マーティ・シュプリーム 世界をつかめ

ティモシー・シャラメが“最低男”を熱演!?
世界王者になるためには手段を選ばない
野心的な卓球プレイヤーの破天荒な道行き

  • 2026/03/17
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『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』のティモシー・シャラメを主演に迎え、卓球の世界チャンピオンになるためには手段を選ばない野心的な青年の成り行きを描く。共演は、久しぶりの映画出演である『アベンジャーズ』シリーズのグウィネス・パルトロウ、『アンティル・ドーン』のオデッサ・アザイオン、また長編劇映画初出演である投資家でアメリカの人気金融番組「シャークタンク」で知られるケビン・オレアリー、長編映画デビューとなる人気ラッパーのタイラー・ザ・クリエイターことタイラー・オコンマほか。監督・脚本は『アンカット・ダイヤモンド』のジョシュ・サフディが手がける。1952年、ニューヨークの靴屋で販売員をするマーティ・マウザーは、卓球プレーヤーとして世界チャンピオンになるという野望を抱いている。しかし英国大会に出場するための渡航費用を靴屋の金庫から盗み……。目的のため野心のため、大成するためならなんでもアリ。窃盗、詐欺、間男、裏切り、罵倒に大言壮語、状況次第で態度が豹変、とにかくえげつない。天賦の卓球の能力と突拍子もないやり口で強引にのしあがろうとする、野心的な卓球プレイヤーの物語である。

1952年のニューヨーク。ロウアー・イースト・サイドの靴屋の販売員マーティ・マウザーは、卓球で世界チャンピオンとなり人生一発逆転を目指していた。そんななか、幼馴染で不倫相手のレイチェルが妊娠。また卓球協会から問題行動のために選手資格はく奪を言い渡される。万年金欠のマーティはありとあらゆる手を使って選手権への渡航費を稼ごうとするが……。

ティモシー・シャラメ,ほか

実在の卓球選手マーティ・リーズマンの人生に着想を得て、世界チャンピオンを目指す野心的な青年マーティの物語をフィクションで描く。この映画の主人公マーティは、世界大会に出場するため、チャンピオンになるため、ビッグになるためには手当たり次第に手段を選ばず猛進。目をかけてくれるが小さい世界に縛ろうとする叔父を押し除け、幼馴染で既婚のガールフレンド、著名人である大人の女性、その夫で成功している実業家、さらにはたまたま出会った犬や、細々と家族を養っている友人の車まで、利用できるものは人でも動物でも物でもなんでも利用する。すべては俺様が成功するために。見ているうちに応援したくなるのかと思いきや、個人的には特にそうはならず。あまりにも人を踏みつけていく傍若無人ぶりに、ひんやりと距離を保ちながら成り行きを見守るという感覚に。主人公に共感はし難いものの、ティモシーの熱演は見どころといえる。サフディ監督はマーティという人物について、「我々は、野心ーー自信、飢え、自分のやり方で自分の力を示す必要性といった概念そのものをとらえて、もっと大きなものを創りたいと思った。限界ぎりぎりまで」とコメント。そして第二次世界大戦後という背景をふまえて、監督はマーティの人物像について語る。「アメリカン・ドリームは非常に力強い物語だし、戦後、大きな夢を持つことは、個人が歴史を作り、世界の形成と作り直しに決定的な役割を果たすという新しい概念と共に、国際的なセンセーションを巻き起こした。マーティは、アメリカが戦後に表現した自信、うぬぼれ、野心の体現者だ。」

卓球プレイヤーとして実力のあるマーティ役はティモシーが、目をギラギラさせて野心のままに突き進む人物を熱演。この役でティモシーは第83回ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を史上最年少で受賞。2026年3月5日に東京で行われたジャパンプレミアにて、ティモシーは役作りで参考にした実在の人物についてこのように語っている。「ドイツのティム・ボールや、1950年代に活躍した卓球選手だけでなく、バレエダンサーのジョージ・バランシン、バスケットボール選手のマージョン・ボーチャンプなど本当にたくさんの方を参考にしました」
 ティモシーは主演作『君の名前で僕を呼んで』が公開される前から監督と交流があり、「ジョシュは僕が7年もずっと組みたいと思っていた監督だ」とコメント。サフディ監督もティモシーとのタッグを喜び彼を称賛。マーティという人物とこの映画について、このように語っている。「『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』は夢に憑りつかれた若者の物語だ。一見、あまりにもちっぽけで、笑えるほど具体的すぎて、それを信じるには盲信が必要になる夢。誰一人、彼の夢を信じてないだけじゃない。その夢を信じること自体が信じられないんだ。」
 マーティに翻弄されるアメリカの元大物女優ケイ・ストーン役はグウィネス・パルトロウが、マーティの幼馴染で不倫相手レイチェル役はオデッサ・アザイオンが、ケイの夫で資産家のミルトン・ロックウェル役はケビン・オレアリーが、マーティの親友でタクシードライバーのウォーリー役はタイラー・オコンマが、それぞれに演じている。また清廉で素敵なキャラクターである、マーティの宿敵となる日本人の卓球選手エンドウ役は、実際に卓球選手であり東京2025デフリンピック卓球男子団体で銅メダルを獲得した川口功人(トヨタ自動車)が好演。さらにドイツ出身のもと卓球選手ティモ・ボル、アメリカのもとバスケットボール選手のジョージ・ガービンなど多数の人々が登場している。

