藤本タツキの漫画を是枝裕和監督が実写映画化
少女2人の友情と青春、創作に打ち込む強い思い
その魂の共鳴を四季の移ろいと共に情感豊かに描く
©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社『チェンソーマン』『ファイアパンチ』などの漫画家・藤本タツキによる『ルックバック』を原作に、『万引き家族』『怪物』の是枝裕和が監督・脚本・編集を手がけて実写映画化。キャストは『万事快調〈オール・グリーンズ〉』の出口夏希と『海よりもまだ深く』の蒔田彩珠がW主演、そして俳優デビューとなる七瀬ふうり、『そしてバトンは渡された』の岡田六花、菅田将暉、宮藤官九郎ほか。漫画を描くことをきっかけにつながる少女2人の友情と青春、そして創作に打ち込むことへの強い思いを鮮やかに映し出す。藤本氏の出身地である秋田県にかほ市の四季をとらえた美しい景色と共に、あたたかな郷愁と静かな覚悟を情感豊かに紡ぐ物語である。
自信家の小学4年生・藤野は、学年新聞に4コマ漫画を連載し、クラスメートたちから絶賛されていた。しかしある日、学年新聞に掲載された不登校の同級生・京本の漫画を目にし、その圧倒的な画力に打ちのめされる。それ以来、藤野は絵が上手くなりたい一心で漫画を描き続けるが、その差は埋まらず、一度は漫画を諦めてしまう。ところが卒業式の日、京本の家へ卒業証書を届けに行った藤野は、京本が自分の漫画のファンだったことを知る。漫画へのひたむきな思いで結ばれたふたりは、一緒に漫画を描き始める。かけがえのない時間を積み重ねていく藤野と京本。しかし、そんなふたりの日々を大きく揺るがす出来事が訪れる――。

藤本タツキによる漫画の初の実写映画化を是枝裕和監督が手がけるというニュースから大きな注目を集めた作品。漫画を描くことで出会ったふたりの少女が互いの存在に支えられながら成長していくなか、やがて道は分かれ、思いがけない出来事が起きる。原作の漫画は2026年7月現在、発行部数が100万部を突破、2024年に劇場アニメ化され、第48回日本アカデミー賞にて最優秀アニメーション作品賞を受賞したことは周知の通りだ。藤本氏は実写映画化が決まった時に、「是枝監督がルックバックを撮ってくれるなら僕はもう何も言う事はないです。楽しみにしています!」とコメント。そして是枝監督は最初に原作を読んだ時に、「同じ作り手として、覚悟が切実に伝わってくる作品」だったと振り返り、藤本氏と対面したのちに映画化への決意を固めたという。「まずは、このような作品を世に産み落としていただいたこと、その作品に同時代に出会うことができたことへの感謝をお伝えできればと思っていたのですが、その帰り道、『やらないわけにはいかない』と覚悟を決めました」

京本との出会いにより漫画を描くことにますます夢中になってゆく藤野役は出口夏希が、率直で明るい少女として。藤野と小学校の同学年で彼女の描く4コマ漫画の大ファンであり、引きこもりでひたすら絵を描いてきた京本役は蒔田彩珠が、内向的ながら表現へのゆるぎない思いを自然に。出口と蒔田は撮影が始まる約4カ月前から漫画を描く練習に取り組み、撮影期間中も時間をつくって描き続けていたとのこと。劇中でも漫画を描く手元のシーンは、実際に2人が描いている手が使われている。出口と蒔田は漫画を描く練習がいかに大変だったかについて、2026年8月20日に行われた完成報告イベントにて笑顔で語った。
出口「まずは手が痛い! 監督からの要望で(描く)音とかっこいい線を描いてほしいと言われていて、そこに時間がかかりました。ひたすら描いて手にマメができるくらい練習しました」
蒔田「撮影に入る4ヶ月前くらいから練習していて、他の作品の撮影の合間にも練習に行っていました。課題をたくさんもらって次までにやっていくのが学生時代を思い出して大変でした。1枚描くのに1時間くらいかかって、それを1日8枚くらいやって、徹夜しないと間に合わないくらいでした」
そして子ども時代の藤野役は七瀬ふうりが天真爛漫に、子ども時代の京本役は岡田六花が物静かでありながら芯の強さをにじませて演じ、七瀬と岡田も漫画の練習が大変だったと話している。そして中学生の藤野と京本が共同で描いた漫画を持ち込む「週刊少年ジャンプ」の編集者・前田役は菅田将暉が、学年新聞の4コマ漫画を通して藤野と京本が出会うきっかけを作る小学校の先生・玉井役は宮藤官九郎が、漫画にのめり込む娘の姿を見守る藤野の母親・朱里役は野呂佳代が、藤野の父親・仁志役は池田良が、姉・恵役は佐々木みゆが、成長した藤野が通う中学校の先生・真鍋役は山田真歩が、それぞれに演じている。
撮影は 約1年という長い時間をかけて丁寧に行われ、秋田県にかほ市の四季の表情を鮮やかに映しているのも見どころのひとつだ。是枝監督は「本当に贅沢に時間を使わせていただいたことが、とても大きかった」と話し、自然の移ろいをいかに映したか、そして印象的なシーンについてこのように語っている。「季節ごとに表情を変える美しい自然や海・山があり、その魅力を作品に捉えようと撮影しました。特に田んぼ道を2人が並んで歩いたり走ったりするシーンは、何度も撮影してとても印象に残っています」
また劇中では紙の上をペンが走る音、雨風や波の音、集中している時間の息遣いなどが立体的に響く。是枝監督作品として初となるDolby Cinema、Dolby Atmos®での上映が実現し、音響設計へのこだわりが反映されている。そのきっかけは是枝監督が藤本タツキ氏から、「ベテランアシスタントの方がペンで迷いなく線を引く『シャッ』という音がかっこいいんです」と聞いたことだったという。漫画の擬音に対して、映画では実際に聴こえる音として表現できることから、大切な要素のひとつとして活かしたそうだ。そして映画では漫画を描く時の音の変化が、藤野と京本のその先につながっていくと監督は語る。「やっぱり音がだんだん変わらないといけないと思っていた。そこは実写ならではの部分だったから。最初は、子どもだった2人が恐る恐る描いていた線が、成長した時に『シャッ、シャッ』という音になってないとダメ。それは伝えられたと思います」
またこの作品には多彩なクリエイターたちが参加。“シャークキック・ギター(友情演奏)”として米津玄師、劇中曲のボーカルとして三浦透子、実写映像をもとにアニメーションを制作する“ロトスコープ”技法を用いる、ロトスコープアニメーション監督として久野遥子、アニメーションのパートの制作を『化け猫あんずちゃん』のシンエイ動画が担当。背景美術はスタジオジブリに所属する西川洋一が、劇中の絵画は『となりのトトロ』の男鹿和雄と『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の串田達也などが参加している。

