー賞にて作品賞、主演女優賞、脚色賞、作曲賞の4部門にノミネートされ、プロデューサーも務めたエマが37歳で通算7度目のノミネートという女性史上最年少の記録をマークしたことも話題となっている。ランティモス監督は、2025年12月9日付の「Deadline」の記事「The Partnership: Yorgos Lanthimos And Jesse Plemons On Making ‘Bugonia’, Their Enduring Relationship And What’s Next(パートナーシップ:ヨルゴス・ランティモスとジェシー・プレモンスが『ブゴニア』の制作、二人の永続的な関係、そして今後の展望について語る)」にて、「実は、他の作品のように何年もかけて練り上げていくことなく、すぐに関わりたいと思った脚本を読んだのは、これが初めてでした」とコメント。そして、とても面白く、それでいて不安を掻き立てる作品だと思ったとも。またダークなユーモアのコメディや新しいタイプのサイコスリラーとして、現代に特有の不条理主義を描いた作品にできると感じたという。この映画のテーマ性と脚本の魅力について、監督は語る。「(脚本を)あっという間に読みきった。すごく楽しめたけど、同時に複雑な面もあった。でも今の時代に合っていると思った。今は、テクノロジーで固められたバブルみたいなものの中で生きているような時代だ。人は他人を“どのバブルの中で生きているか”によって捉える。だから、人と人の間に大きな隔たりが生まれるんだ。僕は、自分が確信していること、つまり特定の人たちに対して無意識のうちに下している判断が、本当に確かなのかと観客に問いかけたかった。この映画は、僕たちが生きている社会や、今の世界に存在している対立構造を、巧妙に反映していると思う」
監督と5度目のタッグで製作も務めるエマは、この映画の内容と監督が好む表現について語る。「この作品は、小世界を表現していると思う。とても狭い空間で、狂気と社会批判が展開していく。ヨルゴス(ランティモス監督)は、そういう空間に惹かれるんだと思う。舞台は地下室で、間違った考え方、あるいは歪んだ考え方をしている人たちが、お互いと会話をする場面がほとんどなの。でもそこで、様々な人間の姿や、何かを信じ込むことでどんどん堕ちていく姿を映し出していく」

製薬会社のCEOであるミシェル役はエマが、監禁され髪を剃り落とされようとも自力で解決しようと試みる気概のある人物として。エマは役のために実際に丸刈りにしていて、その際に監督と交わした約束があったという。「これをやると決めた時、私はヨルゴスにこう言った。『私との連帯の表現として、あなたも丸刈りにするのよ』とね。だから私たちは、約束通りにした。彼がまず丸刈りにして、それから彼が私の頭を丸刈りにした。その後は、2〜3日おきに、刈り直さないといけないの。こうすることで、撮影日の準備時間がかなり短縮できて助かった」
ミシェルを“地球を滅ぼす宇宙人”だと妄信するテディ役はジェシー・プレモンスが、ミシェルの製薬会社で末端作業員として働きながら自宅で養蜂し、蜜蜂の絶滅危機も、自分とドンの家族の不幸も、すべては宇宙人の仕業だと言い切る陰謀論者として。ジェシーはテディという人物について、「彼は、かなり不運な人生を送ってきた。<中略>その過程で目標を少し見失ってしまったんだ」と話し、彼のなかに現代人に通じるものがあると語る。「今この世界に生きている人の多くは、自分は人に気付かれず、忘れ去られていると感じている。権力のある立場にいる人たちによって、押し除けられていると感じているんだ」
おとなしいテディの従弟ドン役はエイダン・デルビスが、テディの母親サンディ役はアリシア・シルヴァーストーンが、テディを子どもの頃から知っているケイシー警官役はスタヴロス・ハルキアスが、それぞれに演じている。
劇中のサウンドは、『哀れなるものたち』『憐れみの3章』のイェルスキン・フェンドリックスが担当。昔ながらのホラーやスリラーを彷彿とさせるような緊迫感を高めるストリングスが響くオーケストラのサウンドと、現代的なシーンとのバランスに味わいが感じられる。またミシェルが車を運転しながら歌うチャペル・ローンの「Good Luck, Babe!」、ラストシーンにはマレーネ・ディートリッヒが歌う世界一有名な反戦フォークソングともいわれる「Where Have All The Flowers Gone」が印象的だ。特に後者の曲で「いつになったらわかるのだろう」と繰り返し歌われるあたりは、ランティモス監督の問いが重ねられているようにも感じられる。
劇中でミシェルが監禁されるテディの自宅“90年代の典型的なアメリカ式ランチハウス”は、撮影のためにロンドンにある豪邸の敷地外の小さな谷間に建造。内部には地下室と屋根裏があり、監禁シーンの撮影はスタジオではなくここで行われた。養蜂が行われている緑豊かで牧歌的なエリアで不穏なことが起きているギャップに、平穏な日常に潜む恐怖がにじむ。