ティモシー・シャラメ,タイラー・オコンマ

美術監督はデヴィッド・リンチの幼馴染であり『レヴェナント:蘇りし者』などを手がけてきたベテランのジャック・フィスクが担当。撮影はニューヨークのオーチャード・ストリートの3つの街区などにて行われ、フィスクは建てられた当時の姿のままの建物がこのエリアに多くあることを喜び、劇中で1950年代に最も裕福だったというアッパー・イースト・サイドにある、ロックウェル夫妻が暮らす5番街の豪邸の外観として、5セント・10セント雑貨ストアの創業者として有名なフランク・ウールワースの設計によるマンハッタンの建物を見つけ出し、撮影したとも。
 またこの映画では、英国、日本、フランス、サラエボ、エジプトとマーティが各国で卓球をするシーンも。日本のシーンは実際に上野で撮影され、日本での撮影への思い入れを、ティモシーとサフディ監督はジャパンプレミアでこのように熱く語った。
 ティモシー「僕らはどうしても日本で撮影したいという目的意識を持っていました。もちろんニューヨークでセットを組んで、日本のようにみせるチートはできるけれど、この作品には日本や東京という要素が大きく関わっているから、きちんと日本で撮影することがすごく重要だったんです。世界のみなさんがこの作品を気に入ってくれているので、日本のみなさんもそれに続いてくださるといいなと思っています」
 サフディ監督「タイムトラベルかのようだった。上野恩賜公園で撮影するとき、講堂を見たんですが、1950年の日本はこうだったのかとまざまざと想像できる景色が広がっていました。実は僕自身日本にゆかりがあって、ひいおじいちゃんが戦後日本にいたことがあるんです。だからこそ僕は、日本人のために日本で撮影したいんだと思ったんです。ロケ地=そこにいる人々なんだという想いで日本での撮影を実施しました。僕にとってものすごく特別なプロジェクトになりました」

オデッサ・アザイオン,ティモシー・シャラメ

卓球がまだメジャーではなかった1950年代に、世界王者を目指すマーティはどこまでいくのか。行き当たりばったり、野心に燃えてあらゆる人やものを利用し尽くしながら爛々と目を見開き突き進んでゆく姿に、あなたは何を思うだろうか。
 2026年の第98回アカデミー賞では無冠だったものの、9部門にノミネート(作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞・編集賞・撮影賞・美術賞・衣装デザイン賞・キャスティング賞)。2026年2月には全世界興行収入が1.47億ドルを超え、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を突破してA24史上最高興収を記録したというニュースも。サフディ監督はマーティの過激な生き様を通じて表現しているテーマについて語る。「マーティは典型的な夢追い人だ、その点で彼は究極的にロマンティックで、最も向こう見ずな楽天家だ。これは、妥協しない人間が若い頃、どれだけ自由にも窮屈にもなれるかを検証する成長譚だ。マーティが自分の夢を盲信することは、遠回りだが、真の自己発見、本物の変化につながっているんだ」
 ティモシーは現在、映画館の文化を守るという考えのもとで、バレエとオペラについて「nobody cares about ballet and opera(バレエとオペラをもう誰も気にかけていない)」と発言し、大きな議論を呼んでいる(「バレエやオペラに関わる人には敬意がある」とも話して補足もしている。2026年3月7日の「Variety」の記事「Timothee Chalamet Faces Backlash From Ballet and Opera Communities After Viral ‘No One Cares’ Comment: ‘We’d Love To Change Your Mind’(ティモシー・シャラメ、拡散した『誰も気にしない』発言でバレエ界とオペラ界から反発を受ける:『あなたの考えを変えていただきたい』)」より)。オペラやバレエは長い歴史をもつ豊かな表現であり、映画と同じように、舞台芸術を愛する観客は世界中にいて筆者もそのひとりだ。俳優はさまざまな芸術に触れながら成熟していくものだろうし、オペラ歌手やバレエダンサーを演じる可能性もある。そもそも今回のマーティの役作りに彼もバレエダンサーの名をあげていて、これからも舞台芸術から学べることはおそらく少なくないはずだ。ティモシーは現在30歳。マーティのキャラクターがどこか自身に残っているのだろうかと気がかりを感じつつ、芸術の多様性を改めて考えさせられる出来事だった。最後に、ティモシーが2026年3月5日に東京で行われたジャパンプレミアにて 日本のファンに伝えたメッセージをご紹介する。「この作品を日本の皆様にお届けできることを光栄に思っています。この作品が表現したいことが、日本や日本の方々に合致するんです。だからこそ皆さんにも楽しんでいただきたいですし、僕たちが精魂込めた作品です。ものすごく誇りを持っている1本ですので、ぜひ楽しんでください」

参考:「Variety

作品データ

公開 2026年3月13日よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2025年 アメリカ
上映時間 2:29
配給 ハピネットファントム・スタジオ
原題 Marty Supreme
監督・脚本 ジョシュ・サフディ
出演 ティモシー・シャラメ
グウィネス・パルトロウ
オデッサ・アザイオン
ケビン・オレアリー
タイラー・オコンマ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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