この物語には、憤りや悔しさ、祈りのような感情から“もしこうだったなら”という別の可能性を紡ぐ、創作の根源的な衝動が息づいている。その意味ではクエンティン・タランティーノ作品の『イングロリアス・バスターズ』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を思い起こさせる瞬間があり、日本で実際に起きた事件を思い返し、考えさせられる面もある。
人は他者の時間をどこまで引き受けることができるのだろう。藤野と京本が過ごした時間は、ふたりだけのものだ。その時間は、片方がいなくなった瞬間に、もう片方の内側へ深く沈み込み、形を変えながら生き続ける。他者と共有した時間は消えることなく、やがて自分自身の一部として溶け合っていくのだろうか。藤野が再びペンを握るとき、その手には京本との時間が確かに宿っている。引き受けるとは、背負うことではなく、共鳴し続けることなのかもしれない。
第83回ヴェネチア国際映画祭で行われたワールドプレミアでは約1,000人の観客から12分を超えるスタンディングオベーションが贈られた。海外でも北米、カナダ、イギリス、アジア圏など約90の国での公開が発表されている。日本の東北から生まれた少女たちの小さな物語が、世界へとさらに広がり、羽ばたいてゆくさまはどこかまぶしい。
ここで原作者・藤本タツキ氏が映画の完成を心から喜び、寄せたメッセージを一部抜粋してご紹介する。「漫画の実写映画化などで漫画のセリフや演技がそのまま実写になると、リアリティのないものになる事があると思います。ルックバックの実写映画化ではそこを是枝監督映画特有の俳優が持つ所作やカメラの動きで、原作のテイストを崩さずに原作が持っていた雰囲気をリアリティを持って出す事ができていたのでとても嬉しかったです。映画内での漫画のアナログ道具の使いっぷりや、ペンを入れる特有の気持ちのいい音、家の経年劣化具合や小道具が魅せる生活感は、そこに藤野と京本が本当に生きている証拠のように見えて映る度に感動していました」
そして最後に、W主演の出口と蒔田、是枝監督が2026年8月20日に行われた完成報告イベントにて伝えたメッセージをご紹介する。
出口「キャストやスタッフ、にかほ市の皆さんなど本当にたくさんの方の思いが込められた作品となっています。すごく綺麗な景色と音と、私たちが目で見たすべてが映し出されているので、ぜひそれを皆さんに感じていただけたら嬉しいです」
蒔田「私はこの作品を通して、京本が『藤野ちゃんはなんで絵描いてるの?』と言ったように、『私はなんでお芝居してるんだろう』と考えるきっかけになりました。多分京本と一緒で好きだからなんですが、深く考えずにここまでやってこられたのはひたむきにやってきたからなんだなと気づかせてもらえました。この作品を見た人が自分の好きなことや好きな人に対して何か考えるきっかけになる作品だと思っているので、たくさんの方に観ていただけたらと思います」
是枝監督「藤野が文房具屋さんで買ってきたスケッチブックに初めてシャーペンを置いて1本の線を恐る恐る描き始める場面があるんですが、なんか涙が出ちゃうんですよ。悲しいわけではないんですが、人が一生懸命になっている眼差しや背中って、それだけで感動できるんだなと改めて気づかされる、そんな映画になったんじゃないかと思います」
| 公開 | 2026年9月11日より全国公開 |
|---|---|
| 制作年/制作国 | 2026年 日本 |
| 上映時間 | 1:39 |
| 配給 | K2 Pictures |
| 英題 | Look Back |
| 原作 | 藤本タツキ「ルックバック」(集英社ジャンプコミックス刊) |
| 監督・脚本・編集 | 是枝裕和 |
| 音楽 | 坂東祐大 |
| 出演 | 出口夏希 蒔田彩珠 七瀬ふうり 岡田六花 野呂佳代 池田良 佐々木みゆ 山田真歩 宮藤官九郎 菅田将暉 |

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