“Bugonia”のタイトルは、ミツバチは牛の死骸から生まれるという古代ギリシャや中世ヨーロッパの信仰に由来する。宇宙人侵略を阻止するために暴力を行使するテディ、全力で説得や懐柔を試みて抵抗するミシェル、この誘拐騒動の顛末とは、この物語からどんな感情が生まれるのか。筆者は観ている間じゅう体がこわばって緊張し、心身共に疲労してヘトヘトになった。ところで、『ブゴニア』には『ランニング・マン』と奇妙に通じる符号がある。以前に創作された未来への警鐘であるかのような物語が、現代の実社会への問いにつながっていることだ。物語は極端な表現であるためこのままの内容ということではなく、考えを促すきっかけになる、という感触だ。最後に、エマとジェシーとランティモス監督からのメッセージをご紹介する。
エマ 2025年10月22日付の「The Hollywood Reporter」の記事「Emma Stone Weighs in on the Viral ‘Bugonia’ Bald Screening: “It’s Just a Good Time”(エマ・ストーン、話題の『ブゴニア』のスキンヘッド上映について語る「ただ楽しい時間」)」より、2025年10月21日にニューヨークで行われたプレミア上映にて。「この映画が問いを投げかけるところが気に入っています。非常に典型的な2人のキャラクターが互いの反対側にいて、その間の緊張関係や、彼らの意図について、観客にずっと考えさせてくれるんです。観客がそこから何を感じ取るか、そして、願わくば、観終わった後に観客の間でどんな会話が生まれるか、それが私にとって大切なことだと思います。『これはこういうことを言っているんだ』というように、ただ映画を丸暗記するよりも、そういうことに興味があるんです」
ジェシー 2025年9月1日付の「Vanity Fair」の記事「Jesse Plemons Says Bugonia Was “the Hardest Thing I’ve Ever Done”(ジェシー・プレモンス、『ブゴニア』は「これまでで最も大変なこと」だったと語る)」より。「私たちが今いるこの瞬間は、とても奇妙で恐ろしいものです。私はいつも、この状況を整理するのに役立つ何か、説教臭くなく、正しく捉えてくれる何かを探しているような気がします。そして、この作品はまさにそう思えるものでした。この瞬間に裏口から現れ、あらゆる場面で驚きを与え、考えさせられるものをたくさん残してくれました」
ランティモス監督はこの映画について、単なる陰謀論を描いた映画ではなく、人間性を描いた物語だと話し、作品のテーマについて、前述の「The Hollywood Reporter」の記事より、ニューヨークプレミアにてこのように語った。「この物語を語るには、いつでも適切な時期があります。今の世界情勢を考えると、より現実味を帯びてきます。そして、状況がどのように展開していくか次第では、さらに現実味を帯びてくるかもしれません。この物語が陰謀論に関するものだというイメージを越え、他にはない作品に仕上がったことを願っています。観れば、もっと多くのことがわかるはずです」
参考:「Deadline」、「The Hollywood Reporter」、「Vanity Fair」
| 公開 | 2026年2月13日よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー |
|---|---|
| 制作年/制作国 | 2025年 アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ |
| 上映時間 | 1:59 |
| 配給 | ギャガ |
| 映倫区分 | PG12 |
| 原題 | Bugonia |
| 監督・製作 | ヨルゴス・ランティモス |
| 製作 | エマ・ストーン アリ・アスター ミッキー・リー ジェリー・ギョンボム・コー |
| 脚本 | ウィル・トレイシー |
| 出演 | エマ・ストーン ジェシー・プレモンス エイダン・デルビス |

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。