失われた大仏と壁画の描き起こし図は、東京初公開
太陽神と弥勒信仰の変遷を深掘りする特別展
中央アジアに位置するバーミヤン遺跡の石窟にそびえていた、東西二体の大仏を原点とする太陽神と弥勒の世界に迫り、「未来仏」である弥勒信仰の流れをインド・ガンダーラの彫刻と日本の法隆寺など、奈良の古寺をはじめ各所に伝わる仏像、仏画等の名品でたどる展覧会。
アフガニスタンの中央部を東西に走るヒンドゥークシュ山脈の中にあるバーミヤン遺跡は、首都カブールの北西230キロ、標高2500mほどの渓谷地帯に位置する。この地域は古くからユーラシア各地の文化が行き交う「文明の十字路」とも呼ばれている。
渓谷の崖には多くの石窟が掘られ、かつては約1.3キロにわたる崖に東西二体の大仏がそびえていた。東大仏の頭上には、ゾロアスター教の太陽神・ミスラの姿が、一方西大仏の周囲には、弥勒が住まう
バーミヤンの大仏と壁画は、2001年3月にイスラム原理主義組織・タリバンによって破壊されたが、それ以前に行われた調査での写真・スケッチをもとに、新たに10分の1縮尺の描き起こし図が完成。本展覧会で、東京にて初公開となるのが一つの見どころだ。
東大仏の頭上に描かれていたとの説が有力であるゾロアスター教の太陽神・ミスラ。インド地域においても、語源を同じくするミトラ神が古くから存在していたが、ギリシアの太陽神・ヘリオスの図像がインドに伝わってからは、スーリヤが太陽神として後世まで信仰された。「太陽神の信仰」の章では、太陽神の様々な姿や太陽神と仏教の関わりを紹介。
『西遊記』の三蔵法師のモデルとしてよく知られている、唐の仏教僧・玄奘は630年頃にバーミヤンに滞在し、『大唐西域記』にバーミヤンの信仰の様子を残している。玄奘はバーミヤン東大仏を「釈迦仏」と明言しているのに対し、西大仏の尊名については触れていなかったが、壁画の内容から「弥勒仏」であった可能性が明らかになった。
「弥勒」とは、釈迦入滅後の56億7千万年後にこの世に下生するという、いわば未来の救世主。2〜3世紀頃のガンダーラ地域において既に信仰され、その後バーミヤンを含む中央アジア、そして中国・朝鮮半島へと広がった。
本展では、弥勒信仰の源流とアジアへの広がりについて、また、6世紀の仏教伝来当初より重視され、独自の展開を遂げた日本の弥勒信仰を背景に生み出された仏像や絵画など、様々な弥勒の姿を観ることができる。
日本に伝わり花開いた弥勒信仰。同じ文化が遠く離れたアフガニスタンと日本にあることを会場でじっくりと体感してみたい。
展覧会名 | 特別展 文明の十字路 バーミヤン大仏の太陽神と弥勒信仰 ―ガンダーラから日本へ― |
---|---|
会期 | 2024年9月14日(土)〜11月12日(火) ※会期中、展示替えあり |
休館日 | 9月24日(火)・30日(月)、10月7日(月)・15日(火)・21日(月)・28日(月)、11月5日(火) |
時間 | 10:00〜17:00 ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 三井記念美術館 中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7F >> 会場の紹介記事はこちら |
入館料 | 一般 1,500円、高大生 1,000円、70歳以上(要証明) 1,200円、中学生以下無料 |
公式サイト | http://www.mitsui-museum.jp/ |
問合せ | 050-5541-8600 (ハローダイヤル) |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。