倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙

没後なお、比類ないデザイナーとして世界的な評価を保つ倉俣の
人生とデザインを読み直す回顧展

  • 2023/11/14
  • イベント
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従来の家具やインテリアデザインの世界では用いられなかった工業素材に独自の詩情を乗せた作品が世界的な注目を集めた倉俣史朗。享年56才という早すぎる死のために、その業績を検証する展覧会は数多くは開催されていない。没後30年を経たことを一つの契機とし、新たに倉俣史朗の人と作品を検証し、その詩情あふれるデザインを読み直す回顧展。

造花の薔薇を透明アクリル樹脂に封じ込めた「椅子」、板ガラスを組み合わせただけの「椅子」、大きさを少しずつ変えて格子状に49個並ぶ「引出し」、7本の針を持つ「時計」。一目見た時に驚きがあり、そして笑みがこぼれ、しばらくして、その機能がきちんと保持されていることに気づく。
 そのあまりの独創性ゆえ「クラマタ・ショック」という言葉まで生まれたほど、一風変わった家具と数多くの特色あるインテリアデザインを手掛けた倉俣史朗(1934〜1991年)。駒込の理化学研究所内で育った幼年期の思い出と、第二次世界大戦中の疎開先での光景が、その後のデザインに通底し続けた。株式会社三愛勤務を経て1965年に独立後は、同時代の美術家たちとも交流しつつ、次々と話題となる店舗デザインを発表。機能性や見た目の形状に主眼を置いたデザインとは異なった考え方をした作品を放ち続けた。1980年代にはイタリアのデザイン運動「メンフィス」に参加。その名は一躍世界中に浸透していった。
 1991年の没後も比類ないデザイナーとして揺るぎない評価を保ち、2014年には、香港の強大な美術館M+に、インテリアデザインを手掛けた新橋の寿司店「きよ友」が店舗まるごと移設されるなど、倉俣作品は各国の美術館に収蔵され、今なお国内外で高い評価を受けている。

本展では、プロローグとして、三愛所属時代の仕事を紹介。その後、年代を4パートに区切り、倉俣の仕事をテーマごとに見せる。途中、「倉俣史朗の私空間」として、愛蔵の書籍とレコードを挿入。エピローグでは、創作の源泉を垣間見せるようなイメージ・スケッチと過去あまり公開されてこなかった夢日記や言葉をまとめて紹介。独立する以前からあまりにも早すぎる死までを振り返るとともに、倉俣のデザインのその先を検証する。

同時代を生きた世代だけではなく、若い世代にも倉俣史朗という人と仕事を伝えるばかりでなく、その作品と人物像に新たな視線を向けることで、デザインの可能性を再認識する機会ともなるだろう。

  1. 倉俣史朗《引出しの家具》1967年 富山県美術館蔵 © Kuramata Design Office
  2. 倉俣史朗 ショップ「スパイラル」 1990年 撮影:淺川敏 © Kuramata Design Office
  3. 倉俣史朗 イメージスケッチ「ミス・ブランチ」 1980年代 クラマタデザイン事務所蔵 © Kuramata Design Office
  4. 倉俣史朗《硝子の椅子》1976年 京都国立近代美術館蔵 撮影:渞忠之 © Kuramata Design Office
  5. 柚木沙弥郎《ならぶ人ならぶ鳥》1983年、世田谷美術館蔵
  6. 倉俣史朗《ミス・ブランチ》1988年 富山県美術館蔵 撮影:柳原良平 © Kuramata Design Office
  7. 倉俣史朗《アクリルスツール(羽根入り)》1990年 京都国立近代美術館蔵 撮影:渞忠之 © Kuramata Design Office
  1. 倉俣史朗《引出しの家具》1967年 富山県美術館蔵 © Kuramata Design Office
  2. 倉俣史朗 ショップ「スパイラル」 1990年 撮影:淺川敏 © Kuramata Design Office
  3. 倉俣史朗 イメージスケッチ「ミス・ブランチ」 1980年代 クラマタデザイン事務所蔵 © Kuramata Design Office
  4. 倉俣史朗《硝子の椅子》1976年 京都国立近代美術館蔵 撮影:渞忠之 © Kuramata Design Office
  5. 倉俣史朗《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》1986年 富山県美術館蔵 撮影:柳原良平 © Kuramata Design Office
  6. 倉俣史朗《ミス・ブランチ》1988年 富山県美術館蔵 撮影:柳原良平 © Kuramata Design Office
  7. 倉俣史朗《アクリルスツール(羽根入り)》1990年 京都国立近代美術館蔵 撮影:渞忠之 © Kuramata Design Office

開催概要

展覧会名 倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙
会期 2023年11月18日(土)〜2024年1月28日(日)
休館日 月曜日(ただし1月8日は開館)、12月29日(金)〜2024年1月3日(水)、1月9日(火)
時間 10:00〜18:00
※入場は閉館時間の30分前まで
会場 世田谷美術館 1階展示室
世田谷区砧公園1-2
入館料 一般 1,200円、高大生 800円、小中生 500円、65歳以上 1,000円、未就学児無料
公式サイト https://www.setagayaartmuseum.or.jp/
問合せ 050-5541-8600 (ハローダイヤル)

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