ひとりのコレクターの目が捉えた現代日本の姿を
日本現代美術の代表作とともに辿る
日本の現代美術を中心とするコレクションとしては世界最大級の高橋龍太郎コレクション。3500点あまりにのぼる膨大なコレクションから選りすぐった作品で総覧する、日本の現代美術史の入門編でもあり決定版ともいえる展覧会。
精神科医、高橋龍太郎(1946年〜)が1997年から本格的に始めた日本の現代美術コレクションは、草間彌生、合田佐和子を出発点として、1990年代以降の重要作家の初期作品・代表作を数多く所有し、国内外26の公立・私立美術館でコレクション展が開催されてきた。本展は初期から東日本大震災を経て現在に至るコレクションの変化を、ひとりのコレクターの「私観」として辿る。
本展が手がかりとするのは、戦後世代のひとつの顔としての高橋の視点。団塊の世代の始まりとして育った高橋は、全共闘運動に参加し、文化と政治が交差する東京の60年代の空気を色濃く吸い込んだのち、精神科医として地域医療の推進に尽力した。その活動が軌道に乗った90年代半ばより現代美術のコレクションを開始。現代美術の動向を受け手として内側から観察し、表現者とは異なるかたちでその重要な部分を体現してきた存在といえる。
展示は6つの章で構成されている。高橋が本格的にコレクションを始めた時期と同じくして現れた、日本の文化や社会に鋭い批判性を持った作家たちの作品を紹介する「戦後の終わりと始まり」では、村上隆の《ズザザザザザ》など日本の戦後の自画像というべきコレクションを代表する作品が数多く含まれる。
高橋龍太郎コレクションの重要なテーマのひとつ、人間を描いた作品に焦点を当てた「新しい人類たち」では、奈良美智の《Untitled》など、コレクションのトレードマークといえる作品から若手の作品まで、幅広く観ることができる。
東北地方をルーツに持つ高橋に大きな感覚の変化をもたらした2011年の東日本大震災。原発事故の後の日本社会に対する風刺や震災後の作家たちの最初の一歩などを紹介する「崩壊と再生」では、アトリウムの吹き抜け空間に生命の再生を主題とする作品が並び、本展のハイライトのひとつとなる。
その他、「胎内記憶」、「『私』の再定義」、「路上に還る」をテーマとした構成で、今もなお拡大し続けるコレクションの姿を捉えることができる。
高橋が「若いアーティストたちの叫び、生きた証」と呼ぶ日本の現代美術の重要作品を総覧する、貴重な機会となるはずだ。
展覧会名 | 日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション |
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会期 | 2024年8月3日(土)〜11月10日(日) |
休館日 | 月曜日(8月12日、9月16日・23日、10月14日、11月4日は開館)、8月13日(火)、9月17日(火)・24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火) |
時間 | 10:00〜18:00(8月9日・16日・23日・30日は21:00まで開館) ※展示室入場は閉館時間の30分前まで |
会場 | 東京都現代美術館 企画展示室 1F/B2F 江東区三好4-1-1 |
観覧料 | 一般 2,100円、大学・専門学校生・65歳以上 1,350円、中高生 840円、小学生以下無料 ※詳細は公式サイトをご確認ください |
公式サイト | https://www.mot-art-museum.jp |
問合せ | 050-5541-8600 (ハローダイヤル) |
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